第789回:【ボルボEX30買いました】車内の居心地を検証 原稿執筆ははかどるか!?
2024.05.14 エディターから一言心地よい室内に潜むアイツ
「ボルボEX30」の魅力として真っ先に挙げたいのが、心地よい室内。シンプルすぎて使いにくいと感じる点もありますが、ダッシュボードやドアトリムの素材とその色使い、上質で出しゃばらないデザインなどのおかげで、室内にいるだけで心が安らぎ、穏やかな気持ちにさせてくれるのがうれしいところです。
そんなEX30のインテリアに初めて出会ったのは、2023年秋にスペインで行われた国際メディア試乗会でした。1日目の試乗を終え、バルセロナ市内のホテルに戻ると、施設内にも何台かEX30が展示されていて、試乗中にチェックしきれなかったインテリア細部を見まわしていたところ、ボルボの開発スタッフから声をかけられたのです。
「ムースは何頭いましたか?」
「さすがにスペインにムース(ヘラジカ)はいないだろう!?」とキョトンとしていると、本物の話ではなく、EX30にデザインされたムースの数のことでした。フランク(ボンネット下の収納スペース)にムースがいるのは気づいていたのですが、ほかにもまだいるのだと。すぐに降参すると(笑)、センターコンソールの後方にある小物入れの横にムースが潜んでいました。左右に1頭ずつですので、答えは全部で3頭。こんな遊び心も楽しいですね! EX30に乗る機会があったら、ぜひチェックしてみてください。
それはさておき、現在、日本で販売されているEX30は「ウルトラ シングルモーター エクステンデッドレンジ」の1グレード。“ウルトラ”というのは装備が充実した仕様を意味していて、パノラマガラスルーフが標準装着されるのも上級グレードならではです。ルーフがほぼガラスに覆われ、開放感が楽しめるのはうれしいのですが、それ以上に心配なことが……。もう一台の愛車である「フォルクスワーゲンID.4」にも同様のガラスルーフが付いていますが、晴れの日は暑くてたまらないのです。幸いID.4の場合はサンシェードが付いているので日差しが強いときはそれを閉めてしのいでいますが、せっかくの開放感が台無しです。一方、EX30の場合はサンシェードがなく、春から秋の晴れた日の昼間はどうなってしまうのだろうと、とても不安でした。
まだ真夏を迎えていないので結論は出せませんが、取りあえずこれまでのところは「何とかなりそう」という印象。確かに、晴れた日にクルマに乗り込むと室内はそれなりに暑いのですが、エアコンで室温を下げれば、日差しそのものはそれほど暑さを感じません。ボルボ・カー・ジャパンに尋ねると、このパノラマ・ガラス・ルーフは、可視光の透過率が18.9%で、紫外線は99%カット、暑さの原因である赤外線は80%カットしてくれるそうです。もしも、真夏の日差しに耐えられないようであれば、純正アクセサリーとしてガラスルーフに貼る「UV&IRカットフィルム」(4万9500円、税・工賃込)というアイテムもあるので、これを試してみるのも手かもしれませんね。
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仕事をするには不満も
よく聞かれるのが「充電中は何をしていますか?」ということ。たいてい急速充電には30分かかりますが、高速道路のSA/PAなら休憩や食事を、急速充電器があるコンビニやスーパーでは買い物をしていると30分はあっという間です。たまに後席でノートPCを開いて、メールをチェックしたり、原稿を書いたりすることもあります。
急速充電をしていないときでも、電気自動車(EV)は仕事をするには格好のスペースです。私のようにネットとPCがあれば、どこでも仕事ができてしまう者にとっては、エンジン車のようにアイドリングをすることなく、エアコンの利いた室内で作業できるEVは快適な移動オフィスです。特に、現場からいち早く情報を発信するときなどに重宝しています。
そういう意味ではこのEX30も便利な移動オフィスですが、ID.4に比べると不満も。後席の足元が狭く、爪先が前席下の奥まで入らないので、少し窮屈。仕方がないので、前席を一番前に出して座ることにしています。また、後席にカップホルダーやアームレストがないのも不満です。
それでも、前席以上に開放感が味わえるパノラマガラスルーフのおかげで、後席で気分よく仕事ができるEX30。原稿の執筆がはかどるかどうかは別の話ですが(笑)。
(文と写真=生方 聡/編集=藤沢 勝)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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