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いま軽自動車を選ぶなら、エンジン車とEVのどちらが得か? リアルな数値でコスパを比較・検証する

2026.11.02 デイリーコラム 玉川 ニコ
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計算すると差はいくら?

「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が口火を切った軽EV市場に、「ホンダN-ONE e:」や「スズキeスカイ」なども参入。日常の足として確固たる地位を築いているガソリンエンジンの軽自動車に対し、静粛性と加速フィールに優れた軽EVの選択肢が増えた今、「結局、財布に優しいのはどっちなのよ?」と迷っている人も多いことだろう。

「環境に優しい」「新時代の乗り味」といった類いの議論はいったん脇に置き、ホンダのN-ONE e:と「N-ONE」を例に、リアルな損得勘定をすることにしたい。

まずは購入時の初期投資額から。装備の水準が近い比較的ベーシックなグレード同士を、定価ベースで比較してみよう。N-ONEの「e:G」グレードではオプション扱いの「急速充電ポート」は、使用を前提として“込み”にする。
・N-ONE(オリジナル・FF):車両本体価格176万7700円
・N-ONE e:(e:G・FF):車両本体価格269万9400円+急速充電ポート(11万円)=280万9400円

車両価格の開きは104万1700円。だがN-ONE e:には国のCEV補助金58万円(令和7年度補正予算の場合。4年間の保有義務あり)が交付される。地方自治体のさらなる補助金については有無を含む地域差があるのでこの段階では省くが、CEV補助金だけでも車両本体の差額は一気に縮まる。軽EVは購入翌年度の軽自動車税(1万0800円)が75%軽減されることも加味すると、45万円ほどの差になる。

ここに戸建ての普通充電設備を10万円前後の費用で新設すると仮定した場合、補助金の上限5万円を(令和8年度は9月で受け付け終了だが仮説として)反映して“乗り出しコスト”の差は+5万円の50万円ほど。「EVは高い」というイメージに変わりはないが、スタートラインではなんとか差が半分に縮まった。

ホンダが2025年9月12日に発売した軽規格のEV「N-ONE e:」。今回は、軽EVと従来型軽乗用車のコスパを考える例として、同社の内燃機関車「N-ONE」と比較した。
ホンダが2025年9月12日に発売した軽規格のEV「N-ONE e:」。今回は、軽EVと従来型軽乗用車のコスパを考える例として、同社の内燃機関車「N-ONE」と比較した。拡大
「N-ONE e:」の充電口は、車体前方のヘッドランプの間にレイアウトされている。写真右の急速充電用ポートは、今回例として挙げた「e:G」グレードではオプション扱いとなる。
「N-ONE e:」の充電口は、車体前方のヘッドランプの間にレイアウトされている。写真右の急速充電用ポートは、今回例として挙げた「e:G」グレードではオプション扱いとなる。拡大
「ホンダN-ONE」の現行モデルは、2020年にフルモデルチェンジした第2世代。価格帯は、「オリジナル」(FF車)の176万7700円から「プレミアムツアラー」(4WD車)の231万8800円まで(写真は「N-ONEオリジナル」をベースにドレスアップした特別仕様車「クラフトスタイル」)。
「ホンダN-ONE」の現行モデルは、2020年にフルモデルチェンジした第2世代。価格帯は、「オリジナル」(FF車)の176万7700円から「プレミアムツアラー」(4WD車)の231万8800円まで(写真は「N-ONEオリジナル」をベースにドレスアップした特別仕様車「クラフトスタイル」)。拡大
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“トントンになる”のに6年以上!?

この約50万円は何年で回収できるのか? 通勤や買い物でしっかり走る「年間1万5000km走行」、かつ「充電の4分の1(25%)程度を出先の急速充電でまかなう」というややヘビーな条件で、年間のコストをシミュレーションしてみよう。

【前提条件】

  • N-ONE 実燃費18.0km/リッター、レギュラーガソリン175円/リッターで試算
  • N-ONE e: 実電費8.0km/kWh(年間所要電力量約1875kWh)で試算

〇自宅普通充電(75%・約1400kWh):夜間の電気料金31円/kWh =約4万3400円
〇出先急速充電(25%・約475kWh):Honda Chargeの50kW急速充電プラン(入会金・基本料0円+都度利用料55円/分で9.5時間分=3万1350円)

(※N-ONEは「オリジナル」グレードでN-ONE e:は「e:G」グレード)

【年間維持費の比較内訳】

(1)燃料代・充電代

  • N-ONE 約14万6000円(ガソリン約833リッター消費)
  • N-ONE e: 約7万5000円(自宅4万3400円+急速約3万1350円)

(2)メンテナンス費(エンジン潤滑系以外のメンテについては差異なしという仮定で)

  • N-ONE 約7000円(年1回のエンジンオイル&フィルター交換代)
  • N-ONE e: 0円

(3)重量税(軽自動車税の減免は冒頭で加味。ここでは重量税のみ対象に)

  • N-ONE 2475円(3300円/年を25%軽減<エコカー減税>で試算)
  • N-ONE e: 0円(免税)

