ハーレーダビッドソン・パン アメリカ1250リミテッド(6MT)
いいバイクなんだけど…… 2026.04.17 試乗記 アメリカの大地が鍛えたアドベンチャーモデル「ハーレーダビッドソン・パン アメリカ1250」に、充実装備の上級モデル「リミテッド」が登場! 試乗して感じられた、日欧のライバルに勝るとも劣らない魅力と、どうしても気になるポイントを報告する。とっつきやすいような、そうでもないような
ハーレーダビッドソン・パン アメリカは、とても気になっていたバイクである。最初にこのバイクが登場したときは、「ハーレーのアドベンチャーってどうなのよ?」と思ったけれど、試乗した連中の、誰もがメチャメチャに褒めている。バイクの完成度も高いが、どうやらエンジンがスゴいらしい。確かに最近、筑波サーキットのレースに出場しているパン アメリカが、ドゥカティやKTM、国産リッターバイクを追いかけ回している。聞けばエンジンはノーマルのまま、コンピューターだけ変えれば十分戦えるのだとか。「そんなにスゴいなら乗ってみたいなあ」と思っていたのだ。
で、念願のパン アメリカにまたがってみて、いろいろと驚いた。まず車体が軽い。ヒョイと起こすことができる。その前に乗っていたのが400kgオーバーの「ロードグライド リミテッド」だったってこともあるかもしれないが、それを差し引いても軽い。そしてクラッチもメチャクチャに軽い。「ほかのハーレーもこれぐらい軽くすりゃいいのに」ってマジで思ったくらいである。アドベンチャーなのにシート高も低くて、両足がベッタリとつく。このクラスのアドベンチャーは、バイクにまたがった瞬間、大きさと足のつかなさで「無理です」ってなる編集H田のようなライダーもいるのだけれど、そういう人は、一度パン アメリカにまたがってみればいい。「オレでもリッターオーバーのアドベンチャーに乗れるじゃん」って思うかもしれない。それくらいのとっつきやすさがある。
いっぽうで「エッ?」と思ったのは、左スイッチボックスのボタンが多いこと。パッと見ただけでは、どこになんのボタンがあるのか分からない。最近はどのメーカーも、スイッチの操作を簡単にしようと頑張っているんだけどなぁ。ウインカーやホーンの位置がほかのハーレーと同じだと思っていたものだから、駐車場から出て左折するときに、思い切りホーンを鳴らして前のクルマのドライバーににらまれてしまった。今までのハーレーファンとは違う層に売りたいから、このスイッチレイアウトにしたんだろうな。なんて考えながら公道に出たのである。
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このエンジンはスゴい!
走りだしてみると、エンジンはメカノイズが大きめでにぎやか。クイックシフターはあんまり緻密にコントロールされている感じではなく、速度が出ていないとショックがあるし、ある程度速度が出ていても、気持ちよくスコンと入る感じではない。さらにパワーモードの切り替えが面倒。ボタンで簡単に切り替えはできるのだけれど、モードがたくさんあることに加え、一方向にスクロールすることしかできない。だから「ロード」モードから「スポーツ」モードへは簡単にできるのだが、またロードモードに戻すときは一周しないといけないのだ。そんな感じだったから、走りだして最初の数分は、あまりいい印象を持たなかった。
ところが、広い場所で高回転まで回してビックリ。想像をはるかに超える元気のよさだったのである。これなら国産やヨーロッパのビッグバイクとサーキットで張り合っているのも納得だ。しかも、スポーツモードにしたときの加速は、さらに強烈。それでいて無機質な回り方をしないのがこのエンジンのいいところで、高性能でビュンビュン回るエンジンなのに、どこか空冷ハーレーっぽい力持ち感と優しさがある。だから、単に速いだけでなく、乗っていて楽しい。
おまけにスロットルのマネジメントが秀逸。パワーはあるけれど、開けはじめが実によく調教されていて唐突さは皆無である。スポーツモードではかなりダイレクトなフィーリングになるのだけれど、転がり出しのフィーリングが自然なのだ。そこからさらに開けるとパワーがグッと盛り上がるのだが、そのつながりもスムーズ。渋滞しているときに「レイン」モードにしてみたら、さらに従順でストレスなし。実にいいエンジンである。
ちなみにゴトー、某自動車関係のメーカーで防振対策の仕事をしていたことがあるから、試乗すると振動の出方をチェックするクセがある。パン アメリカの場合、4000rpmくらいからタンクに細かい振動が出て、回転が上がっていくと振幅が大きくなっていく。6000rpmくらいからはハンドルやステップにも微振動が出てくる。まぁヨーロッパなどでスピード域が高くなったらどうなるか分からないが、日本でストリートを普通に走るレベルであれば、振動はほとんど気にならないといっていいだろう。
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見た目も磨いていこう
ハンドリングもエンジンに負けず劣らず素晴らしかった。非常に素直で、車体をバンクさせると、スッときれいに倒れて旋回していく。サスペンションはしなやかな動きで、ストロークの長いアドベンチャーモデルにも関わらず、ハードブレーキングでもあまりノーズダイブを感じないのは、電子制御化されているからかもしれない。試しにバンクしている状態でブレーキをしてみても、車体の姿勢変化は小さかった。ABSのフィーリングは独特で、何度も作動させてみたけれど、レバーへのキックバックが全くなく、常にスムーズに作動している感じ。なんかいろいろと安心できるバイクだ。
今回は都心部しか走っていないが、それでも十分に楽しい。ワインディングを走ってみたいものである。ただなぁ……。
低回転で若干ノイジーなエンジンとか、クイックシフターのフィーリングとか、ちょっと荒削りなところはあるけれど、総じてバイクとしてのポテンシャルは、非常に高い。エンジンも相当に気合を入れてつくられたことがよく分かる。でも、そういう魅力的な部分が外観から伝わりにくいのが、パン アメリカの一番もったいないというか、残念なところかもしれない。誰もが言う「乗れば素晴らしい」という言葉は本当だ。しかし、それはつまり「乗らなければよさが分からない」ということでもある。そして乗りたくなるデザインかといわれると、個人的にはちょっと微妙な感じがしてしまうのである。
(文=後藤 武/写真=向後一宏/編集=堀田剛資/車両協力=ハーレーダビッドソン ジャパン)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2345×1095×--mm
ホイールベース:1585mm
シート高:(低)815mm/(高)840mm
重量:299kg
エンジン:1252cc 水冷4ストロークV型2気筒DOHC 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:150HP(112kW)/8750rpm
最大トルク:129N・m(13.2kgf・m)/6750rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:5.6リッター/100km(約17.9km/リッター、EU134/2014)
価格:315万5900円~

後藤 武
ライター/エディター。航空誌『シュナイダー』や二輪専門誌『CLUBMAN』『2ストマガジン』などの編集長を経てフリーランスに。エアロバティックスパイロットだった経験を生かしてエアレースの解説なども担当。二輪旧車、V8、複葉機をこよなく愛す。
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