アウディA6スポーツバックe-tronパフォーマンス(RWD)
最新プラットフォームの光と影 2026.04.03 JAIA輸入車試乗会2026 エアロダイナミクスを追求したエクステリアデザインと、未来的で上質感あふれるインテリアや装備の融合がうたわれるアウディの電気自動車「A6スポーツバックe-tronパフォーマンス」。その走りに感心する一方で、気になるポイントも発見した。アウディの歴代市販車で最良のCd値
欧州で2024年に100%電気自動車(BEV)の「e-tron」として登場したアウディA6。流麗なクーペスタイルのボディーデザインが目を引く「スポーツバック」と、アウディの象徴ともいえるステーションワゴン「アバント」というラインナップのうち、今回ステアリングを握ったのは前者。ポルシェと共同開発したBEV専用プラットフォーム「PPE(プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック)」を用いた、プレミアム4ドアクーペだ。
BEVのアウディ車に共通する、パネルをはめ込んだシングルフレームグリルを中心とするフロントマスクやシャープなランプセクション(ヘッドランプはその下のブラックアウトされたグリル横に内蔵されている)、長いボンネット、流れるようなルーフライン、少し斜めにスパッと切り落とされたリアセクション……と、その見た目はどの角度から眺めてもイケメンである。
しかし、単にデザインに目を奪われてはいけない。空力性能は先代A6(エンジン車)のCd値0.24〜0.26に対し、現代のトップレベルとなるCd値0.21を誇る。これはアウディの歴代市販車でも輝ける最良の数値となる。
驚異的なエアロダイナミクスをまとったボディーは、高速域での風切り音を徹底的に封じ込める。最高速度が70km/hに制限された日本の自動車専用道路ではその真価を計り知ることはできないが、PPEによる低重心設計と洗練された足まわりがもたらす滑らかな走りは圧巻。路面の凹凸をしなやかにいなし、しっとりと進む様には、プレミアムセグメントで長年培ってきたアウディの技術力とプライドを感じさせる。
インテリアのデザインや質感にもアウディらしさがあふれている。曲面構成のパノラマディスプレイは見やすく、そこにあるだけでリッチな気分になれる。サイドミラーの機能をカメラとディスプレイに置き換えた「バーチャルエクステリアミラー」には慣れを要しそうだが、内装における素材の使い分けやパーツの組み付け精度も申し分ない。
その一方で気になったのは、立派なボディーに見合わないリアシートの居住性だ。BEV専用設計ゆえ、フラットなフロアによる広々とした空間を期待していたのだが、現実は少し異なる。大容量バッテリーを床下に敷き詰めた影響でフロア位置が高く、相対的に座面が低く感じられる。さらに座面長そのものが短いため、太ももの裏が浮き気味になり、膝を立てて座る姿勢を強いられる。
これだけ大柄なボディーを持ち荷室も広々としているが、後席には同クラスのセダンほどの快適性を感じることはできない。後席のくつろぎにおいて理想を突き詰めきれなかった点は、PPEパッケージングの数少ない、しかし見逃せない弱点として影を落としている。
A6スポーツバックe-tronは、間違いなくモダンアウディの技術的到達点の一つだ。その静かさと快適性、そして所有欲を満たすデザインは、BEV時代の新たなベンチマークになり得る。ただ、街なかでの取り回しや後席のパッケージングには、(SUVスタイルを採用しない)現状のBEVが抱える物理的な制約も垣間見える。
スタイリッシュなドライバーズカーとして、あるいはチャイルドシートを常用するヤングファミリー向けとして考えるのであれば、これほど知的でモダンなジャーマンクーペは他にないだろう。現在は後輪駆動のエントリーモデル「A6スポーツバック/アバントe-tron」と、4WDの「A6スポーツバック/アバントe-tronクワトロ」も追加され、ラインナップの拡充が図られている。
アウディであればついクワトロを、となるが、音もなく突き進む直進安定性や緻密なトルク制御、鼻先の軽さを味わうと、後輪駆動も悪くないと思える。なによりもオプションの「レンジプラスパッケージ」を装着した場合、国内トップレベルの846kmに達する一充電走行距離は、大きな魅力である。
(文=櫻井健一/写真=峰 昌宏/編集=櫻井健一)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4930×1925×1470mm/ホイールベース:2950mm/車重:2260kg/駆動方式:RWD/モーター:交流同期電動機/最高出力:367PS(270kW)<ローンチコントロール使用時:381PS(280kW)>/最大トルク:2565N・m(57.6kgf・m)/タイヤ:(前)235/45R20 100H XL/(後)265/40R20 104H XL(ミシュラン・パイロットスポーツEV)/一充電走行距離:769km(WLTCモード)/交流電力量消費率:141Wh/km(WLTCモード)/価格:981万円

櫻井 健一
webCG編集。漫画『サーキットの狼』が巻き起こしたスーパーカーブームをリアルタイムで体験。『湾岸ミッドナイト』で愛車のカスタマイズにのめり込み、『頭文字D』で走りに目覚める。当時愛読していたチューニングカー雑誌の編集者を志すが、なぜか輸入車専門誌の編集者を経て、2018年よりwebCG編集部に在籍。
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