「スバルBRZ STI SportタイプRA」登場 500万円~の価格妥当性を探る
2025.11.26 デイリーコラムベース車との価格差は119万円
世間一般では特に話題にもなっていないはずだが、いわゆるクルマ好きの間では話題沸騰中といえる「スバルBRZ STI SportタイプRA」。ご承知のとおり、スバルのFRスポーツカーであるBRZをベースに、スバルとSTIがスーパー耐久シリーズなどのモータースポーツで培ってきた技術や知見を生かし、走る楽しさを追求したというコンプリートカーだ。
どのように追求したかといえば、既報のとおりバランスドエンジンや冷却フィン付きリアディファレンシャルケース、シフトアシスト機能(レブシンク/フラットシフト)、ZF製フロント&リアダンパー+STI製フレキシブルパーツ、ブレンボ製フロントブレーキ(17インチ対向4ピストン)&リアブレーキ(17インチ対向2ピストン)等々、本当に枚挙にいとまがないわけだが、問題としたいのはその車両価格である。
通常の「BRZ STI Sport」(MT)の車両価格が378.4万円であるのに対し、BRZ STI SportタイプRAの「リアウイングがないほう」の価格は497.2万円。約119万円の価格差に対して「高い!」と感じる人もいるのかもしれないが、筆者の感覚からすると「安すぎ!」である。こんなに安く設定してしまい、スバルは大丈夫なのか? たったの300台限定とはいえ、この大盤振る舞いが原因で経営が傾いたりはしないだろうか――と、心配になってしまうのである。
まぁ経営が傾くうんぬんは冗談だが、BRZ STI SportタイプRAの価格設定が安すぎるというのはマジメな話である。同車がいかに安すぎるかは、標準のBRZ STI Sportを街のチューニングショップに持ち込み、「これこれこういった感じのチューニングをしてほしい」と依頼することをイメージしてみれば、即座にお分かりいただけるはずだ。
チューニングショップなら門前払い
前述のとおり、BRZ STI SportタイプRAと標準のSTI Sport(MT)との価格差は約119万円。いや、タイプRAに標準装着されているブレンボ製フロントブレーキ(17インチ対向4ピストン)&リアブレーキ(17インチ対向2ピストン)は、標準のSTI Sportにおいても税込み22万円のメーカーオプションとして装着できるため(※フロントシートヒーターとセット)、ブレンボ付きSTI Sportと比べた場合の価格差は約97万円でしかない。
そしてそのうちの約53万円は、STIのカタログを通じて購入できるパフォーマンスパーツ(フレキシブルVバーやパフォーマンスマフラー等々)の代金に相当するため、チューニングショップの店主には、おおむね下記のような依頼をすることになる。
「44万円ぐらい(約97万円-約53万円)で、エンジンやフライホイールなんかのバランスどりと冷却フィン付きリアデファレンシャルケースの装着、シフトアシスト機能(レブシンク/フラットシフト)の追加をお願いします。あと、予算内でショックアブソーバーを4輪ともZF製に替えていただけますか?」
店主としては「……帰ってくれ」と言うほかないだろう。つまりBRZ STI SportタイプRAの価格は、そこに施されているチューニングの内容や部品代などから考えると「普通であれば商売にならないぐらい安い」ということだ。
(たぶん)あまり値落ちもしない
そして将来的なリセール価格を考えてみた場合も、スバルBRZ STI SportタイプRAは「総合的には安い!」と判断できる。
もちろん、リセールのことを考えてクルマを買うのもヤボな話であり、未来における価格がどうなるかなど、正確なところは誰にも分からない。しかしそれでもBRZ STI SportタイプRAは、サーキットなどで派手にやっつけてしまわず「乗るのは天気のいい週末ぐらい」的な使い方をしている限り、数年後もおそらくは相当な高値で売却できるはずだ。
そう考える根拠のようなもののひとつは、例えばスバルが今から10年前に発売したSTIのコンプリートカー「S207」の直近における中古車価格だ。
2015年10月に400台限定で発売されたS207は、ご存じのとおり「スバルWRX STI」をベースにエンジンや足まわりに専用のチューニングを施すとともに、内外装に専用装備を追加したコンプリートカー。そのチューニング内容はもちろん今回のBRZ STI SportタイプRAと同じではないが、やや似ている部分も多い。
そんなS207は新車価格599.4万円で発売されたわけだが、約10年が経過した今、同車の中古車は「550万円前後」で販売されているケースが多い。もちろん中古車の小売価格=買い取り価格ではないが、そうだとしても、S207は「10年乗ってもあまり値落ちしないクルマ」だと言うことはできる。そしてBRZ STI SportタイプRAも、おそらくはそんなクルマに、つまりは「あまり値落ちしないクルマ」になることはほぼ間違いない。だからこそ「総合的には安い!」と判断できるのだ。
以上のすべてを勘案すると、スバルBRZ STI SportタイプRAの抽選に当たったすべての人に筆者からかけたい言葉は、次のようなものにしかならない。
「おめでとうございます! かなりいいクルマを、かなり安く買えましたね!」
(文=玉川ニコ/写真=スバル/編集=藤沢 勝)

玉川 ニコ
自動車ライター。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、自動車出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。愛車は「スバル・レヴォーグSTI Sport R EX Black Interior Selection」。
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