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第62回:いい加減、ワタシたちはBYDやヒョンデと向き合うべきじゃないのか!?(後編)

2025.03.26 カーデザイン曼荼羅 渕野 健太郎清水 草一
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前回に引き続き、今回もアジアメーカーのカーデザインについて考えていく。写真は、世界中で高く評価されているヒョンデのEV「アイオニック6」。
前回に引き続き、今回もアジアメーカーのカーデザインについて考えていく。写真は、世界中で高く評価されているヒョンデのEV「アイオニック6」。拡大

世界市場で勢いに乗っている中国・韓国の自動車メーカー。すでに日本勢の脅威となって久しい彼らだが、デザインの面でも日本・欧州をしのいでいるのか? 間もなく日本に導入される新型車も例にとりながら、BYDやヒョンデのデザインを識者とともに考えた。

前編に戻る)

「ヤンワンU8」はクワッドモーターの水陸両用電動SUV。超信地旋回(その場でクルリと回れること)のデモンストレーションで注目を集めていた。
「ヤンワンU8」はクワッドモーターの水陸両用電動SUV。超信地旋回(その場でクルリと回れること)のデモンストレーションで注目を集めていた。拡大
「ヤンワン(仰望)」というのはBYDが展開するプレミアムブランドのひとつ。英国などでも発表されているというが、「ディフェンダー」のおひざ元であるかの地で観衆からどんな反応があったか、ちょっと気になる……。
「ヤンワン(仰望)」というのはBYDが展開するプレミアムブランドのひとつ。英国などでも発表されているというが、「ディフェンダー」のおひざ元であるかの地で観衆からどんな反応があったか、ちょっと気になる……。拡大
高級ミニバンの「デンツァD9」。前から見たら「トヨタ・エスクァイア」、横から見たら「ホンダ・オデッセイ」というのが、webCGほったの心象だった。
高級ミニバンの「デンツァD9」。前から見たら「トヨタ・エスクァイア」、横から見たら「ホンダ・オデッセイ」というのが、webCGほったの心象だった。拡大
清水「この2台については、なんで日本のショーで展示しちゃったの? って感じだね」 
ほった「『デンツァD9』については特にそうですよね。“元ネタ”がそこら中を走ってる日本でこんなの展示して、多少なりとも反感を買うって、思わなかったのかな?」
清水「この2台については、なんで日本のショーで展示しちゃったの? って感じだね」 
	ほった「『デンツァD9』については特にそうですよね。“元ネタ”がそこら中を走ってる日本でこんなの展示して、多少なりとも反感を買うって、思わなかったのかな?」拡大

「ジャパンモビリティショー」の展示車両に思う

webCGほった(以下、ほった):ここまでの話をまとめると、評価の高い/低いは別にして、「日本で見かけるBYDは没個性だけど洗練されている」という点では皆、同意見である……という理解でいいですね? ただ今回は、日本に導入されているモデルに限らず、BYD全体のデザインを考えたいんです。2023年の「ジャパンモビリティショー」で、日本未導入のクルマが2台展示されたじゃないですか。

渕野健太郎(以下、渕野):SUVとミニバンの?

ほった:そう。「ヤンワンU8」と「デンツァD9」です。あれとか見て、どう思いました?

渕野:ミニバンのほうはかなりよく出来ていると思いました。顔まわりを見ると何かに似ているとは思いましたが、全体としていいプロポーションしていましたよ。SUVのほうはタイヤに対してボディーがかなり重い印象がありました。デザインの狙いはわかるんですけどね。

ほった:そうですか。ワタシは正直、コレは日本で展示しないほうがよかったんじゃないかって思ったんですが。(タブレットでヤンワンU8とデンツァD9の画像を見せる)

清水草一(以下、清水):えっ? なにこれ?

ほった:だから、ジャパンモビリティショーにBYDが出したSUVとミニバンです。ミニバンはご覧のとおり。SUVも「ディフェンダー」とか「メルセデス・ベンツGクラス」とか、アレやコレやを継いでった感じでしょ? 会場では超信地旋回するって盛り上がってましたけど。

