日産フーガ370GT/370GT Type S プロトタイプ (FR/7AT)【試乗速報】
スポーティで心地いい 2009.10.23 試乗記 日産フーガ370GT/370GT Type S プロトタイプ (FR/7AT)まもなくデビューが予定される日産のフラッグシップセダン「フーガ」。発売を前にプロトタイプをクローズドコースで試乗した。
大変身!
発売を間近に控えた「日産フーガ」のプロトタイプ試乗会が、神奈川県横須賀にある「グランドライブ」こと追浜試験場で開催された。グランドライブのゲートを通過し、しばらく進んでいくと、テストコース内に試乗・撮影中の新型フーガが見えた。「いままでのフーガとはずいぶん違うなぁ」というのが正直な印象。何の知識もなく、いきなり見かけたら、フーガということに気づく自信はない。
フロントグリルやウインドウグラフィックに初代フーガの面影は残るものの、プロポーションがガラリと変わった。たとえば、Aピラーを50mm後退させることでロングノーズが強調され、ボディ後半にボリュームが集まるスタイリングに。全幅が40mm拡大される一方、全高が10mm低くなったからだろう、4つのタイヤが路面をガッチリ捉えるようなイメージだ。そして、実車に近づくにつれて、抑揚の効いたボディパネルが、これまでのフーガにはない優雅さ、遊び心を伝えてくる。
そんなイメージ一新の新型フーガは、日本では2.5リッターV6と3.7リッターV6、さらに、ハイブリッド仕様の3本立てとなる見込みで、ガソリンエンジン仕様がまもなく発売され、ハイブリッドは2010年秋の導入予定らしい。駆動方式はFRが基本で、3.7リッターモデルには4WDが設定される。そのなかから、今回試乗できたのは、3.7リッターエンジン搭載の「370GT」と、そのスポーツグレード「370GT Type S」。どちらもFR仕様である。
エコドライバー養成ペダル!?
370GTと370GT Type Sには、3.7リッターV6の「VQ37VHR」エンジンと7段ATが搭載される。いずれもスカイラインでおなじみのものだ。ステアリングコラムの左にあるボタンを押してエンジンスタート。スタートボタンの位置がドライバーから見にくいのが少し気になった。さっそく走り出すと、さすが自慢の高性能エンジン、低回転からすでに余裕を見せ、スムーズな発進を決める。3000rpm以下の常用域ではレスポンスも良好で、街なかでちょこまかと加減速を繰り返すような場面でも、ドライバーはストレスを感じずに済むだろう。もちろん、このエンジンが得意とする高回転域の気持ちよさは新型フーガでも健在であり、3500rpmを超えたあたりからレブリミットの7500rpmへ向かって伸びていく感じは、一度味わうと病みつきになる。
この気持ちのいいフィーリングを後押しするのが、キャビンに漏れ出すエンジンサウンド。新型フーガでは、不快なこもり音に対して、スピーカーから逆位相の音を発することで、こもり音を打ち消す「アクティブ・ノイズ・コントロール」を搭載、これでノイズを抑えるというのだ。走行中にアクティブ・ノイズ・コントロールをオン/オフしてみると、確かにオンのときには音の“雑味”が減る印象だ。
もうひとつ、面白い技術が「ECOペダル」だ。車両の特性を切りかえる「ドライブモードセレクター」で、燃費優先の“ECOモード”を選ぶと、アクセルペダルに対してエンジンの反応が穏やかになるのだが、これに加えて、アクセルペダルを踏みすぎると、なんとペダルの反力が増して、右足を押し返してくるのだ。はじめ、この感覚には面食らったが、エコドライブを身につけさせるには、効き目があるに違いない。
洗練された走り
走りについては、370GTと370GT Type Sとで、異なる性格を見せた。現行「スカイライン」同様、FR-Lプラットフォームを採用する新型フーガは、前ダブルウィッシュボーン、後マルチリンクのサスペンションを装備し、370GTには245/50R18、370GT Type Sには2インチアップの245/40R20タイヤが標準である。
テストコースを走るかぎり、標準の370GTはフラットな挙動を示し、乗り心地はやや硬めであるものの、乗り心地とのバランスがよく、先代フーガに比べ明らかに洗練されていた。コーナーでは、後輪駆動らしい素直な動きを見せ、スポーツセダンとしての資質も十分、予想どおりの出来だった。
一方、370GT Type Sの走りは、予想外だった。370GTがコンフォートサスペンションを搭載するのに対して、370GT Type Sにはスポーツチューンドサスペンションが装備されるのだが、これが思いのほか快適だったのだ。コンフォートサスペンション以上に、高速走行時やコーナリング時の無駄な動きを抑えてくれるにもかかわらず、荒れた路面などで乗り心地が大きく悪化することはなく、インチアップによる悪影響もとくに感じられない。テストコースには首都高速の繋ぎ目を模した路面があったが、ここの通過では、突っ張らないぶん、むしろ370GT Type Sのほうが乗り心地は良いくらいだ。その秘密は、路面入力の周波数にあわせて減衰力をコントロールする「ダブルピストンショックアブソーバー」。さらに4WAS(4輪アクティブステア)が標準装備される370GT Type Sは、コーナリングでシャープな動きを見せ、標準モデルとは段違いのスポーティさを示した。
日産のフラッグシップモデルという性格上、新型フーガには後席重視のモデルも用意されるというが、オーナードライバー、とくに、“たまには気持ちよく走りたい”という人には、この370GT Type Sは実に魅力的だ。370GT Type Sにかぎらず、スポーティさと心地よさの両面を上手にバランスさせることに成功した新型フーガ。これはなかなか楽しみな一台になりそうである。
(文=生方聡/写真=荒川正幸)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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