ボルボXCシリーズ【試乗記】
上質、安全だけじゃなく…… 2009.12.09 試乗記 XC60 T6 SE AWD(4WD/6AT)/XC70 T6 SE AWD(4WD/6AT)/XC90 ノルディック(4WD/6AT)……638.0万円/668.0万円/624万.0円
ボルボの2010年モデルを集めた試乗会にスーザン史子が参加。クロスオーバー「XC」シリーズを、まとめて乗り比べてみた。
乗り心地は、ふんわりモチっと
数年前に、ボルボのホームタウンである、スウェーデンのイエテボリを訪れたときのこと。てんこ盛りのロブスターをよそに、ワタシが夢中で頬張っていたのは、パン! 皮が薄く、中はふんわりモチッとしていて、ほんのり甘みのあるパンが、それはそれは美味しくて、「このパンがあればシアワセ〜!」なんて、つい食べ過ぎてしまったんでした。おかげで日本に帰るころには、すっかりデブに。
この食感って、ボルボ車に共通する、癒しの乗り心地にも似ているんですよ。もしかしたら、開発者も気がつかないうちに、主食であるパンが、その国のクルマの乗り心地を決めるうえでの重要な試金石になっているのかも……ってのは、オーバーかな?
それに、スウェーデンではそれほどお金持ちでなくても、別荘かボートを持っているんですって。入り江ごとに点在するマリーナでは、船の上で食事をするファミリーをよく見かけたけれど、ボルボに乗っているってだけで、そんな優雅な気分を満喫できるような気がするんです。ボルボ車って、実用的だけど、シアワセ度満点のリゾートカーでもあるんですよね。
今回乗り比べたのは、「XC」3兄弟。なかでも、2009年8月末に発表されたばかりの「XC60」は、世界で初めて「シティセーフティ」が標準装備となった注目のモデル。一見するとボディが大きく、扱いにくそうな印象だったけれど、実際に運転してみると意外や意外。シートポジションは高めとはいえ、片足を地面につけたまま腰を下ろせて、乗り降りにムリのない高さだし、見切りも悪くないから、ボディの大きさを感じさせない。
足まわりは適度に硬めで、ロールもほとんど感じられないけれど、芝の上を走っているような、角のとれたしっとり感がある。スポーティ仕上げなのに癒しがある、ここがボルボらしい乗り心地なんですよね。
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頼れる安全技術
試乗した「XC60 T6 SE AWD」には「セーフティパッケージ」がオプション設定されていて、レーン・デパーチャー・ウォーニングを体験することができました。スイッチをONにし、65km/h以上で走行中に車線をまたぐと、“ピピピピッ”という音で、ドライバーに警告を促してくれるんです。無理に鳴らそうとして車線をまたぐと鳴らないときもあったので、商品担当者に伺ってみたところ、それまでの運転状態などから判断して、明らかに居眠り、フラフラ運転と判断したときに反応するようです。アッタマいい!!
そのほか、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)で使用するレーダーセンサーを用いた安全装備「車間警告機能」も体感。前方車両をモニターし、車間距離が設定よりも短いと判断すると、運転席正面、フロントウィンドウのガラス面に赤いランプが点灯し、危険を知らせてくれるんです。
以前、「シティセーフティ」の体験試乗をした際には、本当にビックリしましたよ! 車両を模したバルーンの障害物に向かって、15km/h未満で走行を続けると、直前でシートベルトが巻き上げられ、ググッとブレーキが効き、しっかりバルーンの手前で停車してくれるんです。降りて距離を確かめてみると、約60cm。渋滞中や駐車スペースを探しているときなど、ふとよそ見をした瞬間に起こる追突事故を未然に防いでくれるなんて、ホント頼りになるわ〜!
内装も走りも好きかも!