清水:全然目に入らなかった……。こういうパクリみたいなの、まだあるんだね。もうなくなったのかと思ってた。

ほった:これはさすがに、清水さんが言ってたツギハギデザインですよ。

清水:中国車のアドバンテージって、基本的にはコストだからね。やっぱデザインは、まだこれからってことでしょ。

いいものとそうでないものの振れ幅がデカすぎる

ほった:でも、こっちはどうです? この4月に日本でも発売される「シーライオン7」(参照)。

清水:これはもう、ほとんどソツがない。

渕野:サイドのシルエットを見てもきれいですね。めちゃくちゃこなれてますよ。自分もよく描くパターンでしたね、こういうの。タイヤのアーチ周りだけがちょっと四角くて、流麗でスポーティーな全体の流れに、ちょっとしたゴツさをうまく合体させてると思います。内装もこんな感じですよ。(写真を見せる)

清水:あ、いいなこれ。変な自己主張がないし。これを見たらもう、EV(電気自動車)に関しては、中国製の世界制覇確定じゃない? 日本市場を除いて(笑)。

ほった:それはさすがに、判断が早すぎる気がしますけど(笑)。まぁとにかく、個人的にはBYDのデザインって、デンツァやヤンワンみたいなのとシールやシーライオン7みたいなのが入り交じっているのが実情だと思うんですよ。いまだにパクリのガッカリ系もあれば、「おお、これは」って思わせられるものもある。玉石混交、過渡期のダイナミズムみたいな。いっぽうで韓国のヒョンデは……って話に、そろそろいきたいんですが。

渕野:BYDと比べると、ヒョンデのほうは話すことが少ないんですけどね(笑)。この間、たまたま「インスター」を見たんですけど、結構いいなって思いました。ヒョンデのデザインって、割とクセ強めなのが多いじゃないですか。例えば「コナ」はちょっと複雑でしょう。プロポーションはともかく、グラフィックが割とこう……なんていうかなチャレンジングで。

清水:やりすぎですよね。(全員笑)

渕野:日本国内で販売していないクルマも、コテコテなデザインが少なくない。そんななか、インスターはそこまでじゃない。

電動クロスオーバーSUVの「BYDシーライオン7」。
電動クロスオーバーSUVの「BYDシーライオン7」。拡大
日本でもすでに先行受注が開始されており、2025年4月15日に発売されるという。
日本でもすでに先行受注が開始されており、2025年4月15日に発売されるという。拡大
「シーライオン7」のサイドビュー。後ろ下がりの伸びやかなフォルムと、四角張ったホイールアーチの組み合わせに注目。
「シーライオン7」のサイドビュー。後ろ下がりの伸びやかなフォルムと、四角張ったホイールアーチの組み合わせに注目。拡大
清水「これは内装の質感もいいね」 
ほった「『東京オートサロン』の発表でも、『内装が自慢です!』って言ってたんですよ。……その割には、展示車は窓閉めの周囲は柵アリで、車内は拝めなかったんですけど」
清水「これは内装の質感もいいね」 
	ほった「『東京オートサロン』の発表でも、『内装が自慢です!』って言ってたんですよ。……その割には、展示車は窓閉めの周囲は柵アリで、車内は拝めなかったんですけど」拡大
ヒョンデ・インスター
ヒョンデ・インスター拡大

評価の分かれる「インスター」の造形

渕野:インスターのデザインを見ると、キャビンからドアまでを1つの面でつくったところにフェンダーがくっついたような、いってみればクロカン車的な基本の立体構成を、かわいらしく表現している感じがするんですよ。これは結構いいなと思います。リアのプロポーションは、ぐーってキャビンを絞ったうえで背も高いので、スズキの「イグニス」みたいなイメージですけど。このセグメントのクルマにしては、結構ランプ類にもお金かけてますよ。これ、200万円台からでしたっけ?

ほった:284万9000円から357万5000円です。

渕野:個人的に、EVの普及は安いクルマが登場しないと絶対ダメだって思ってるんですけど、このクルマはそのきっかけになるんじゃなかろうかと。

清水:どうでしょうね? スペックや値段を見ると魅力的だけど、インスターにはいろいろな障害があるじゃないですか。これ、この間のJAIA大試乗会で展示されてたよね?

