復活の決め手はこっくりさん!? 新生「三菱パジェロ」誕生の経緯とその狙い
2026.09.02 デイリーコラム社員の情熱がもたらした旗艦の復活
5代目となる新型「三菱パジェロ」の、商品説明会でのことである。三菱自動車でデザイン本部長を務める渡辺誠二執行役員は、当初から携わってきた同車のプロジェクトの変遷を、ユーモラスにこう表した。「こっくりさん現象」。
なんのこっちゃと申しますと、実はこのクルマ、当初は新型パジェロとなる予定ではなかったそうな。まずは恒例の、ピックアップトラック「トライトン」をベースとしたSUVの計画があって、それが進んでいくうちに「三菱の象徴となるような、本物のオフローダーをつくりたい」「これを新型パジェロにできないか」という機運がほうぼうから立ちのぼってきたという。誰かが上から指示するのではなく、皆の潜在的な思いが10円玉を動かしたのだ。
ここで重要なのは、渡辺氏が降霊術としてのこっくりさんをまったく信じていないこと……ではなく(笑)、それぐらい「パジェロ」というのが、三菱の中で大きな名前だったということだ。
世界で累計329万台が販売された、三菱のフラッグシップが終売となって5年。経営環境の悪化と、クロスカントリー車に吹く逆風からの苦渋の決断だったというが、そこからの今日に至る足跡を思うと、他人事ながらいささか感慨深い。新興国市場の隆盛や、「アウトランダー」「トライトン」「パジェロ スポーツ」「デリカD:5」といった、高付加価値商品群の奮闘による業績の回復。そこに世界的なクロカン需要の高まりが重なり、ようやくパジェロという、三菱の象徴が復活する機運が醸成されたのだ。せん越ながら、「よくぞここまで……」と勝手に拍手を送りたくなる。
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優秀なトライトンのコンポーネントを大改造
そんな新型パジェロだが、同車のあらましをおさらいすると(詳述はこちらのニュースをどうぞ)古式ゆかしきボディー・オン・フレームの本格クロスカントリーモデルである。こう書くと「ええっ。先代はモノコック(ビルトインラダーフレーム)だったのに、退化してない?」とか思われそうだがご安心を。その骨格は、洗練された乗り味で佐野弘宗氏&高平高輝氏&渡辺敏史氏を驚嘆させた、現行トライトンの改良版だ。
なんて書くと、今度は口さがない向きから「シャシー共用のお手軽モデルか」とか言われそうだが(笑)、無論そんなことはない。先述の「こっくりさん現象」でこれがパジェロになると決まるや、開発の構想は大がかりに変更。ラダーフレームはホイールベースを切り詰めるだけでなく、補強と構造変更で剛性を大幅に高め、リアには新開発の5リンクリジッドアクスルを入れるなど、車体から設計をし直すこととなったのだ(まぁトライトンのリアサスは板バネだし、どちらにしろ後ろ足はつくり変えざるを得なかったでしょうが)。
その走りは「悪路快適性」、すなわち単に悪路を走れるというだけではなく、厳しい環境下でも快適に移動できることを指標としてつくり込んだのだとか。こうしたあたり、実車に触れるのがホントに楽しみである。
また、ベース車からの徹底したつくり分けは上屋にも表れている。Aピラーを立てて乗員の着座位置を上げ……というのはニュースでも触れたとおりだが、そもそも世のPPV(Pick-up Passenger Vehicle=ピックアップトラックをベースにつくられたSUV)では、上屋の前側もベース車と共有するのが普通なのだ。しかし新型パジェロでは、ここのつくりも新設計。ボディーは完全に同車専用のものとなり、したがってそのスタイルも、トライトンとは別物となっている。
撮影会で実車を見ての印象だが、典型的な2ボックスのフォルムはいかにも上級クロカンといった趣で、ボンネットや前後フェンダーの隆起も勇ましい。過去のパジェロからの連続性を感じるか……は人によって見解が分かれそうだが、現行世代の三菱の旗艦として、申し分のない威風堂々っぷりである。
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過去は追わず、ただ新しいだけでもなく
一方で、ちょっと興味深いのがそのディテール。三菱いわく「各所に往年のパジェロのモチーフを取り入れている」というのだが、T字型のヘッドランプや、台形の意匠が取り入れられた背面タイヤを背負わないリアまわりなど、そのイメージは存外に未来的だ。「ジムニー」に「ランクル“FJ”」に「ディフェンダー」と、昨今はクロカンの世界でもネオクラシックがはやりだが、デザイナーの吉峰典彦氏いわく、「幾何学的なクロカンの様式美を一歩前に進めたかった」とのこと。思えば往年のパジェロも、クロスカントリー車のなかでは保守より革新寄りのクルマだった(参照)。