年間総維持費(上記3項目合計)⇒軽EVのほうが年間8万円安くなる

  • N-ONE 約15万5000円
  • N-ONE e: 約7万5000円

年間1万5000kmという多めな走行距離であっても、1年間で浮く金額は8万円程度にとどまる。初期投資の差額約50万円を回収するには、6年以上かかる計算だ。

「N-ONE」はエコカー減税の対象となっており、重量税(新車登録時は3年分で9900円)が25%減免される。
「N-ONE」はエコカー減税の対象となっており、重量税(新車登録時は3年分で9900円)が25%減免される。拡大
「ホンダN-ONE e:G」は最高出力64PS、最大トルク162N・mを発生。電気自動車ならではの豊かなトルクが体感できる。駆動用バッテリーの容量は29.6kWhで、WLTCモードの一充電走行距離は295kmと公表されている。
「ホンダN-ONE e:G」は最高出力64PS、最大トルク162N・mを発生。電気自動車ならではの豊かなトルクが体感できる。駆動用バッテリーの容量は29.6kWhで、WLTCモードの一充電走行距離は295kmと公表されている。拡大
「N-ONE e:G」のインテリア。ソファのような質感のシート表皮とブラウンのシートベルトが組み合わされており、モダンなリビングのような印象。グレードを問わずシートヒーターが標準で備わる。
「N-ONE e:G」のインテリア。ソファのような質感のシート表皮とブラウンのシートベルトが組み合わされており、モダンなリビングのような印象。グレードを問わずシートヒーターが標準で備わる。拡大
「N-ONEオリジナル」に採用されている、自然吸気の0.66リッター直3エンジンは最高出力58PS、最大トルク65N・mを発生する。WLTCモードの燃費は同グレードの場合で23.2km/リッターだが、今回は実燃費を18.0km/リッターと仮定してランニングコストを試算した。
「N-ONEオリジナル」に採用されている、自然吸気の0.66リッター直3エンジンは最高出力58PS、最大トルク65N・mを発生する。WLTCモードの燃費は同グレードの場合で23.2km/リッターだが、今回は実燃費を18.0km/リッターと仮定してランニングコストを試算した。拡大

決め手は「充電環境」と「走行距離」

今回の例で、両者のランニングコストがなかなか縮まらない理由は明白で、出先で利用する急速充電のコストがEVの電気代のメリットを食いつぶしてしまうからだ。Honda Charge以外の急速充電プランも考えられるが、例えば、都度利用料がHonda Chargeの半額(27.5円/分)であるe-Mobility Powerでは基本料金月額4180円がかかる(急速充電分だけでトータル6万5805円/年の試算になる)など、コストの抑制は難しい。

しかし、もしも自宅充電100%で運用できれば年間電気代は5万8000円ほどで済み、初期費用の差額は5年程度で回収できてしまうことになる。出先での急速充電をカーライフに組み込んだ瞬間、“回収スピード”に急ブレーキがかかるのだ。

以上の数字から導き出される結論は、極めて明快である。

出先での急速充電に依存せざるを得ないライフスタイルの人、あるいは逆に月額充電プランに加入する必要があるほどの距離は走らない「近場オンリー」な人の場合は、何かと完成されたガソリン版のN-ONEに乗り、普通にガソリンスタンドを利用するほうがコスパはいい。

その一方で、自宅に充電設備があり、充電のほとんどを夜間自宅充電で完結できる環境にある人で、なおかつ日常的に走る距離が長い(年1万km以上)のなら、「5年も使えば軽EVのほうが割安」となる可能性が高い。

初期の差額がこれくらいにおさまる今の時代、EV特有の「軽自動車の枠を超えた静粛性と豊かなトルク」「ガソリンスタンドに寄る手間の解消」といった付加価値は、もはや「ぜいたく」ではなく「手の届く実用メリット」といっていい。

自宅に200Vコンセントを引ける環境があり、そこそこの年間走行距離を見込んでいるのであれば、2026年秋の今、軽EVは大いにおすすめの選択肢となる。いうまでもなく、最大90万円もの“追加補助”が見込める東京都にでも住んでいるならなおさらだ。だが、そうではない環境下にいる人にとっては、依然として「枯れた技術を用いたガソリン軽」に分がある――ということになるだろう。

(文=玉川ニコ/写真=本田技研工業、山本佳吾、郡大二郎、webCG/編集=関 顕也)

軽EVのトータルコストをどう抑えるかは、多額の補助金のほか、どれだけ家庭の普通充電でやっていけるかによるといえそうだ。写真は、「N-ONE e:」の発売日に合わせてホンダがスタートした充電ネットワークサービス「Honda Charge」の急速充電器。
軽EVのトータルコストをどう抑えるかは、多額の補助金のほか、どれだけ家庭の普通充電でやっていけるかによるといえそうだ。写真は、「N-ONE e:」の発売日に合わせてホンダがスタートした充電ネットワークサービス「Honda Charge」の急速充電器。拡大
玉川 ニコ

玉川 ニコ

自動車ライター。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、自動車出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。愛車は「スバル・レヴォーグSTI Sport R EX Black Interior Selection」。

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