スズキ・ジムニーシエラJC(4WD/4AT)
急ぐ旅でもあるまいし 2026.07.03 試乗記 俺の「ノマド」まだかな? とソワソワしている人が多いかもしれないが、実は既存の「ジムニー/ジムニー シエラ」もひっそりと進化を果たしている。とりわけ大きいのはアダプティブクルーズコントロール(ACC)の搭載だ。シエラの4段AT車でその仕上がりを試した。5度目の小変更
正直、こんな日がくるとは想像もしていなかった。
……というくらい売れている。それはジムニーの話だ。2025年1月、ジムニーの新しいフェイズとなる5ドアの「ノマド」の日本販売が開始。インドという第2の供給チャンネルを設定したこととも相まって、2025年度の販売台数をみると実に対前年比ほぼ2倍、5万台超を登録している。
さらにここに軽モデルの数字がドンと乗っかるわけで、その総数は年間10万台に届かんとするほどだ。フルフレームシャシーのリサーキュレーティングボール式ステアリング、そしてリアリジッドサスと、そんなクラシックなオフローダーが新車で手に入ること自体が驚きなのに、数多のSUVを向こうに回してトップ級のセールスを堅持している。
そんなジムニーにマイナーチェンジが加わって5型となったのが2025年秋のことだ。もう4回もお直ししてるの? とお思いかもしれないが、オートライトや後退センサーの追加など法規対応的な項目ばかりで、意匠側が理由の内外装変更は無に等しい。常に客を待たせているクルマゆえデザイン変更のタイミングも難しいというのが本音だろうか。間もなく9年目というタイミングでの5型も、見てくれは何にも変わっていないようにみえる。
でも、よくよく目を凝らせばフロントグリルの「S」マークの下に四角い板のようなものが見える。実はこれが5型のマイナーチェンジのキモとなる先進運転支援システム(ADAS)の強化のために変わった箇所のひとつだ。実は5型のジムニーとジムニー シエラ、そして2026年1月に早速2型となったジムニー ノマドの三兄弟には、この四角いところにミリ波レーダーが搭載されている。これと単眼カメラの組み合わせで構成される「デュアルセンサーブレーキサポートII」の採用で、対車両では180km/h域まで、対歩行者では80km/h域までの衝突被害軽減ブレーキ作動や、交差点内での右直や出会い頭の衝突を抑止する停止動作も可能となった。
ジムニーらしからぬ運転支援装備
と、このミリ波レーダー搭載によって実現したのが全車速域対応ACCの実装だ。三兄弟のなかではノマド(の1型)のみが40km/h以上で作動するデュアルカメラベースのACCを採用していたが、このマイナーチェンジによって全ジムニーのAT仕様で全車速対応ACCが標準採用されることになった。
日本のインフラにぴったりの小さなオフローダーゆえ、オーナーは足を延ばす機会も多いだろう。それだけに、この採用を待ちに待ったという向きも少なからずいらっしゃるのではないだろうか。かくいう自分自身、JA11で洗礼を浴びて以来、ジムニーは常々購入検討の対象ゆえ、ACCの搭載は待ちに待ったりという感じである。ちなみに全車速追従ではないが、MT仕様も約30km/h以上で作動するACCは装備しているから、軽い渋滞混じりの遠乗りくらいなら疲労軽減に十分役立ってくれるだろう。
加えて、ADASまわりでもうひとつ機能強化されたのが車線維持機能だ。従来は逸脱警告のみだったが、5型ではアクティブな操舵支援が加わるようになった。これはステアリングギアボックスに古式ゆかしい方式を採用する一方で、パワーアシストは現代的なコラムマウントの電動式を用いていたから実現できた進化だが、一方でラック&ピニオンとは異なる応答性に対処すべく開発には時間も手数もかかっただろうことは想像できる。一方、これらのマイナーチェンジに昨今の原材料や輸送費といったイニシャルコストの上昇も織り込み、価格はシリーズ全体で16万円~の値上がりとなった。
乗り味にも進化の跡
取材車は進化したADASの全機能を搭載する4段ATのシエラだったが、走り始めてそれらを試す前にすぐ感じたのが、乗り味の変化だった。静粛性の向上に加えて、ロール側の動きが明らかに小さくなっていると感じたのは気のせいではないようで、遮音の施しやサスのコイルばねの品番も変わっているという情報が入ってくる。が、スズキから正式なアナウンスはなく、それらはいわゆる記載なき仕様変更の一環ということになりそうだ。製造期間の間には車外騒音などの要件も変わり、装着タイヤの特性も微妙に変化しているはずだから、それに合わせ込んだ調整も求められたのだろう。結果として上質さが高まったのはプラス要素といえる。
