メルセデス・ベンツE250 CGI ブルーエフィシェンシー クーペ(FR/5AT)【試乗記】
カッコよさの新しいかたち 2009.12.25 試乗記 メルセデス・ベンツE250 CGI ブルーエフィシェンシー クーペ(FR/5AT)……753.5万円
「ブルーエフィシェンシー」を冠する、Eクラス クーペに新たに加わった環境対応グレードは、いままでのクーペとはどこか違っていた……。
1.8リッター直4で、2.5リッターV6の性能
古い映画や昔のテレビドラマの再放送を観ながら「時代が変わったなぁ」と思うことのひとつに、タバコの扱いがある。ハリウッドの映画産業とタバコ業界には密接な関係があったという説もあるけれど、昔はジョン・ウェインもゲイリー・クーパーも、カッコいい主人公はスクリーンでタバコをすぱすぱ吸っていた。前に『ふぞろいの林檎たち』の再放送を観ていたら、時任三郎も食事をしている手塚理美の顔の前でぷかぷか。あのシーン、1980年代前半では男らしかったのかもしれないけれど、今なら確実にNGだ。カッコよくない。
「メルセデス・ベンツE250 CGI ブルーエフィシェンシー クーペ」に乗りながら、クーペのカッコよさも変わりつつあるとしみじみ思う。そもそもクーペは実用性を犠牲にしてカッコよさを追求した車型で、セダンやワゴンに比べるとチャラチャラした軟派。ボディの美しさとともに、ゴージャスなインテリアや余裕たっぷりのエンジンを積むといった、無駄で贅沢なところがウリだった。ところが、なだらかなルーフラインの流れなどデザインへのこだわりこそ感じさせるものの、「E250 CGI ブルーエフィシェンシー クーペ」には、無駄で贅沢だという印象は薄い。
そう思わせる要因のひとつが、1.8リッター直噴+ターボのCGI(Charged Gasoline Injection)ユニットだ。何も知らされずに乗って“排気量当てクイズ”をやったら、「3リッター? もしかしたら3.2ぐらいあるかも……」と答えてしまいそうなトルク感。しかもアクセル操作に対する反応はリニアで、“ターボ or 自然吸気当てクイズ”をやったら自然吸気だと答えてしまいそう。そしてこれだけのパフォーマンスでありながら、10・15モードで11.2km/リッターの燃費を実現しているのだ。
CGIは無駄や贅沢とは正反対の性格で、つまりはフォルクスワーゲングループのTSIと同じく、ダウンサイジングのコンセプトで設計されたエンジンなのだ。小排気量にすることで各部の抵抗を減らして効率を上げつつ、ターボ過給によって動力性能を維持するという考え方だ。排気量が1.8リッターなのに車名に「250」とあるのは、2.5リッターエンジンと同等の性能をアピールしているから。スペック的にもそれは証明されていて、最高出力はメルセデスの2.5リッターV6とまったく同じ。最大トルクにいたっては1.8リッターのCGIユニットが上回る。
スリルと無縁のファン・トゥ・ドライブ
1.8リッターのCGIユニットは、ストップ&ゴーが連続する市街地では低回転域の豊かなトルクを見せつけ、高速巡航では静粛性の高さを印象づける。こう書くと八方美人のつまらないエンジンに思えるかもしれない。けれども、「コーン」と乾いた音を発する硬質な回転フィールや、アクセル操作に弾けるように反応するレスポンスからは、ちゃんとファン・トゥ・ドライブも感じられる。
ただ一点、5000rpmから上で、やや粗い4気筒っぽさを感じさせる。けれども実際は、エンジンをギャンギャン回して追い越し車線をブッ飛んでいこうという気にはならない。クルマ全体がクールで知的、落ち着いた雰囲気を醸しているからだ。同じEクラス クーペでも、より大きな排気量のエンジンを積むモデルはマッチョだけれど、「E250クーペ」はしなやかな機械なのだ。
タイヤが路面と戦ったり、無理矢理クルマを地面に押しつけるのではなく、なんというか、アメンボのようにツーっと滑っていく。10の仕事をするために、きっちり10の力だけを使っている印象だ。かつての高級クーペやスポーティクーペの魅力が、10の仕事をするために12も15も力を使う過剰さにあったのとは対照的だ。
ハンドリングも穏やかな性格で、ドキドキするようなスリルとは無縁。じゃあ楽しくないかといえば、そんなことはない。ステアリングホイールの操作に前輪は正確に反応し、エンジンとブレーキは、わずかなペダル操作に従ってきっちり作動する。ステアリングホイールと2つのペダルの操作を通して、4つのタイヤがついた優秀な機械を自分でコントロールしていると実感できる。「E250クーペ」のファン・トゥ・ドライブは、スリルやサスペンスとは別のステージにあるのかもしれない。と、ここまで「Eクラスのクーペ」と書いてきたけれど、正確にはこのモデル、「Eクラス セダン」のクーペ版ではない。
意外に使える後席とトランク
新型「Eクラス クーペ」のベースとなるのは「Cクラス」である。まぎらわしいけれど、Cクラスをべースにしたクーペ「CLK」の後継モデルにあたるのだ。ま、クルマのベースなんて、出来さえよければなんだっていい。Cクラスがベースだからボディもコンパクトで、4705mmの全長はEクラス セダンより165mm短い。日本で快適に使うには、これぐらいのサイズがマックスかもしれない。正直、Eのセダンはデカすぎて取り回しに気をつかう。
全長が短くなっているけれど、後席には成人男性2名がすっぽり収まるのはたいしたものだ。後席ドアがないからアクセスが面倒なのと、四方を囲まれた閉塞感を感じるという問題があるけれど、後席の乗り心地自体は快適だ。囲まれた感じも、個人的には押し入れの中の隠れ家みたいで嫌いじゃない。トランクもまずまず広くて、大人4名の1泊旅行なら十分使えそう。
最後になってしまったけれど、「ブルーエフィシェンシー」についてふれたい。これは、クルマにまつわる環境問題解決のためにメルセデスが取り組むことの総称。ある特定の技術を指すのではなく、車体の軽量化や転がり抵抗や空気抵抗の低減など、多岐にわたる。CGIエンジンもこの取り組みの一環だし、パワーステアリングのエネルギー消費を抑えたり、さらには部品のリサイクル率アップなども含まれる。ちなみにメルセデスの全ラインナップが、重量の95%以上をリサイクルするという。
この「メルセデス・ベンツE250 CGI ブルーエフィシェンシー クーペ」、約700kmを走って燃費計測すると、満タン法で8.61km/リッター。もうちょっと伸びると予想していたけれど、大人4名乗車で撮影機材も満載、山道でまぁまぁ飛ばしたことを思えば、まずまずの燃費かもしれない。ちなみに高速道路を流すだけなら、11〜12km/リッター台まで伸びる。CO2の排出を減らしてリサイクルにまで気を配る。いまの時代、そうしないとカッコいいという評価は得られない。というか、それがカッコいい。時代は変わりました。
(文=サトータケシ/写真=岡村昌宏(CROSSOVER))

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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