ちなみに気になる3アングルは、アプローチアングルのみ従来型よりいささか減じているものの、同クラスの本格クロカン「トヨタ・ランドクルーザー“250”」とほぼ同等。ヘッドランプがT字のポジションランプ/ターンインジケーターの内側に備わっているのも、岩や木にヒットしにくいようにという配慮の結果だそうだ。さすがはパジェロ。洗練されても本分は忘れていない。
カラーバリエーションはグローバルで全8種類。ブラックルーフの設定はあるものの、往年の「エクシード/スーパーエクシード」を思わせるツートンカラーの設定はなさそうで、この辺にも、安易な懐古主義をよしとしないデザイナーの姿勢が感じられる。
インテリアも外観に負けず劣らず先進的で、インストゥルメントパネルには2枚の巨大モニターをデーンと配置。運転席から見るこのあたりの景色は、いかにも令和の最新モデルといった趣だ。スワイプ操作に対する反応も、サクサクとは言わずともじれったいところはなく、なかなかに賢い半導体を仕込んでいる様子。また多機能なのはもちろんのこと、オープニングムービーに、ドライブモードごとに用意される特殊映像、時間によって変化する全16種類のバックグラウンド映像など、ワイドなスクリーンを存分に生かした演出もダイナミックだ。
一方で、水平基調&凹面形状のダッシュボードや、横型のグリップハンドルを思わせる装飾などは、往年のパジェロをモチーフにしたもの。クルマの進路や車体の斜度、駆動制御の作動状態、走行地点の高度などを表示するセンターディスプレイの「マルチメーター」は、往年の3連メーターを範としたデザインで、古参のファンを泣かせにくる。
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気になるそのお値段は……
こうした内外装の仕立てに対して、メカはかなり堅実である。4輪の駆動力・制動力を自在に制御する「S-AWC」の搭載というトピックはあるが、例えば足まわりに可変サスペンションの設定はなし。パワートレインは世界共通で2.4リッターディーゼルターボ+8段ATとのことで、三菱お得意のプラグインハイブリッドも、今のところ搭載は想定していないという。このあたりは、目新しさより実利としての悪路走破性、耐久性、信頼性を重視している印象だ。思えばその仕向け地も、タイや日本、オーストラリア、東南アジア、中南米、中東……と、日本を除くとその辺の性能が命綱になりそうなマーケットが名を連ねている。
まぁ、三菱の関係者いわく「反響によっては北米や欧州にも入れるかも」という話だし、ゆくゆくは新型パジェロにもハイブリッドが搭載される……なんて報道もチラホラしているが、ともあれデビュー当初の仕様は上述のごとし。その質実剛健なメカを思うと、新世代の旗手とはいえ、バカでかいバッテリーと2モーターの4WDを積んだ「アウトランダーPHEV」(536万9100円~681万円)より、極端にお高いクルマとはならないのではないか? よそ様を見ても、ランクル“250”のお値段は2.7リッターガソリンエンジンの「VX」で577万9400円。「ランドクルーザー“300”」は525万2500円から813万6700円だが、あっちは3リッターオーバーのV6エンジンだしなぁ……。
そんなわけで、新型パジェロの価格帯は、トライトンより50万円高の600万円台前半からになるんじゃないかな……とひそかに予想している次第。撮影車両の内外装を見ると「もっと高いかも」という気もするけど、あれとは別に、もう少し装備の簡便なグレードも日本で設定されることに期待したい。当たるも八卦、当たらぬも八卦だが、読者諸氏もぜひ、価格を予想して悶々とした日々をお送りください。日本での正式発表は2026年10月末の予定です。
(文=webCG堀田/写真=三菱自動車、webCG/編集=堀田剛資)
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堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
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