MINI ジョンクーパーワークス クラブマン(FF/6MT)【試乗記】
ほっとするホットMINI 2009.09.07 試乗記 MINI ジョンクーパーワークス クラブマン(FF/6MT)……493万円
ちょっとロングなMINI「クラブマン」に、ホットでエアロな「ジョンクーパーワークス」が登場。“究極のMINI”の看板を背負う、ニューモデルの走りやいかに? 下野康史がテストした。
切っても切れない関係
「山?」と言えば「川」じゃないけれど、「ミニ?」と言えば「あ、ミニクーパーね」と返す人がいるくらい、切っても切れないのが、ミニとクーパーの関係だ。
ミニの高性能モデルに対する呼称として、初めて“クーパー”の名が使われたのは、もちろんクラシックミニ時代の1961年にさかのぼる。「クーパー」とは、ミニの発明者、アレック・イシゴニスの友人でもあったジョン・クーパー(1923〜2000年)のことである。父チャールズと二代に渡ってレーシングガレージを主宰するこの人が、BMCミニの高性能モデルを手がけたときからミニ・クーパーの歴史が始まった。
BMWがミニのブランドを引き継ぎ、新生ミニがスタートしてからも、御存知のとおりクーパーは高性能モデルの名称として活躍している。しかも、クラシックミニの時代にはなかった新たなアイコンもつくった。それが“JCW”(ジョンクーパーワークス)だ。クーパー、クーパーSよりさらに高性能な、究極のスポーティミニに与えられるモデル名である。
JCWが登場したのは、新生ミニのマーク1終盤だが、マーク2に切りかわった現行世代でさらに布陣を強化した。クーパーS以下のモデル同様、ハッチバックだけでなく、コンバーチブルとクラブマンにもJCWを揃えたのである。つまり、フルラインJCW体制だ。
最も戦闘的なエンジンとシャシーを持つかわり、JCWには6段マニュアルしか存在しない。ちなみにクーパーSまではアイシンAW製の6段ATが揃う。日本では売れる数の知れたMT専用モデルをきちんと品ぞろえするインポーターの姿勢はリスペクトに値するだろう。
落ち着きある身のこなし
試乗したのはクラブマンのJCW(389万円)である。JCWに搭載されるエンジンは、211psまでチューンされた直噴4気筒1.6リッターだ。175psを発生するクーパーS用ターボユニットの排気量はそのままに、最大過給圧を0.9バールから1.3バールに上げ、専用のシリンダーヘッド、バルブ、ピストン、クランクシャフトなどを組み込んである。パワーアップに合わせて、当然、サスペンションも強化され、タイヤはクーパーSの195/55R16に対して、205/45R17へと格上げされている。
1.6リッターのFFの2輪駆動で211ps。スペックを聞いただけでやや腰がひけるのに、乗った日は大雨だった。「おてやわらかに」とコクピットで心に念じて走り出すと、JCWクラブマンは意外やくみしやすいマックスミニだった。
実はこの数日前にハッチバックのJCWに乗ったのだが、それと比べるとクラブマンは明らかにひとまわりおとなしい。それもそのはず、1260kgの車重はハッチバックのJCWより50kg重い。ホイールベースを8センチ延長したワゴンボディも身のこなしに落ち着きを与えているはずだ。
とはいえ、これだって動力性能は十分以上である。ターボラグを抑えたツインスクロールターボは、なにより低回転から逞しいトルクを発生するのが印象的で、こまめなシフトダウンを必要としない。高速道路の追い越しでも、高いギアのまま右足を踏み込めば、まるでキックダウンをきかせたAT車のように力強い加速がきく。急加速中はピューっという笛を吹くようなターボサウンドを聴かせるのがJCWの特徴だ。
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究極ではないけれど
足まわりの印象も、エンジン同様、逞しい。軽いスポーツシューズではなく、トレイルランシューズのようなヘビーデューティさを備えるのがJCWシャシーのキャラクターだが、ロングホイールベースのもたらす乗り心地はハッチバックより快適だ。これならハッチバックよりコブシひとつ分広い後席を当て込んで、ファミリースポーツワゴンとして使うのも無理ではない。
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クラブマンには、右サイドに「マツダRX−8」と同様の後席アクセス用ドアが付く。ルーフの低いクルマだから、リアシートへの出入りにはドア開口部が大きいに越したことはない。全長が延びて、開口部の総面積が大きくなっているのに、相変わらずボディの剛性感は高い。
ボディタイプにかかわらず、JCWの“お代”は、クーパーSの69万円高である。ストレートに究極の高性能ミニを求めるなら、痩せた大人ひとり分軽いハッチバックをお薦めするが、あそこまでジャジャ馬でなくてもいい、けれど“JCW”に乗りたいという人に、クラブマンはより円満なJCWミニである。アレック・イシゴニスが211psのミニワゴンを草葉の陰で喜んでいるかどうかはわからないが、目を回しているのは間違いない。
(文=下野康史/写真=峰昌宏)

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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