次に試乗したのが「XC70」。2010年モデルの主な変更点は、従来の3.2リッターエンジンのかわりに、シリーズ中(V70/XC70)もっともパワフルなT-6エンジン(3.0リッターターボ、285ps)を搭載したXC70 T6 SE AWDを導入したこと。
さらに、「FOUR-Cアクティブパフォーマンスシャシー」などの装備を充実させた上で、価格は09年モデルの3.2リッターモデル比で11万円安い、624万円というバリュー価格になっています。
「XCシリーズのなかでは、一番好きかも!」と感想を漏らしたら、「結構シブ好みなんだな〜」と広報の方に言われちゃました。ワタシぐらいの年齢層には、より若々しいデザインのXC60のほうがウケるんですって。ってことは、もうおばあちゃんかいっ!? ってそういうわけでもないんでしょうが、あくまでも嗜好の違い。
とにかくXC70好きなんですよ!! まず、インテリアデザインがいいじゃない。スウェーデン王室出身デザイナーからヒントを得たクロスパターン、ヴィルヴァール模様を用いたアルミパネルもユニークだし、2層仕上げになっているメーター上部の意匠もなかなか。これは雪の層に、新雪がつもった感じをイメージしているんだとか。サンドベージュのインテリアに、エスプレッソブラウンというこげ茶色のシートを組み合わせた落ち着いた色遣いもボルボならでは。シンプルで温かみのあるモダン・スカンジナビアン・デザインにはイチコロですよ。
もちろん走りもイイ! XC70のロードクリアランスは、「V70」より45mm高い、190mmで、XC60と比べると、より安定感があって、軽快な印象。オンロードだけでなくオフロードも得意で、道具としての使い勝手は抜群ながら、オシャレなインテリアでリゾート感もある。標準装備されるFOUR-Cは、コンフォート、スポーツ、アドバンスと3つのモードが選べるんですが、普段の走りにもピリッとしたスパイスを効かせたいので、個人的には街なかでもダイレクト感のあるアドバンスを選びたいです。
限定モデルがカタログモデルに
最後に、XC3兄弟の長男にあたる「XC90」。2010年モデルからの変更点は2点、これまでリーズナブル路線の限定車として人気だった「ノルディック」と、スペシャリティ限定車だった、「R-DESIGN」の2モデルを新たに、カタログモデルとして設定したこと。ともに、装備を充実させるとともに、価格にお値頃感を持たせています。
3列7人掛けシートで、ミニバン的な使い方もできるうえに、3列目シートは、すっきりと床面に格納できるし、フルフラットもOK。
エンジンは、XC60やXC70と同世代の、3.2リッターNAエンジン。ターボじゃないのと、XC60比で220kg車重が重いこともあって、ビシビシ攻めるというキレの良さはないものの、鷹揚なハンドリング、心地よいロールなど、まさにクルージングの言葉がピッタリ。でも、やっぱりハンドルが重いな〜と感じ、その後、車速感応式電動ステアリング付を運転してみたら、まったく違うクルマに感じられました。3万3000円で付けられるのでいいかも。特に、ワタシのように(笑)細腕の奥様にはおすすめです!
ボルボ、最近の傾向と対策
ユニクロのヒートテックと、「トヨタ・プリウス」が爆発的な売れ行きを見せるなか、あっという間に日本はデフレの波に飲み込まれてしまいました。ここ1〜2年のうちに、「イイモノは高いのが当たり前」から、「イイモノなのに低価格が当たり前」となり、エコカー減税に補助金といった政府の措置も相まって、対象外となった高級輸入車への関心度は、徐々に薄らいでいるような気も。実際、ド庶民のワタシの場合、これまであまり気にせず使っていた諭吉さんの使い道を、少し考えるようになりましたっけ。
そんななか、輸入車メーカーもこぞって価格やサービスで対抗、ここに来て、大胆な価格戦略に打って出たボルボもそのひとつ。2010年モデルはこれまでの上質感や安全性を推し進めたうえで、さらなるバリュー感を打ち出し、国産勢に対抗しているんです。
特に、デュアルクラッチシステムを搭載した「V50 2.0e Powershift+(プラス)」は、ジャスト300万円という価格(消費税抜き価格)で登場。聞けば、「フォルクスワーゲン・ゴルフ」やプリウスと競合するケースもあるとか。特にエコカーを意識せずに新車購入を考えるユーザーの場合、プリウスの上級モデルが300万円近くすることを考えると、ボルボもほぼ同じお値段で買えるということから、初めての輸入車購入を検討するユーザーも増えているんですって。確かに、この価格は強力な後押しですよね〜。
最後になりますが、1つだけ言わせてください! 「なにこれ〜!! こんなボルボがあったんだ!」と目からウロコだったのが、現行V70にR-DESIGN専用のスポーツサスペンションなどを搭載した、「V70 R-DESIGN」。ノーズが瞬時にコーナーに吸い込まれていくような感覚は、爽快そのもの。「2.5T」は限定50台、「T-6」は限定30台、お値段は少々お高めですが、普段はファミリー使用、一人のときは思いっきりかっ飛ばしたいという方にはこちらがおすすめです。
(文=スーザン史子/写真=荒川正幸)

スーザン史子
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