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第96回:上海だけやあらへんで。イタリア、フランスだってコピー天国だ!

2009.06.20 マッキナ あらモーダ! 大矢 アキオ
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第96回:上海だけやあらへんで。イタリア、フランスだってコピー天国だ!

謎のピカチュウ

ここ数年、北京や上海のモーターショーが開幕すると、毎日のように報道されるのが「コピー車」の話題である。

たしかに“本家”のデザイナーとしては、コストの制約や仕向け地の法基準をクリアしながら血のにじむ想いで考案したボディスタイルを、一瞬にして模倣されてしまうのは腹立たしいに違いない。

そして昨今は、中国だけでなくイタリアやフランスでも「あれ?」「似てるけど、どっか変」と思うアイテムに遭遇することが多々ある。ここ数年、特に目につくのは、「ピカチュウ」と「ハローキティ」である。

背景には、著作権コントロールの甘さがあるのだろう。たとえばイタリアでそうしたコピー商品の摘発にあたるのは、主に財務警察といわれる組織だ。彼らはイタリア製ファッションブランドのコピー商品に対しては取り締まり成果を上げているが、日本製キャラクターグッズのコピー商品に対してはあまり力を入れていない。

また、一般のコピーライトに関する意識の低さもある。
ボクが住む街の、ある陶器店はそれなりに有名な店である。そして職人さんはみんな美術学校を卒業している。にもかかわらず、縁日には子どもの目をひくべく、何の躊躇いもなくピカチュウ似の絵を描いた陶器を屋台に並べるのだ。
日本の芸術系大学の一部には、選択科目に法学の時間があって、著作権について学ぶ機会があるが、こちらではそうしたことは望めない。
だからボクは、日本で「イタリアの熟練職人による、“本物”の味わい」などという広告を見ると、かなり複雑な気持ちになってしまう。

「なんちゃってカー」は中国だけにあらず。これはマレーシアのプロトン・ペルダナ。
「なんちゃってカー」は中国だけにあらず。これはマレーシアのプロトン・ペルダナ。
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我が家の街のショッピングセンターで見つけた遊具。
我が家の街のショッピングセンターで見つけた遊具。
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こちらは伊仏国境の商店街で。
こちらは伊仏国境の商店街で。 拡大
イタリア屈指の高級リゾート、ポルトフィーノにて撮影。
イタリア屈指の高級リゾート、ポルトフィーノにて撮影。
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ライセンス商品であるとの但し書きは見当たらず。フランス東部で。
ライセンス商品であるとの但し書きは見当たらず。フランス東部で。
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仏シャトネ社の新型「CH26」。
仏シャトネ社の新型「CH26」。 拡大

なかなか楽しいぞ、マイクロカーの世界

ピカチュウ、キティちゃんはともかく、まさかヨーロッパのクルマ界にはそんなコピー慣習はないだろう、と皆さんは思うかもしれないが、もう少しライトな感覚? で存在する。

マイクロカーの世界である。欧州のさまざまな国で今も免許不要、もしくは原付免許で乗ることができるカテゴリーだ。主要メーカーの国籍はフランスとイタリアである。
そうしたクルマの中には、先々代「オペル・コルサ(ヴィータ)」を想起させるものや、以前本欄で紹介したことがある「ルノー・アヴァンタイム」風など「なんちやってカー」が多々ある。

背景にはマイクロカーユーザーの変化がある。こうした乗り物は従来、視力が減退して普通免許の更新が不可能になったり、経済的な問題で乗用車を維持することが難しくなったお年寄りが主なオーナーであった。
そんな時代のマイクロカーは、まさに段ボール箱が走り出したようなデザインのものが大半だった。

しかし、法規上バイク扱いとなるため、4輪車の交通が規制された市内にも入れることや、経済状況の悪化により、近年では若い層でもマイクロカーに興味をもつ人たちが増えてきた。また、以前インタビューした販売店主によれば「免停中の足」としてのレンタカー需要もあるそうだ。
そのため、メーカーとしても、より若い層に訴求できるスタイルを目指すようになったのである。

今回は、フランスのシャトネ社からこのほど発表されたニューモデル「CH26」を紹介する。
全体的な印象はBMWミニだが、リアのテールランプあたりは「アルファMiTo」というデザインハイブリッドがニクい。まあ、同じヨーロッパの企業であり、参考にしたモデルとは明らかにサイズが違うので、“ご本家”も寛容なのだろう。

……と書いていたら、先日こんなものも発見した。自動車クラブのイベントを訪問したところ、ある参加者がフロントウィンドウに自分の名前が書かれたプレートを掲げていた。これ自体はここ数年チューニング系若者やトラックドライバーの間の流行なのであるが、問題はその横に描かれたロゴである。

リアスタイルは「アルファMiTo」風?
リアスタイルは「アルファMiTo」風? 拡大
「Agip」と思いきや……。
「Agip」と思いきや……。 拡大

ガソリンスタンドAgipの、犬が口から火を吹くマークかと思いきや、豚が尻から火を吹いていて、「A pig」ときたもんだ。
欧州の人も、こういうひねりの効いた微笑ましい「パクり」に専念してほしいものである。

(文=大矢アキオ、Akio Lorenzo OYA/写真=PROTON、CHATENET、大矢アキオ)

大矢 アキオ

大矢 アキオ

Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、24年間にわたってリポーターを務めている。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。

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