「カスタム」はオラオラ路線へ!? 新しい「ホンダN-BOX」のフロントデザインを考察する
2026.08.26 デイリーコラム所有する誇りをアップ
「オラオラ顔はアリなのか? それともナシなのか?」
オラオラ顔とは一般的にメッキを組み合わせてギラギラさせた大型グリルのこと。そしてミニバンやスーパーハイトの軽自動車といった「箱型ボディー」のモデルにオラオラ顔の採用比率が高いことは、読者諸兄ならよくご存じだろう。
そんななか「ホンダN-BOXカスタム」は先日のマイナーチェンジでグリルが大きくなり、メッキの面積も増え、オラオラ顔に変貌。いやもしかすると従来モデルも“控えめなオラオラ顔”であり、最新型は“大胆なオラオラ顔”になっただけかもしれないけれど、いずれにせよ派手で押し出しの強い顔になったのは間違いない。N-BOXカスタムといえばフルモデルチェンジ前の先代も割と控えめな顔つきで上品な仕上がりだっただけに、最新型の変貌ぶりに困惑しているのはきっと筆者だけではないはず。……というのはいささか言い過ぎだけど、その変化の理由が気になるところ。
ところで、振り返ってみるとマイナーチェンジで顔が派手になったスーパーハイトワゴンはN-BOXカスタムだけではない。ライバル(というかこのクラスを生み出した先駆者)の「ダイハツ・タント カスタム」は2022年10月のマイナーチェンジで、ドーン! とグリルが大きくなり、オラオラ度は従来に比べて300%では足りないくらいまでアップ。2019年7月のフルモデルチェンジ時は顔つきについて「迫力よりは上級感を求める方向にお客さまのニーズが変化しています」と説明していたけれど、実はそうでもなかったということ……なのか。ニーズをくみ取るのはなかなか難しいものだ。
新しいN-BOXカスタムのフロントデザインに関してホンダはプレスリリースで「お客さまが所有する誇りを感じられる、迫力と力強さを表現したデザインとしました」と説明する。となると従来モデルのデザインは“所有する誇り”が感じられなかったということ……なのだろうか?
どうやら、お客さまから「もっと力強い顔つきがいい」という声が寄せられたのが背景にあるようだ。筆者は前の顔つきのほうが上品でいいと思うけれど、一般的に筆者のような自動車ライターがいいと思うデザインはなぜか消費者から評価を受けにくいので、最新のデザインは消費者から好評を得るに違いない。おそらく。
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美しい見た目よりも売れる見た目
ところで筆者はかつて、本職のカーデザイナーに「どうしてミニバンやスーパーハイトワゴンはオラオラ顔が好まれるのか?」という疑問をぶつけたことがあった。そのときに返ってきた答えは「それらは車体が箱なので、顔で主張しないと弱い存在に見えてしまう。風景に溶け込みすぎてしまう。顔を派手にすることで、存在を周りにアピールできる。それでバランスをとっている」というもの。なるほど。さすがデザイナーさんの分析は説得力があるなあ。
ところで、グリルが大きくなって顔つきがどんどん派手になっているのは、実は国産車だけの現象というわけでもなかったりして。例えばちょっと前のBMWは「4シリーズ」や「7シリーズ」などでグリルが巨大化して物議を醸した。アンチ側の意見が激しかったことを記憶している読者も多いことだろう。
しかし、あの巨大なキドニーグリルのクルマたちは販売面では好成績を収め、結果的にBMWの判断が間違っていないことを証明したのだから面白い。
また、アメリカのピックアップトラックも顔つきがどんどん派手になっている。ピックアップトラックは力強さの象徴であり、顔で主張したほうが強そうに見えるから。そして何より、消費者が喜ぶからだ。そういう意味では、オラオラ顔の軽スーパーハイトやミニバンも、BMWやアメリカのピックアップトラックと同じなのである。
クルマは会社を儲けさせるための商品であり、webCGを読むようなクルマ好きからすれば異論もあるだろうが、極論を言ってしまえば“売れたクルマがいい商品”にほかならない。そう考えると「美しい見た目よりも売れる見た目」となるのはやむを得ないところもある。新しいN-BOXカスタムが従来モデルよりも売れれば……の話だが。
(文=工藤貴宏/写真=本田技研工業、ダイハツ工業、BMW/編集=藤沢 勝)

工藤 貴宏
物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。
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