BYDシーライオン7 AWD(4WD)
次の世界が見えている 2026.03.05 JAIA輸入車試乗会2026 堂々たるスタイルにライバルの上をいくパワーと一充電走行距離、そしてざっくり2割はお得なプライスを武器とする電気自動車(BEV)「BYDシーライオン7」。日本市場への上陸から1年がたち、少しずつ存在感が増してきた電動クーペSUVの走りやいかに。タッチや質感も十分に吟味
全長4830mm、全幅1925mm、そして全高1620mmという堂々たる体格のBYDシーライオン7は、「アルファ・ロメオ8Cコンペティツィオーネ」のデザイナーとして名をはせたヴォルフガング・エッガー氏がそのフォルムを生み出した。同氏が2010年代のランボルギーニチェントロスティーレを率いて「ウラカン」や「ウルス」を市場に送り出したという事実を知ったうえで(少し厳しい目を持って)このBEVを見ても、塊から削り出したような硬質なフォルム、パネルのチリにまで気を配った仕上がりなど、なかなかのフィニッシュに感心する。最新のBYDが掲げる「海洋シリーズ」のフロントマスク「オーシャンXフェイス」は、くどさが控えめのハンサム系といった印象だ。
パワーユニットや装備については導入時のニュース(参照)に明るいので割愛するが、容量82.56kWh、4WD車で540kmの一充電走行距離をアナウンスする薄型バッテリーそのものが構造体となるセルtoボディー(CTB)は、剛性感が高くしっかりとした安心感たっぷりの走りに寄与。こちらも感心するしかない。
アクセルペダルはオルガンタイプ。右ハンドル車にあっても、フットレストを含めたペダル配置は適切である。後発ながら、プレミアムカーオーナーにもアピールしたいという意図とこだわりがみてとれる。そのアクセルペダルを踏み込めば、前後合わせて525PSの最高出力と同690N・mの最大トルクがさく裂。加速レーンが短い自動車専用道路への合流時も余裕のノンストレスである。
今回のような短い試乗時間では、少々意地悪にあら探しをしようと思ってもそう簡単にネガは見つからない。気になったのは、デザイン優先なのか小さなリアウィンドウのせいで後方視界がイマイチなことと、夏場に暑そうな広さ2.1平方メートルの大きなガラスルーフがもれなく付いてくるのは過剰かな、といった程度。未来感をいたずらに表現しないスイッチが適度に残された操作系は、まぎれもなくユーザーフレンドリーだし、そのタッチや質感も十分に吟味されていることがわかる。
新興メーカーで、中国発の電気自動車というプロフィールから、抵抗感を覚える向きが多いのは理解できる。ただ、デザインやパフォーマンスはもちろんのこと、使う立場になって考えられた操作系や装備には一目置きたくなる。当然、コスパは一頭地を抜く。
欧州の報道によれば、ステランティスはBEVに注力していた開発方針から一転、なんとディーゼル車を復活させるとか、させないとか。笛吹けど思うように市場が踊らなかったのはもちろんだが、そう方向転換させた一因に、BYDの開発スピードやそれに比例するように高まってきた製品のクオリティー、手ごろな価格といった影響がなかったわけではないだろう。
自動車メーカー各社が発表した2025年の世界販売台数において、BYDはそのステランティス(548万台)に次ぐ世界第6位(460万台)となった。いずれBYD、上海汽車(SAIC)、ジーリー(ボルボやロータスの親会社)の中国御三家が新ビッグ3と呼ばれるように……とか、シーライオン7のステアリングを握ってついそんなことまで考えてしまった。
(文=櫻井健一/写真=田村 弥/編集=櫻井健一)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4830×1925×1620mm/ホイールベース:2930mm/車重:2340kg/駆動方式:4WD/モーター:交流誘導電動機/フロントモーター最高出力:217PS(160kW)/フロントモーター最大トルク:310N・m(31.6kgf・m)/リアモーター最高出力:312PS(230kW)/リアモーター最大トルク:380N・m(38.7kgf・m)/タイヤ:(前)245/45R20 103V XL/(後)245/45R20 103V XL(ミシュラン・パイロットスポーツEV)/一充電走行距離:540km(WLTCモード)/交流電力量消費率:177Wh/km(WLTCモード)価格:572万円

櫻井 健一
webCG編集。漫画『サーキットの狼』が巻き起こしたスーパーカーブームをリアルタイムで体験。『湾岸ミッドナイト』で愛車のカスタマイズにのめり込み、『頭文字D』で走りに目覚める。当時愛読していたチューニングカー雑誌の編集者を志すが、なぜか輸入車専門誌の編集者を経て、2018年よりwebCG編集部に在籍。
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