第336回:やっぱり絶交!
2026.05.25 カーマニア人間国宝への道やるじゃないかマツダ
担当サクライ君からメールが届いた。
「今度、『マツダ スピリット レーシング・ロードスター12R(イチニアール)』にご試乗いただけそうです。ご興味とご都合、いかがでしょう」
おおっ、ついに待望の国産新型車、それもカーマニア注目の一台だ。前回、「回ってくるのはステランティスばっかり」と不満を漏らした効果が出たようだ。
あの日は結局、「シトロエンC6」のデザインを巡って絶交寸前の口論にまで発展したが、たまにはケンカもするもんだ。雨降って地固まるよのう。うむう。
試乗当日。私は自宅にて、思わぬ爆音の接近に驚いた。これが国産車の排気音か?
オレ:音、デカいね!
サクライ:はい。フジツボ製マフラー装着ですから。
もちろん車検対応マフラーだろうけど、新車で売ってる国内メーカーのクルマがここまでの音量を出すとは驚きだ。さすが200台限定!
このクルマには少し前、他の仕事で箱根のワインディングロードで試乗したけど、夜の住宅地で音を聞くのは初めて。これだと静音モードが欲しいかも、というレベルの音量である。やるじゃないかマツダ。
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スポーツカーとしてちょうどいい
いつものように杉並区の住宅街を抜け、首都高に向かう。
オレ:サクライ君の印象、どうだった?
サクライ:すばらしかったです。
オレ:すばらしいよね。パワーがあるからラクチンだし。
サクライ:そうなんですよ。それでいて乗り心地もいいです。
足を硬くして「ヨコハマ・アドバン ネオバ」を履き、ステアリングレスポンスがノーマルの5倍くらい高いのに、乗り心地はそんなに変わらない。マツダ開発陣の血のにじむような努力を感じる。
私は首都高の合流路でアクセルを全開にした。うーむ、これはかなり速い。「フェラーリ328」と同じくらい速い。それってつまり、そんなに速くないってことだけど。
オレ:これ、何馬力だっけ?
サクライ:200PSです。
オレ:そんなにあるっけ⁉
サクライ:はい。あります。
ならばパワーウェイトレシオは328とほとんど同じだ。まさしく「安心して乗れる328」である。
箱根のワインディングロードでの12Rは、まるで「458イタリア」みたいにシャープに曲がる印象で、「ちょっと曲がりすぎでは」と思ったが、首都高でクルマの流れに乗って走ると、パワーもトルクもコーナリング感覚も、なにもかもがスポーツカーとしてちょうどよかった。
サクライ:でも、761万円(特別付属品含む)は高くないですか。
オレ:ぜんぜん高くないよ。「328GTS」は1600万円するんだから。古すぎて燃えちゃうリスクもあるし。
サクライ:そうですね。このクルマなら燃えないから安心ですね。
スポーツカーで安心してどうすんだ、という考え方もあるにはあるが、安心なほうがいいという人が大部分でもあるだろう。
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ロードスターは偉大だ
サクライ:実は僕、若いころ、初代ロードスターに乗ってたんです。
オレ:え、そうだったの⁉ あのころはロードスターじゃなく、ユーノスって呼んでたよね!
サクライ:そのときは同時にFD3S(3代目「RX-7」)も持ってました。
オレ:えええーっ! まるでマツダ党じゃん!
サクライ:はい。今でも精神的にはマツダ党です。
オレ:実は俺もさ、プレス対抗ロードスターレースの第1回優勝メンバーなんだよ。
サクライ:へえー。そうなんですか。
われわれはともに、ロードスターに浅からぬ縁があった。それは昔も昔、40年近く前のことである。
オレ:ロードスターって初代から、基本的にはぜんぜん変わってないよね。
サクライ:ですね。
オレ:それってホントに偉大なことだよね。
サクライ:そう思います。
スポーツカーの楽しさはパワーじゃない。むしろパワーは毒。パワフルになればなるほど楽しめなくなる。
例えば、カーマニアから絶賛され続けた「アルピーヌA110」。「スポーツカーはパワーじゃない」を実践したクルマだったが、結局ジワジワとパワーアップを続けた末、絶版になった。パワーアップは滅びの道なのだ(私見です)。
オレ:12Rは200台限定だから、性能アップも許せるし、実際すごくいいクルマだけど、俺が買うならやっぱり、1.5リッターの「Sレザーパッケージ」だな。
サクライ:そうですか。僕は中古の「RF」です。メタルトップのほうが安心ですし、排気量は2リッター欲しいですから。
オレ:なにぃ? それってメチャメチャ中途半端な選択じゃん!
サクライ:いえ、最善の選択だと思います。
し、信じられん。カーマニアとしてあり得ない(私見です)! 私は今夜もサクライ君と絶交したくなった。
(文=清水草一/写真=清水草一、webCG/編集=櫻井健一/車両協力=マツダ)
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清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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