BYDラッコ300プレミアム(FWD)

恐るべき伸びしろ 2026.09.16 試乗記 鈴木 真人 中国BYDの軽スーパーハイトワゴン「ラッコ」がいよいよ日本の道を走り始めた。価格の安さや装備の充実度はすでに報じられているとおりだが、やはり自動車の仕上がりは実際に動かしてみなければ分からない。高速道路やワインディングロードでの印象をリポートする。
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売れ筋なのに手をつけなかった

1泊2日でラッコに乗った。高速道路を巡航し、ワインディングロードを駆け上り、市街地の路地を抜けて狭いパーキングに駐車した。ラッコは軽スーパーハイトワゴンなので、生活のためのクルマということになる。実用性、利便性、快適性が重要な要素だ。日本で売れ筋のジャンルだから、強力なライバルがひしめいている。具体的には「ホンダN-BOX」「ダイハツ・タント」「スズキ・スペーシア」「日産ルークス」などが思い浮かぶ。はたして対抗するだけの実力を有しているのかを検証した。

「黒船襲来」などと騒がれているのは、軽自動車が日本独自の規格で、これまで日本の自動車メーカーの独占市場だったからだ。海外メーカーの参入はBYDが初めてである。小さなクルマをつくる技術は日本のお家芸で、長年かけてノウハウが積み上げられてきた。コンパクトなサイズにパワーユニットを詰め込み、広い居住空間と快適性を提供する。売れているからウチもつくってみよう、などという甘い考えでは手痛いしっぺ返しを食うことになるはずだ。そこに正面から切り込んできたのだから、BYDは本気である。

BYDはもともと電池メーカーで、世界トップクラスのシェアを誇る。ラッコは自社製造のバッテリーを搭載する電気自動車(BEV)だ。「日産サクラ」や「ホンダN-ONE e:」などの軽BEVがこれまでに販売されているが、いずれもハイトワゴンだった。両側スライドドアを持つスーパーハイトワゴンのBEVはラッコが世界初となる。スーパーハイトワゴンは一番の売れ筋ジャンルなのに、なぜ日本メーカーは手を付けなかったのか。

2022年にサクラが発売された際、商品開発担当者に疑問をぶつけたことがある。スーパーハイトワゴン版は登場するのかと聞くと、「将来的にはもちろん考えていければいいが、スライドドアだと重くなって航続距離に影響してしまうのでまずはオーソドックスなヒンジのクルマで」という回答が返ってきた。2025年にN-ONE e:のエンジニアに同じ質問を投げかけると、「走行抵抗が大きく違うので一充電走行距離295kmは難しい。次はどうするかというのは社内で検討している」との答えだった。考えてはいたのだ。しかし、BYDに先を越されたのが現実である。

2026年7月28日に発売された「BYDラッコ」。わざわざ日本専用に開発したという軽スーパーハイトワゴンタイプのBEVだ。
2026年7月28日に発売された「BYDラッコ」。わざわざ日本専用に開発したという軽スーパーハイトワゴンタイプのBEVだ。拡大
今回の試乗車は最上級グレードの「300プレミアム」で車両本体価格は249万5000円。いわゆるフル装備のためオプションの設定はない。
今回の試乗車は最上級グレードの「300プレミアム」で車両本体価格は249万5000円。いわゆるフル装備のためオプションの設定はない。拡大
フロントマスクは左右のU字型ヘッドランプがつながった独特のスタイル。一応「シール」「シーライオン6」などと同じBYDの海洋シリーズに計上されてはいるが、正直あまり似ていない。
フロントマスクは左右のU字型ヘッドランプがつながった独特のスタイル。一応「シール」「シーライオン6」などと同じBYDの海洋シリーズに計上されてはいるが、正直あまり似ていない。拡大
15インチホイールは矢羽根のようなスポークが特徴だ。同じ中国のタイヤメーカーであるサイルンタイヤ(SAIRUN TIRE)の「ツーリズモコンフォートCS21」という銘柄がチョイスされている。
15インチホイールは矢羽根のようなスポークが特徴だ。同じ中国のタイヤメーカーであるサイルンタイヤ(SAIRUN TIRE)の「ツーリズモコンフォートCS21」という銘柄がチョイスされている。拡大