ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)
ラグジュアリーカーの神髄 2026.01.19 試乗記 ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。次の100年を見据えて
「2026年までにすべてのラインナップを電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)に移行し、2030年までには、それをBEVのみとする……」。そんな施策を骨子としたベントレーの脱炭素化に向けた経営戦略が、2020年に発表された「ビヨンド100」だ。100年余の歴史を持つこのメーカーが、次の100年もラグジュアリーブランドとしてのクルマづくりを持続させるために盛り込まれた各種の取り組みは、2022年には早くもアップデート。現在は、前出の2030年というタイミングを2035年に後ろ倒ししながらも、「それ以降はピュアなBEVのみを提供」とあらためて強調する「ビヨンド100+」のプロジェクトを提唱している。
実際、20年以上にわたり10万基以上もつくり続けた、ベントレー車のアイコン的存在である6リッターのW型12気筒エンジンは、すでに生産を終了。そのポジションは、パワフルなツインターボ付きの4リッターV型8気筒エンジンにモーター技術を組み合わせ、W12をしのぐ性能を実現させたハイブリッドユニットへと置き換わっている。電動化への取り組みがあまりに早急だったことから、多くの欧州メーカーが戦略の見直しを迫られているなかでも、ベントレーは、差し当たっては着実にビヨンド100+のロードマップ上をまい進する姿勢を示している。
そうした状況のただなかで2024年に発表されたのが、2013年に登場した3代目よりコンポーネンツの68%を刷新したと伝えられる第4世代の「コンチネンタルGT/GTC」だ。今回取り上げるのは、その現行4代目に2025年に加えられ、日本では同年10月に導入されたアズールグレードである。
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ラインナップ随一の“おもてなし”グレード
まずは伝統の丸型4灯のフロントランプが、横に伸びたランニングランプが中央部を貫く2灯レンズ式へと変わったことが大きなアイキャッチとなる現行のコンチネンタルGT。そんなこのモデルのラインナップにおいて、高性能版である既存の「スピード」グレードと、軌を一にして新設されたベースグレードとの間に位置するアズールのキャラクターは、「ウェルネスシーティングとリラクセーション機能、専用デザインにフォーカスしたもの」と紹介されている。
具体的には、縦型フィンを採用した光沢ブラック仕上げのマトリックスグリルや、それを取り巻く明るいクロームのサラウンド、フロント下部両端の光沢ブラックのスプリッターや新デザインのホイールなどが、エクステリア面における専用のアイテムとなる。相も変わらず贅(ぜい)が尽くされた仕立てのインテリアでは、シートやドアトリムに施されたダイヤモンド状のキルティングや、ヘッドレストの刺しゅうなどが新しい。
加えて、レザーシートのコントラストステッチや照明付きのスカッフプレート、ウォールナット製のデコレーションパネルなども専用のアイテム。さらに、疲労軽減と快適性向上を目的に、シート表面の温度や湿度、面圧分布などを綿密に制御するウェルネスシーティング機能を標準で採用するなど、なるほど居住環境にこれ以上はないというほどの配慮がなされているのが、このグレードである。
すなわち、明確に“ドライバーズカー”であるコンチネンタルGTのなかにあっても、乗り込んだ瞬間に覚える「おもてなし空間に誘われた感覚」を、これまで以上に強く味わえるのがアズールということだ。トヨタが「センチュリー クーペ」で手に入れたいのも、きっとこのような雰囲気なのだろうな……。と、そんなことも想起させられたりする。
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ほとんどの走行はモーターでこと足りる
そんなコンチネンタルGTアズールに搭載されるパワーユニットは、ベントレーのなかで「ハイパフォーマンスハイブリッド」と呼称されるアイテム。既述した、ツインターボ付き4リッターV型8気筒エンジンとモーターからなるハイブリッドユニットで、4輪を駆動する。その構成は既存のスピードグレードと変わりないが、あちらのシステム最高出力が782PS、システム最大トルクが1000N・mであるのに対し、こちらアズールは680PSに930N・mとややディチューン版となっている。この点が、パワーユニットの名称に「ウルトラ」の4文字が冠されるか否かの相違ということになる。
ドライバーズシートへと腰を下ろし、イグニッションをオン……いやシステムを起動すると、センターディスプレイ/3連メーター/化粧パネルの3変化が行われる「ベントレーローテーティングディスプレイ」が回転し、インフォテインメントシステムの画面が現れる。凝った仕掛けに面食らいながら走り始めると、まずは完全なるBEVとしての振る舞いで、全長が4895mm、全幅が1966mmというこの大型クーペはしずしずと速度を増していく。
85kmのEV航続距離を実現させる、容量25.9kWhの駆動用バッテリーを搭載することもあり、車両重量は約2.5tと重量級ではあるものの、モーターのみでも最高出力は190PSに達し、最大トルクも450N・mと強大だ。それゆえ、常識的な街乗りシーンであれば、まずエンジンの助けを借りることにはならない。というか、天候の関係もあってワインディングロードまで足を延ばすには至らなかった今回のロケでは、バッテリー残量が十分に残っていたこともあって、常時エンジンが稼働する「スポーツ」モードを選ばない限りは、せっかくのV8サウンドを耳にすることはできなかったというのが実際のところだ。