そして待望のACCである。車間は4段階に設定できるが、最短側の距離感は首都高のような殺伐としたトラフィックでも後続の営業車を苛つかせない程度にタイトだ。でも、前走車が一気に速度を上げるような状況ではさすがにアンダーパワーが露呈して追従するほどの瞬発力は望めない。同様に100km/h付近から上の速度域では、再加速時にどうしてもキックダウンが発生する。例えば120km/h制限の区間を額面どおりに設定して走っているときなどは、このキックダウンに伴うエンジンのうなりがどうしてもビジーさを感じさせてしまう。設定速度へと復帰する際の速度の乗せ方自体は性急さもなく常識的なので、これは単純にエンジンのアウトプットがポッキリカツカツであるがゆえの課題だろう。制御そのものが古くさいといった感じはなかった。
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マジックナンバーは95km/h
同様に満足できるレベルにあったのが新たに加わった車線維持のアクティブアシストだ。いわゆるピンボール的な動きは極力抑えられている一方、はみ出しギリギリで強く介入する仮免路上教習的な動作感でもなく、適切なタイミングで初動緩やかに合いの手を差し伸べてくれる。前述したリサーキュレーティングボールのギアボックスを介しつつ、こういう動きに収めるのはなかなか大変だったのではないだろうか。ACCともども、投入時期は遅くなったものの、その動作の質はいずれも満足できるところにあった。
シエラの100km/h巡航は3000rpmをちょっと超えるかという程度だが、動力的余剰は大きくない。同様のことはノマドや軽のジムニーにもいえることで、長距離を時間と燃費の両面で効率的に移動しようとすれば、やはり車間距離を最大にして95km/hくらいの速度設定でトラックと仲良くしながら左車線を淡々と走るのがお勧めだ。この域でのジムニーはまったりと柔らかい乗り味のなかに、車格離れしたしっかりとした手応えを味わわせてくれる。車内もまずまず静かだし、ビタ寄せのあおりミニバンとも無縁、そして燃費も10km/リッター台の半ば近くが狙えるだろう。急がばなんとやらで、タクトをそっちに合わせてみたら、その居心地のよさは意外とクセになるかもしれない。
(文=渡辺敏史/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝/車両協力=スズキ)
テスト車のデータ
スズキ・ジムニー シエラJC
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3550×1645×1730mm
ホイールベース:2250mm
車重:1100kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:4段AT
最高出力:101PS(74kW)/6000rpm
最大トルク:130N・m(13.3kgf・m)/4000rpm
タイヤ:(前)195/80R15 96S/(後)195/80R15 96S(ダンロップ・グラントレックH/T)
燃費:14.2km/リッター(WLTCモード)
価格:218万3500円/テスト車=238万9310円
オプション装備:ボディーカラー<ジャングルグリーン>(0円)/バックアイカメラ付きディスプレイオーディオ・スズキコネクト装着車(12万8700円) ※以下、販売店オプション フロアマット<ジュータン>(2万2770円)/ドライブレコーダー(3万8940円)/ETC車載器<ビルトインタイプ>(1万5400円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:2152km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:242.3km
使用燃料:19.8リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:12.2km/リッター(満タン法)/12.2km/リッター(車載燃費計計測値)

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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