ほった:ありました。オートサロンにも。

清水:これはもともと、韓国の軽自動車でしょう、キョンチャ(軽車)っていう。それがベースで、その全幅を広げてるんで、やっぱり無理してる。全否定じゃないけど、実物を見て非常におもちゃっぽいって感じました。あえておもちゃっぽくしてるんでしょうけど、これを買うのはなかなかハードルが高いと思いますよ、日本では。地方の、ガソリンスタンドがない過疎地のおじいちゃんおばあちゃんがこれ買うかっていったら、ちょっと買わないでしょ。

ほった:量販を見込む安価なEVとして見たら、ターゲット層の嗜好(しこう)と実車のデザインにズレがあると。

清水:そもそもヒョンデはインターネット専売だしね。航続距離はインスターの半分ぐらいしかなくても、皆「日産サクラ/三菱eKクロスEV」を買うよ。

渕野:うーん、どうでしょうね。その点についてはデザインの差というより、自分は販売網の差だけな気がしますけど。

清水:まぁ確かに、販売網の差はすさまじくデカいですからね。

日本にも導入される予定の「ヒョンデ・インスター」。韓国で販売されている軽車(キョンチャ)「キャスパー」をベースとした、コンパクトEVである。
日本にも導入される予定の「ヒョンデ・インスター」。韓国で販売されている軽車(キョンチャ)「キャスパー」をベースとした、コンパクトEVである。拡大
「インスター」の三面図。サイドでは、前後フェンダーの斜めのキャラクターラインがテールゲートの傾きと反復しており、個性的でありながら唐突感を上手に抑えている。
「インスター」の三面図。サイドでは、前後フェンダーの斜めのキャラクターラインがテールゲートの傾きと反復しており、個性的でありながら唐突感を上手に抑えている。拡大
インテリアはこんな感じ。助手席のシートバックは可倒式で、長尺物も積めるようにするなど、実用性も抜かりなし。
インテリアはこんな感じ。助手席のシートバックは可倒式で、長尺物も積めるようにするなど、実用性も抜かりなし。拡大
清水「それでも日本のお客は、『日産サクラ』を買うんじゃないかなぁ」 
ほった(どっちもそんなには売れないのでは……)
清水「それでも日本のお客は、『日産サクラ』を買うんじゃないかなぁ」 
	ほった(どっちもそんなには売れないのでは……)拡大

このデザインで窮状を打破できるか?

渕野:日本でのヒョンデはネット販売に特化していて、そこでかなりユーザー数が制限されている。それはもう承知のうえで、将来を見越して末永く商売しようとしてるんじゃないかな? 今はきっかけづくりの段階で……。

清水:いやいやいや。どうも、そう悠長なことは言っていられないみたいなんですよ。あまりの販売不振でジャパン(日本法人のヒョンデ モビリティ ジャパン)内部も混乱していて、ひょっとしたら、また撤退しちゃうかも。

ほった:あら、そうなんですか? 再導入当初は「数は追わない!」みたいに言ってましたけど。

清水:そうはいっても売れなさすぎ! ってことでしょ。

渕野:そうですか。でもそれはクルマの問題ではないでしょう。

ほった:クルマじゃないですよね。

渕野:商売の問題でしょう。

清水:そうなんですけど、なにせ全然商売になってない(笑)。インスターはかなりの肝いりだと思うけど、今の窮地をこのデザインで突破できるかっつったら……それは難しいですよ。日本では、地方の高齢者がこれをポチッとはしないでしょ。

ほった:いや、現状だと日本でEVを買う客層の中心は、地方のお年寄りじゃないでしょう。それにこれは輸入EVだし、ヒョンデも日本津々浦々でバカ売れ、なんて、さすがに考えてないんじゃないかな。

ただデザインそのものの評価については、どっちかというとワタシも清水さん寄りなんですよね。ヒョンデの戦略説明会で写真を見せられたときは「おお!」って思ったけど、オートサロンで実車を見たら、細かいところで日本のユーザーの期待に届いていない感じがしました。造形的にひょろっとしてるのもそうですが、ディテールの、特に目につくところの質感が気になる。黒い装飾の見せ方や使いどころも、ちょっと不安になりました。実際、展示車両でもスリ傷がどうにも目についたし。