そして、当然ながらそうしたシーンでは、あらためてBEVの特長である静粛性の高さや加速の滑らかさに感心させられることになった。とはいえ、こうして実利のみを追うのであったら、もはやエンジンなんてなんでもいいのでは……ともなりかねない。というわけで例のスポーツモードを選択すれば、やはりそこには、これまでとは異次元・ゴキゲンな世界が広がる。
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真のラグジュアリーブランドの強み
エンジンで走った際の快感、その要因がまずはなんといっても“音”にあるということを、スポーツモードを選択してエンジンに火が入ったこのモデルは、あらためて教えてくれる。
これまで、エンジン車では実現が困難だった高度な静粛性を得られる電動走行の特長は、コンチネンタルGTのなかにあっても特にウェルビーイングにこだわったアズールとの親和性が高いことは間違いない。とはいえ、それでもエンジンサウンドがクルマを自身で操っているという実感に直結するのは、“走行音”の獲得のためにさまざまな電子音を模索した挙げ句、結局は疑似的なエンジン音に収斂(しゅうれん)しているBEVの疑似サウンドの例を見れば、もはや明らかである。
実際、プレミアムでハイパフォーマンスなモデルになるほど、BEVはユーザーから支持されず、それが商品戦略の見直しにつながっている。ハイブリッドのケースを見ても、まったくの鳴かず飛ばずに終わった4気筒のメルセデスAMG 63シリーズなどは、こうした傾向を顕著に表す事例といえるだろう。
その点、新しいコンチネンタルGTの“エンジンとモーターの二刀流”は、静粛を破って立ち上がる際のエンジンサウンドが、車格にふさわしい適度な迫力を発しつつも、見事に上質に仕上げられており、大いに期待に沿うものといえる。それまでは主役だったモーターが今度はアシストにまわり、エンジンの発する圧倒的なパワーで巨体を豪快に加速させていくさまも、なんともぜいたくで心地よい。「庶民には到底かなえられない夢心地の走り」を味わわせてくれるのが、このモデルという印象である。
世界最大の自動車マーケットである中国では、多くのユーザーにブランド信仰がないことから、欧州プレミアムブランドの製品が総崩れ状態に陥り、いっぽう地元ヨーロッパでも、押し寄せる新興国のモデルが低価格を武器に市場を広げつつあると聞く。そうしたなかにあって、プレミアムブランドとも一線を画したベントレーのようなスーパーラグジュアリーなブランドは、意外にそうした痛手を受けづらいのかもしれない。コンチネンタルGTアズールに触れて、そんなことを感じさせられることにもなったのである。
(文=河村康彦/写真=向後一宏/編集=堀田剛資/車両協力=ベントレーモーターズ ジャパン)
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テスト車のデータ
ベントレー・コンチネンタルGTアズール
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4895×1966×1397mm
ホイールベース:2851mm
車重:2459kg
駆動方式:4WD
エンジン:4リッターV8 DOHC 32バルブ ツインターボ
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:519PS(382kW)/6250rpm
エンジン最大トルク:770N・m(78.5kgf・m)/2300-4500rpm
モーター最高出力:190PS(140kW)/6250rpm
モーター最大トルク:450N・m(45.9kgf・m)
システム最高出力:680PS(500kW)
システム最大トルク:930N・m(91.8kgf・m)
タイヤ:(前)275/35R22 104W M+S XL/(後)315/30R22 107W M+S XL(ピレリPゼロ オールシーズン エレクト)
燃費:--km/リッター
価格:4040万円/テスト車=4378万1680円
オプション装備:アニメーテッドウェルカムランプ-バイ・マリナー(18万7880円)/ベントレーローテーティングディスプレイ(96万0540円)/マリナーレンジ-ソリッド・アンド・メタリック(177万2770円)/シングルフィニッシュ-ピアノリネン-バイ・マリナー(46万0490円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:830km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(6)/山岳路(0)
テスト距離:193.0km
使用燃料:16.4リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:11.8km/リッター(満タン法)/12.4km/リッター(車載燃費計計測値)
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河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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