第871回:今年もグリーンヘルは熱かった! ニュルブルクリンク24時間レース観戦記
2026.05.27 エディターから一言 拡大 |
“世界一過酷な草レース”として知られ、今年も波乱が巻き起こったニュルブルクリンク24時間レース。F1王者のフェルスタッペンも参戦するとあって、大いに盛り上がったその様子を、世界を飛び回るモータースポーツカメラマンが臨場感満点でリポートする。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
4度のF1王者がノルドシュライフェに降臨!
4度のF1ワールドチャンピオンであらせられる、マックス・フェルスタッペンさまの影響なのかどうなのか、前回の28万人を大幅に上回る、35万2000人もの観客が詰めかけた2026年のニュルブルクリンク24時間レース。沿道の渋滞はいつもにも増してひどいし、駐車場も満車だらけだしで、いやはや大変でした。
一歩森の中に足を踏み入れると、レースなんかそっちのけで飲めや歌えやの愛すべきギャラリーたち。マリフアナ臭もいつもに増して強烈で(あちらでは条件付きで合法)、カラダにたっぷり香りが染みついてしまい、帰りの空港が心配でなりませんでした(笑)。今年のニュルは天候不順で、晴れ間が見えたと思えば雨が降ったりあられが降ったり。さらに気温も低く、真冬のような様相。そりゃあ火を起こして肉焼いて、酒でも飲まないとやってられませんよ。まぁ、彼らは暑かろうと寒かろうと、肉を焼いて酒を飲んでいるんですが。
そんな大観衆のなかで開催された今年のレース。予選ではレッドブル・チームABTの2台の「ランボルギーニ・ウラカンGT3 EVO2」(84号車/130号車)が1位2位でフロントローを獲得。一番目立つ場所を独占するなんて、いかにもレッドブル。このときのドライバーやメカニックたちのひと仕事終えた感じ、よくわかります。注目のマックス・フェルスタッペン擁するメルセデスAMG・チームフェルスタッペンレーシングの3号車「メルセデスAMG GT3」は、予選4位で2列目スタート。現役F1ドライバーがノルドシュライフェでどんな走りをするのか。普段、趣味でのレース観戦は二輪がもっぱらのボクでさえ、興味津々です。
フェルスタッペンの妙技と雪辱を期す強豪の退場
さて、レースは案の定というかなんというか、マックスを擁する3号車のメルセデスAMG GT3がリードする展開となります。
耐久とはいえスプリントレース並みのペースとタイム差でラップを重ねていくのが最近のニュルブルクリンク。多種多様なクルマが混走するのがこのレースの特徴だけど、速く走る技術だけではなく、遅いクルマをラップする技術も求められます。そしてその速度差がエグい。だって、世界の名だたるGT3マシンと、ボクの大好きな“ロガン兄さん”こと「ダチア・ロガン」が混走しているんですよ。
で、そうしたシーンでもやっぱりマックスはスゴい。前走車を次々とラップしていく様子を見たんだけど、あまりの鮮やかさに見ほれてしまいました。いや、撮影しろよと思われるだろうけど、たまには肉眼で見たいじゃないですか。このレースに出場するドライバーは当然みんなうまいんだけど、マックスは一枚どころか数枚上手って感じでした。F1のことをよく知らないボクでも、一目でそのスゴさを理解できたんだから、そりゃあお客さんが増えるのもうなずけますよ。
スゴかったといえば、もうひとつ2026年のニュルでスゴかったことといえば……ラウンジのご飯です(笑)。今回はクライアントさまのご厚意で、殿上人しか入室できないマンタイ・ポルシェのラウンジに入室させていただくことができ、恐縮しきり。メディアセンターとはまったく違う雰囲気に、庶民のボクはソワソワと落ち着きませんでしたが、ポルシェメシだけは2日間ともしっかりいただきました。タッパーがあれば夜食に持って帰りたいなぁなんて思ったけど、ニュルブルクリンクに100均はありませんでした。
