第833回:肉を焼き、波乱のレースに涙する! ニュルブルクリンク24時間レース観戦記
2025.06.24 エディターから一言 拡大 |
「世界一過酷な草レース」とも称される、ニュルブルクリンク24時間レース。予想外の戦いの行方に、応援するマシンのクラッシュ、どんなに蒸し暑くても肉を焼くギャラリー! カメラマンの山本佳吾が、例年以上に波乱万丈だった2025年のニュルをリポートする。
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波乱の連続だった2025年のニュル
スタートから一度も首位を明け渡すことなく24時間を走り切って、2位。フィニッシュを待つマンタイEMAのメカやドライバーたちは、なんとも悔しそうな表情でした……。
普段はラリーしか行かないボクが、なぜか1年に一度サーキットにやってくるイベント、ニュルブルクリンク24時間レース。2025年は波乱の連続でした。クラッシュは続出するし、いちばん驚いたのがスタートして1時間半くらいでピットビルやパドックが停電(!)してしまったこと。これで約2時間15分の赤旗中断です。メディアセンターは停電せずエアコンも効いていたので、にわかには信じがたい出来事でした。
蒸し暑い東京を逃げ出して快適なドイツにやってきたはずが、暑い。暑いというより熱いと書きたくなるほど。めずらしく雨も降らずいいお天気だったのはいいのだけど、連日の30℃超え。この時期は昼が長いので暗くなるのは夜9時過ぎ。しかも、いつものカラッとした暑さじゃなくて、ほんのり湿気も含んでいて、なんともつらい。
そんな過酷なお天気にもかかわらず、今年もドイツのみならず世界中から集結した愛すべきギャラリーたちは、飲んで肉焼いて歌って踊って大騒ぎ。このクソ暑いのに朝っぱらから火ぃ起こして肉焼くんですよ? ボクは流しそうめんあたりで涼を感じたいところですよ。
チームもギャラリーも全力投球
それにしても、今年はボクが通いだしてから、いちばんお客さんが多かったように感じました。公式発表は28万人。森の中に撮影に出かけてサーキットに戻ろうとすると、渋滞がひどくて大変なんです。地元のカメラマンが自前やレンタルのバイク、電動チャリなんかでさっそうと脇を駆け抜けていくのを悔しい思いで眺めていました。
ボクが一度やりたいことは、キャンプサイトにキャンピングカーで自前のメディアルームを設営し、焼きそばやそうめんをつくりながらたまに撮影に出かけるというスタイル。移動のアシには、最近意外な人気の90年代の原チャリを。チャンバーをパインパイン鳴らしながら、オールドスクールな雰囲気を醸し出せたらうれしい。それは仕事なのか? という疑問はあるけれど、ノルドシュライフェの森に身を投じると、もはや仕事とかどうでもよくなってきます(いや、あかんやろ。働けよ)。きっとギャラリーの皆さんも、年イチのお祭りに全力投球で騒ぎに来てると思うんですよね。ただ、あいつらほとんどレース見てないけど(笑)。
当然、全力投球しているのは参戦するチームも同じ。プライベーターからトップチームまでその規模はさまざまだけど、危険で気まぐれなニュルブルクリンクの森でのレースにかける気持ちは、みんな同じ。なので、冒頭に書いた常勝チーム、マンタイの「ポルシェ911 GT3R」が、他車との接触による100秒のペナルティーで一度も先頭を譲らずに敗北してしまうというドラマにみんな胸熱で、そしてそれ以上に、マンタイと24時間ひたすらバトルし続けて総合優勝したローヴェレーシングの「BMW M4 GT3」へ送られる惜しみない喝采に、ボクも胸熱だったわけです。
印象的だった敗者の表情
マンタイが優勝するための条件は、ローヴェを100秒以上引き離すこと。逆に言えば、ローヴェが優勝するには100秒以内のギャップでついていけばいいわけで、追うものと追われるものの心理戦のようなバトルには、見応えがありました。
フィニッシュのシーンは、いつもは首位のチームのピットで撮影するのですが、今回は迷いに迷ってマンタイのピットに張り付きました。きっとマジメなレースメディアの皆さんはレーヴェに張り付いているだろうから、ボクはフィニッシュ直前で敗色濃厚だったマンタイのピットの様子を撮影することに決めました。やり切った感でいっぱいの人や疲れ果てた表情の人。涙を浮かべる人など、悲喜こもごもないつもとはちょっと違う雰囲気。表彰式でも、笑顔を見せないドライバーたちの姿がとてもカッコよく見えました。
いつもお前は厳しいこと言い過ぎって言われるんだけど、「1位以外はみんな負け」と常々思っているので、レースに限らず野球でもなんでも、勝負に負けたくせにヘラヘラ笑ってるヤツを見ると「キミ、それでええんか? 根性あんのか?」と言いたくなるのですが、今回のマンタイのドライバーたちの表情から察するに、きっと来年はさらに強くなって帰ってくるなと感じました。マジでカッコよかった!
あの“ロガン兄さん”が!
ところで、ボクの過去のリポート(参照)を読み、なおかつ記憶力のいい読者の方なら「おい、あのクルマはどうした?」とお思いかもしれません。“マンタ先輩”の意志を継いでかは知らんけど、ニュルブルクリンクの新たな癒やしとして、すい星のごとく現れた「ダチア・ロガン」です。ボクは勝手に“ロガン兄さん”と呼んでいるのですが、結果からお伝えすると、夜間走行中に他車に突っ込まれ派手にクラッシュ。ボコボコになってレースを離脱しました。
今年もローリングスタートからすでに他車に大きく引き離され、忘れた頃に真打ち登場とばかりにグランドスタンド前に姿を見せ、ギャラリーからの地鳴りのような大歓声に見送られてスタートしていったのですが……。今回の取材の足はレンタカーの「ダチア・ダスター」だったので、かりそめのダチアユーザーとしても応援していましたが、残念な結果でした。
ラリーしか行かないボクの、年に一度のレース取材は、今年もいろんな人に出会えたし仲間も増えてとてもいい時間でした。ぶっちゃけレースのリザルトにはそこまで興味はなくて、そこに至る過程とか関わる人たちに興味があって、つい毎年来てしまいます。勝負に勝ってレースに負けたチーム、みんなに愛される激遅マシン、飲んで食べて歌って、ちょっとだけレースを見てるギャラリーたち。日本とはなにもかもが違う環境なので、ぜひ皆さんも、この熱狂と興奮と、お肉の焼ける香りを感じに来てください。
(文と写真=山本佳吾/編集=堀田剛資)

山本 佳吾
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