正直、「このジャンルのクルマは、日本のメーカーのほうがつくり慣れてるな」と思いました。

清水:インスターは、ヒョンデとしては主に国内向けでしょ? 基本は軽なんだから。ほかのヒョンデ車と比べても、見た目のクオリティーがかなり違う。海外では難しいよ。

ほった:ヨーロッパでも売りますけどね。

渕野:ヨーロッパでは売れると思いますよ。

日本では“通販”でのみクルマを販売するヒョンデだが、実は横浜や大阪などに直営拠点を持っており、また三菱商事エネルギーや出光興産、J-netレンタリースなどと協力して、試乗拠点の開設も進めている。ここからの巻き返しなるか?
日本では“通販”でのみクルマを販売するヒョンデだが、実は横浜や大阪などに直営拠点を持っており、また三菱商事エネルギーや出光興産、J-netレンタリースなどと協力して、試乗拠点の開設も進めている。ここからの巻き返しなるか?拡大
「インスター」の日本導入が発表された、2024年11月の事業説明会より。ヒョンデは2029年までの5年間で、日本での販売規模を10倍以上に伸ばすとしている。インスターは、その起爆剤としての役割が期待されているのだ。
「インスター」の日本導入が発表された、2024年11月の事業説明会より。ヒョンデは2029年までの5年間で、日本での販売規模を10倍以上に伸ばすとしている。インスターは、その起爆剤としての役割が期待されているのだ。拡大
「東京オートサロン2025」より、webCGほったが撮影した「インスター」。
「東京オートサロン2025」より、webCGほったが撮影した「インスター」。拡大
この写真で、黒い樹脂パーツの質感が伝わるだろうか? 
ほった「このデカい黒加飾の部分ですけど、初期型の『テスラ・モデルS』みたいにバキッとした感じじゃないんですよ。ワタシもこういうクルマは応援したいんですけど……ユーザーってのは残酷ですからね」
この写真で、黒い樹脂パーツの質感が伝わるだろうか? 
	ほった「このデカい黒加飾の部分ですけど、初期型の『テスラ・モデルS』みたいにバキッとした感じじゃないんですよ。ワタシもこういうクルマは応援したいんですけど……ユーザーってのは残酷ですからね」拡大
ほった「基本デザインはユニークだと思うし、『フィアット・パンダ』を喜んで買うタイプの人には薦められるんですが……」 
清水「そういう人が、ヒョンデにいくかな?」 
ほった「そこですよね」
ほった「基本デザインはユニークだと思うし、『フィアット・パンダ』を喜んで買うタイプの人には薦められるんですが……」 
	清水「そういう人が、ヒョンデにいくかな?」 
	ほった「そこですよね」拡大

ヒョンデはデザインで攻めている

ほった:インスターのデザインについては評価が真っ二つに分かれた感じですけど、ほかのモデルはどうでしょう?

渕野:ヒョンデ全体のデザインの話なんですけど、これが最新の「アイオニック5」で、これが「アイオニック6」。どちらもすごい形してますよね。

清水:6はスバラシイ。大好きですよ!

渕野:そしてこれが「アイオニック9」(写真を見せる)。最近出た3列シートのMPVです。とにかくヒョンデは、独自のプロポーションをつくっていると思うんです。他のメーカーがコンサバに仕上げて販売台数を追うなかで、彼らは攻めてます。そもそも、これだけたくさんのデザインのバリエーションを市販化してるっていうこと自体、ものすごいんだけど、そのうえで個々のデザインでも攻めている。

清水:ある意味トヨタっぽいって感じます。世界第3位の販売台数を持ちつつ、まるで違うデザインテイストのものをバンバン出してるので。

渕野:そうですね。ただ、トヨタよりもデザインの振れ幅は大きいです。トヨタは「こうだ!」っていう立体構成を基本に持ちつつバリエーションを展開している感じだけど、ヒョンデはクルマによって、プロポーション自体をいろいろ模索してるので。

清水:そうなんですか。

渕野:アイオニック6も、リアがすごい下がっていて、バナナみたいなフォルムでしょう。そういうのって、なかなかつくれないですよ。それでいて、全然違う形のアイオニック9もつくれる。すごいと思いますよ。そういう面でも。

清水:トヨタみたいに、あっちが来たと思ったらこっちが来るって感じはすごいと思います、私も。

渕野:とにかく、ヒョンデは「デザインで攻めてるメーカー」なんですよ。個人的には、日本国内でもヒョンデには頑張ってほしいです。だって世界的には第3位のメーカーだし。そういえば、ヒョンデはキアの商用車も日本に入れるつもりなんですよね?