そして、世界中のセレブが集うステキな香りのラウンジでランチをいただいていたまさにそのとき、去年(参照)の雪辱に燃える優勝候補のマンタイがクラッシュ! その瞬間のラウンジ内は、なんともいえない雰囲気でした。……まぁ空気を読まないボクは、このお肉うまいなぁ、なんて言いながらランチをおかわりしていたんですけどね。デザートもおいしかったし、来年も入れてくれないかな。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ニュルはそんなに甘くない
こうして今年のニュルから去る羽目となったマンタイですが、それは彼らだけではありません。コース上ではオイルに乗って飛び出すクルマが続出。リタイア車も続々と増えていきます。ボクが撮影していたコーナーでもクルマがこちらへとすっ飛んできて、久しぶりに本気で逃げました。ニュルブルクリンクは選手はもちろん、ボクたち取材陣にとっても危険でドラマチックなレースだなと、あらためて感じさせられた場面でした。
そんな不幸は、あのスターのチームにも降りかかります。日曜もトップを快走していたマックスの3号車ですが、好事魔多し。お昼ごろにマシントラブルでリタイアしてしまいました。
しかし、今大会を盛り上げてくれたマックスには申し訳ないけれど、なんかキレイにオチがついた感じ。やっぱり現役F1パイロットはスゴいなとか言いながらも、正直なところ「ぽっと出のヤツに勝たれるのも、なんだかな」なんて天邪鬼(あまのじゃく)な気持ちもあったボク。耐久マスター、いやニュルマスターともいえる選手たちを差し置いてマックスがブッチギリなんて、面白くないじゃないですか。このひねくれた思い、暗黒時代を過ごした判官びいきな守旧派阪神ファンにはわかってもらえると思います(笑)。
そんなこんなで優勝したのは、チーム・ラベノールのメルセデスAMG GT3エボ(80号車)。メルセデスの優勝はなんと10年ぶりとのことで、さぞや派手に盛り上がるかと思いきや、チーム全員が喜びを爆発させるも、はっちゃけるメカニックもおらず、正直、ちょっと拍子抜けでした。こちらとしてはビールを浴びる覚悟で突撃したんだけどなあ。
真剣勝負で勝ったのだから
昔からモータースポーツは市販車開発の実験場なんていわれるけど、このレースにかぎっていえば、それはちょっと違うんじゃないかな。確かにさまざまなメーカーがテストやマーケティングの場としてこのレースを活用しているのは事実ですが、24時間耐久レースというのは、勝つか負けるかの命懸けの戦い。それは現役F1パイロットを擁してGT3を走らせるトップチームも、ロガンのようなイロモノマシンを走らせるアマチュアチームも、みんな同じです。だからボロボロになってもフィニッシュラインを目指して走るチームに感情移入もできるし、本気で応援できるわけです。
それぞれの“推しチーム”の旗を掲げたテントややぐらで、ひたすら酒ばっか飲んでるヤツらだって同じ気持ちのはず。今年もいろんな場所でビールをもらいつつお話ししたのだけど、誰もかれもめっちゃ暑苦しい……じゃないや、熱い思いを持って楽しんでいました。みんなタダの酔っぱらいだったけどね。とにかく、来年の優勝者にはぜひ、勝ったからには羽目を外して、24時間戦い抜いた喜びを爆発させてほしいものです。
そう、来年のニュルですよ。森の中で焼きそばつくってのジャパニーズスタイルのキャンプ取材は、今年もできなかったけど、来年こそは実行すべくクライアントさまと話を進めています。ただし、みんなもうオッサンだからテントはつらいしキャンピングカーがいいな、と日和(ひよ)った意見を交わしつつ帰路につきました。ボクらの2027年のニュルブルクリンク24時間レースは、すでに始まっているのです。
(文と写真=山本佳吾/編集=堀田剛資)

山本 佳吾
-
第875回:キモは氷上性能! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「ウインターマックス アイスプロ」を試す 2026.7.1 違いは氷の上で表れる! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「WINTER MAXX ICE-Pro(ウインターマックス アイスプロ)」に、冬の北海道で試乗。氷上性能を徹底的に追求したという新製品の、パフォーマンスの一端に触れた。
-
