第400回:突然ですが「シティ カブリオレ」サイコーっっ!!
コージ流プチクラシックカーのススメ(その1)
2010.01.19
小沢コージの勢いまかせ!
第400回:突然ですが「シティ カブリオレ」サイコーっっ!! コージ流プチクラシックカーのススメ(その1)
シティは日本のビートルだ!?
突然ですけど、先日「ホンダ・シティ カブリオレ」買いました!
乗り出して以来「なんで?」って良く聞かれるけど、特に理由はなく、単に「いま買ったら面白いかなぁ〜」って思った程度。完璧ヒラメキよ。
ただ、買ってビックリしたのはホントに楽しいことで、これは全く予想外。元々旧車マニアでもないし、最近健康状態がすぐれず、昔を懐かしんで!? なーんてことも全くなく、正直、飽きたらすぐ売るか〜とか考えてたんだけど、マジで楽しい。仕事で他のクルマに乗らなくちゃいけない場合以外は、好んで乗ってます。
良さはいろいろあるけど、まずは“タイムマシン効果”よね。シティが生まれたのは、今から遡ること約30年前の1981年で、要は俺の超青春時代なわけ。当時、衝撃的だった英国バンド、マッドネスの「ホンダホンダホンダ……」ってテレビCMもよかったけど、なによりその画期的トールボーイコンセプトには感動したな。今や軽はもちろんコンパクトカーでもトールスタイルは当たり前だけど、当時は他になく、その実用性とスタイリングを見事両立させたコンセプトは革命的だった。
マジな話、俺は“シティは日本のVWビートルになる”って勝手に思い込んでたもんね(笑)。残念ながら、モデル末期は急速に売れなくなり、2代目は普通のコンパクトになっちゃったけど、今でもこのトールボーイコンセプトは素晴らしかったと思ってる。
スタイルや実用性能はもちろん、漠然と“ニューライフ”があり、楽しげな生活が待ってるような気がした。その昔、スーパーカブが出た頃にアメリカで、“NICEST PEOPLE ON A HONDA”ってコピーが流行ったけど、ホント“ナイス”って感じ。
それはまさに今のホンダ車が忘れたものであり、おそらく乗り心地やハンドリング、いろんな面で技術が追いつかなかっただけなのよ。つまり、出るのが早すぎたという……。その正しさは、今のコンパクトカーのスタイルが証明してると思う。
事実、今改めて見ると、とにかく全長が短くて、現代でもあり得ない他にはない可愛らしさだ。それこそ同じシティの「ターボII」がブルドッグと呼ばれていたように、超キュート。ある種のキテレツ感が見事にユニークさに繋がっててまさに“実寸大チョロQ”。当時のホンダ・デザインはつくづく優れていたと思う。
今でもおしゃれ
実用性も素晴らしくて、当たり前だけど小さくて便利。俺は事務所も自宅も駐車場が狭いんで、軽並みの全長3380mmはホント助かる。普段大きいクルマに乗る機会が多いから、よけいにそう感じる。まるで肩車から人を降ろした直後のように気楽で、そのぶん、衝突安全性は??? だけど、車高が高いから乗り降りもしやすいし、回転半径も小さい。4輪版原付乗ってるようなキブンかな?
さらに驚くべきは“ポップ性能”よね。当時からシティ カブリオレは、数あるオープンモデルのなかでも独特のカジュアルさが貴重だったけど、今乗ってもそれは変わらない。ボディが真っ赤で可愛いってのもあるけど、当時から12色もあったし、フェラーリで有名なピニンファリーナのエンブレムも妙にオシャレだった。
そのアイコン力は今も高いようで、先日も銀座あたりで夜中に乗ってて、隣に並んだタクシー内の妙齢オヤジ4人に笑いながらサムアップされた。きっと楽しげに見えたんでしょう。
それから大人4人が一応乗れるんだけど、前後シート間の距離が短く、楽しく会話できるのもマル。今は安全基準の厳しさから、どんどん乗員の距離が離れていく傾向があって、そういう意味でも貴重よね。
意外なのは走りの良さ。もちろん最新型「VWゴルフ」みたいに、キレ味があるとか、パワフルとかそういう感じはないんだけど、妙に生々しいのよ。まさに土のついた野菜をそのまま食べるような感じで、エンジン音からアクセルの操作感からブレーキのタッチまですべてがダイレクト。
ダイレクト感が大事
特に良いのはステアリング。今や貴重なノーアシストの“重ステ”で、停車時の据え切りなんかかなりたいへんだけど、それ自体楽しんでる部分もある(笑)。今の最新FF車のように切れば切るほど吸い込まれるように曲がる! なーんてことはなく、切るとタイヤが抵抗になって重くのっそり曲がるイメージだけど、それが妙に楽しい。忘れかけたナチュラルテイスト、あえて言えばハダシで土の上を歩くような感触でしょうか。
エンジンにしてもたった67psの1.2リッター直4SOHCでとにかく遅く、トランスミッションも知る人ぞ知る3段スターレンジ付きのホンダ式ATで事実上ギアチェンジなし(笑)。ブレーキも驚異的に効かない。
でもね。それが楽しい。それがノスタルジーなのか、ホントの快楽なのかはよく分からないけど、クルマの走りの根源はいろんな意味での“ダイレクト感”。それに尽きると思ったな。
タイヤの感触、ゴムの感触、鉄の感触、ギアの感触、通り過ぎる風の感触、缶を叩くようなエンジン音に、オイルの焼ける匂い、それから重ステで感じる己の体調の善し悪し(笑)。
間違いなく今のクルマのほうが良くて、ラクなんだけど、トータルでは昔のほうが良くできてるというか、良くできていたりする。
まさに料理のジビエと同じで、昔のクルマの方が野性味を上手に残している。今のは逆に手を加え過ぎておいしさが落ち過ぎちゃってる……そんな感じかな。
だからこの80年代の“プチクラシックカー”。ほどよく野性的かつ便利でいいのよ。なによりも安くて、このデフレ時代に好都合(笑)。これ以上古いと、ATさえなくて毎日は使いづらかったり、明らかに現代的じゃなかったりするから、これぐらいがちょうどいい。
ってなわけで“コージ流プチクラ”。今後も気が向いたら報告するんで、ひとつよろしく!
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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