ほった:「PV5」ですね。

渕野:ショーカーじゃなく、市販車でこういうデザインのクルマを出すっていうのもカッコいい。売れるかどうかはまた別問題ですけど。

2024年11月に日本でお披露目された、改良型「アイオニック5」。中身の性能向上に加え、エクステリアデザインもバンパーまわりが微妙に変更された。
2024年11月に日本でお披露目された、改良型「アイオニック5」。中身の性能向上に加え、エクステリアデザインもバンパーまわりが微妙に変更された。拡大
清水氏も大好きな「アイオニック6」。2023年の「ワールド・カー・アワード」で、「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」「ワールド・エレクトリック・ビークル」「ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー」の3つの賞に輝いている。
清水氏も大好きな「アイオニック6」。2023年の「ワールド・カー・アワード」で、「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」「ワールド・エレクトリック・ビークル」「ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー」の3つの賞に輝いている。拡大
3列シートのクロスオーバーモデル「アイオニック9」。 
渕野「個別のクルマの完成度もそうですが、ひとつのブランドで、こうまで振れ幅の大きなカーデザインを実現できるのがスゴいと思うんですよ」
3列シートのクロスオーバーモデル「アイオニック9」。 
	渕野「個別のクルマの完成度もそうですが、ひとつのブランドで、こうまで振れ幅の大きなカーデザインを実現できるのがスゴいと思うんですよ」拡大
ヒョンデが発表した、キアブランドの電動ワンボックス「PV5」。日本向けの公式サイトもオープンしており、2026年春の発売が予告されている。
ヒョンデが発表した、キアブランドの電動ワンボックス「PV5」。日本向けの公式サイトもオープンしており、2026年春の発売が予告されている。拡大

日本未導入のモデルに見る完成度

清水:デザイン的には、ヒョンデよりもキアのほうがさらに攻めてるんじゃ?

渕野:キアはよりシンプルで洗練されたデザインですよね。インパクト重視のヒョンデよりも理解されやすい。なので日本市場では、おそらくヒョンデよりもキアのほうがウケるんじゃないかな。デザインテイスト的に。

清水:キアのクルマだったら、日本でも、「俺はデザインがいいからこれを買う!」っていうこだわり層が食いつくかもしれない。周囲が否定すればするほど燃えるタイプが(笑)。

渕野: ヒョンデは今、日本ではEVと燃料電池車の専売でやってるので、余計に難しいでしょう。(公式サイトで海外でのキアのラインナップを見つつ)個人的には、ここら辺が日本に来ても全然いいのかなと思うんですけどね。アメリカ市場向けのクルマをデザインするときって、ずっとヒョンデやキアのクルマと比較していたから、自分的にはすごくなじみのあるメーカーなわけですよ。

清水:日本車にとってのガチライバル。

渕野:そうそう。ヒョンデの「パリセード」とキアの「テルライド」っていうSUVがあるんですけど、カッコいいんですよ。あっちでああいうのを見ていると、なんで日本にないんだろうって思います。

清水:ヒョンデはデザイナーとして戦ってきた直接の好敵手で、渕野さんにとっては切磋琢磨(せっさたくま)してきたよきライバルみたいなものなのかな?

渕野:ライバルというよりも参考にしていました(笑)。

清水:日産の中村史郎さんも、「われわれはまず、ヒョンデやキアに勝たなきゃいけない。大変なんだよ」っておっしゃってたのを思い出します。

渕野:日産は特にそうですよね。(全員笑) デザインを主軸に置いている点としても日産はもう本当に韓国車とガチガチですよ。でもインパクトが薄いんですよね……。

清水:あちゃ~!(笑)。

(語り=渕野健太郎/文=清水草一/写真=BYD、ヒョンデ、newspress、webCG/編集=堀田剛資)

2022年登場の「キアEV6」。全長4.7mのハッチバックのEVで、韓国車として初めて欧州カー・オブ・ザ・イヤーに輝いた。
2022年登場の「キアEV6」。全長4.7mのハッチバックのEVで、韓国車として初めて欧州カー・オブ・ザ・イヤーに輝いた。拡大
2023年の「ワールド・カー・アワード」で、「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」「ワールド・エレクトリック・ビークル」を受賞した「キアEV9」。
2023年の「ワールド・カー・アワード」で、「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー」「ワールド・エレクトリック・ビークル」を受賞した「キアEV9」。拡大
渕野氏が「日本でもウケそうなのに」と思う2台。上が「ヒョンデ・パリセード」、下が「キア・テルライド」。
渕野氏が「日本でもウケそうなのに」と思う2台。上が「ヒョンデ・パリセード」、下が「キア・テルライド」。拡大
「キアEV6」のリアコンビランプ。カーデザインについては、すでに一部の日本メーカーは韓国メーカーに追い抜かれてしまっているようだ。頑張れ! 日本の自動車メーカー。
「キアEV6」のリアコンビランプ。カーデザインについては、すでに一部の日本メーカーは韓国メーカーに追い抜かれてしまっているようだ。頑張れ! 日本の自動車メーカー。拡大
渕野 健太郎

渕野 健太郎

プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間にさまざまなクルマをデザインするなかで、クルマと社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。

清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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