第874回:自動運転からワイパーまで! 自動車を支えるメガサプライヤー ボッシュのあくなき挑戦 2026.6.27 世界屈指のメガサプライヤー、ボッシュが開発中の新技術を披露! 市街地での高度な運転支援技術に、日本の方言にも対応した対話型AI、サーキット走行のノウハウを教えてくれるコーチング機能等々……興味深いその中身をリポートする。
-
第873回:ウエット路面に強み ミシュランの新タイヤ「パイロットスポーツ5エナジー」と「プライマシー5エナジー」を試す 2026.6.19 2026年1月29日に導入が発表されたミシュランの新製品「パイロットスポーツ5エナジー」と「プライマシー5エナジー」。これまでの特徴に加え、低燃費性能や耐摩耗性、ウエットグリップ性能のアップをうたう両モデルの走りを、クローズドコースで確かめた。
-
第872回:「フォレスター」がJNCAPで最高評価を獲得! “安全”に対するスバルの不断の取り組みに迫る 2026.6.6 相対速度100km/hの衝突後でも、普通にドアが開く!? 人気のSUV「スバル・フォレスター」が、日本の自動車アセスメントで最高評価を獲得した。安全なクルマづくりを第一とするスバルの取り組みを、群馬製作所で行われた衝突試験デモの様子とともにリポートする。
-
第870回:熱きホンダをとことん楽しむ これが「Honda All Type R World Meeting 2026」だ! 2026.5.15 「シビック タイプR」をはじめ、“タイプR”の車名を持つホンダの高性能車ばかりが集う、激アツのイベントが開催された。気になるその内容は? 会場となったモビリティリゾートもてぎの様子を詳しくリポートする。
-
NEW
ベンダ・ナポレオンボブ250(6MT)
2026.7.10JAIA輸入二輪車試乗会2026個性的なバイクがそろうJAIA輸入二輪車試乗会の会場でも、ひときわ強烈な存在感を放っていた「ベンダ・ナポレオンボブ250」。中国からやってきた250ccクラスのクルーザーには、他のこのセグメントのバイクにはない“こだわり”が存分に注ぎ込まれていた。 -
NEW
さらば青きe-BOXER! スバル・マイルドハイブリッドに贈る別れの言葉
2026.7.10デイリーコラムスバルのMHEVがついに販売終了に! 彼らが初めて手がけた電動化ユニットには、どんな特徴があり、どんな役割を果たしてきたのか? 派手な存在ではなかったけれど、13年にわたり頑張ってきたいぶし銀のパワートレインに、独自性を重んじるスバルの矜持を見た。 -
ホンダ・フィット
2026.7.9画像・写真本田技研工業は2026年7月9日、マイナーチェンジした「フィット」を発表した。2020年2月のデビューから6年。グレード体系の見直しや内外装のブラッシュアップなど多岐にわたる変更が行われた最新モデルを写真で詳しく紹介する。 -
第291回: あの衝撃的なラストシーンは2CVで撮影されていた!? 『ヌーヴェルヴァーグ』
2026.7.9読んでますカー、観てますカー1959年のパリで、ゴダールが『勝手にしやがれ』の撮影を開始。脚本もなく演出はその場で指示するという型破りのスタイルに、俳優もスタッフも困惑し現場は混乱を極める。はたして映画は無事に完成するのか……。 -
第969回:裏地に『大脱走』! ピッティ・イマージネ・ウオモと自動車模様
2026.7.9マッキナ あらモーダ!イタリアで開催された世界屈指の紳士モード見本市「ピッティ・イマージネ・ウオモ」を、現地在住の大矢アキオが取材。自動車にまつわるアパレルの最新トレンドを探り、新興ブランドのひたむきさと、老舗の刻んできた年輪に触れた。 -
第59回:待望の2代目「日産キックス」は「ヴェゼル」や「カローラ クロス」に勝てるのか!? 小沢コージが嗅ぎまわる
2026.7.9小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ日産が満を持して「キックス」の新型を発表した。新世代の「e-POWER」を搭載したほか、各部の質感もデザインも先代モデルから大幅に進化しているが、大事なのはライバル車に勝てるかどうかだ。小沢コージが開発リーダーを直撃した。





















