スバル・フォレスター2.0i-L EyeSight(4WD/CVT)/2.0XT EyeSight(4WD/CVT)【試乗記】
地味な変化で確かな進化 2012.11.25 試乗記 スバル・フォレスター2.0i-L EyeSight(4WD/CVT)/2.0XT EyeSight(4WD/CVT)……288万7500円/322万350円
フルモデルチェンジで4代目となった、スバルのSUV「フォレスター」。その進化のポイントは? 自然吸気モデルとターボモデルに試乗した。
“よいところ”は残しながら
「今度のインプレッサは、『XV』のためにモデルチェンジしたんじゃないかと言われるんですよ」と、エンジニアの方が笑う。新型「インプレッサXV」の受注好調で、そんな冗談も飛び出す。「XV、カッコいいですもんね」と言葉を受けると、「『フォレスター』もカッコいいですから」とエンジニア氏。
「スバル・フォレスター」のプレス試乗会に来ている。きまじめなスバルのイベントらしく、会場の一角には新型フォレスターのエンジン+トランスミッションとサスペンションが展示される。4代目となった「インプレッサ」の車高を上げ、SUVテイストを加味したのが“XV”である。高くなった全高に対応して、XVのサスペンションはスタビライザーが強化された。コーナリング時のロール剛性を上げるためだ。
サスペンションの基本をXVと共用し、ボクシーなSUVボディーを載せたのが、新しいフォレスターといえる。2640mmのホイールベースはXVと同寸。ただし、リアフロアは専用開発だ。最低地上高は、XVの200mmよりさらに高い220mm。ホイールを取り付けるハブの厚さを変えることで、トレッドが若干広げられ、前/後=1545/1550mmとなった。
ボディーサイズは(カッコ内は先代モデルとの比較)、全長4595mm(+35mm)、全幅1795mm(+15mm)、全高1695mm(+20mm)。先代より大きくはなったが、依然として「取り回しのいい、ほどほどの大きさのSUV」といえる寸法である。5.3mの最小回転半径は変わらない。
エンジンはもちろん水平対向4気筒で、新世代の2リッター自然吸気(148ps、20.0kgm)と、2リッター直噴ターボ(280ps、35.7kgm)が採用された。
トランスミッションは、インプレッサ同様、トルコン式ATから「リニアトロニック」と称するCVTに変更された(自然吸気モデルには6段MTも用意される)。その恩恵もあって、カタログ燃費は、自然吸気モデルが15.2km/リッター(MT車など一部を除く)、ターボでも13.2km/リッターを達成。フォレスターのCVTモデルは、自然吸気、ターボを問わず、エコカー減税50%対象車となる。
細かくまじめな工夫が見られる
1997年に初代がデビューしてから15年。2012年11月13日から、4代目となるフォレスターの販売が開始された。
四角く、実用車然とした初期のフォレスターと比較すると、相対的にスタイリッシュになったニュージェネレーション。Aピラー付け根が前進したため、フロントウィンドウの傾斜が少し急になった。また、ターボモデルでは、ボンネット上のエアスクープがなくなった。
「軍馬のように力強く、働きもののクルマ」といったイメージが薄れて個人的にはやや寂しいが、いずれも燃費向上のための空力的洗練が、機能面から見た変更理由である。ただし、ターボモデルはフロントバンパーの形状が自然吸気モデルと異なり、ヘッドランプまわりもブラックアウトされているので、両者を見分けるのは簡単だ。
インテリアでは、各部にソフト素材を使用して質感を上げた。とはいえ、全体的にはキープコンセプトな印象で、「ドアグリップが縦型になったのが大きな違いか」……と思いながら運転席に座る。と、ハンドルの位置に対して、視点が高くなっている。もともとフォレスターは、車両感覚をつかみやすいクルマだが、新型では周囲が見やすいこともあって、さらに運転が楽になった感がある。
乗降性の向上も見逃せない。フロントドアのヒンジ位置を前方に押し出して開口部を広げ、サイドシルと呼ばれるフロア左右端の出っ張りを低くして、内外へ振り出す足先の動きをスムーズにしている。派手さはないけれど、細かく、まじめな工夫が、いかにもスバルらしい。
電子デバイスに存在感
「2.0i-L EyeSight」「2.0i-S EyeSight」、そしてターボの「2.0XT EyeSight」――グレード名に付いた「EyeSight(アイサイト)」は、言うまでもなく、スバルの誇る“ぶつからない技術"である。ステレオカメラで前方を監視し、衝突の危険性があるときにブレーキをかけてくれる。また、前走車を認識する機能を生かして、前のクルマとの車間距離を保ちつつ追従する高度なクルーズコントロールや、白線を逸脱すると警告する機能も備える。
グレード名でアピールするEyeSightに加え、フォレスターでは、スバル自慢の4WDシステムも、シフトレバーの前に「X-MODE(エックスモード)」スイッチを設けることで強調する。
これは各輪のブレーキを個別に制御するVDCの応用技術で、泥濘(でいねい)路や雪道など、極度に足場が悪い場所から脱出する際に用いられる。エンジンやトランスミッションを統合制御して過剰なトルクを与えることを避け、スリップした車輪にブレーキをかけることでLSDの役割を果たす。機械式のデバイスよりはるかに反応速度が高く、「スキルを問わず、安定した運転を可能にした」という。時速40km以下で作動する。
フォレスターのメインマーケットは、北米である。かの地では、やはりヘビーデューティーな要求が強いのかと思ってエンジニアの方にうかがってみると、「いや、ほとんどありません」とのこと。あらら。「せっかくスバルのクルマにお乗りいただいているのに、『私のクルマ、4WDなの?』という方が多いので」、あえて「X-MODE」ボタンを目立つようにしたという。正直な回答である。
自然吸気のフォレスターに乗ってみると、車内は静かで、乗り心地も滑らか。グッと洗練された。「品がよくなった」といっては、先代フォレスターが気の毒か。赤信号で停車すると、アイドリングストップ機能が働いて、車内がシンとするのも、新鮮な気持ちだ。
18インチを履くターボモデルは、足まわりが強化されていることもあって、締まった乗り心地。ボクサーエンジンの各バンクから排気を導くツインスクロールターボはパワーの出方がスムーズ。積極的に“スポーティー"を求めるなら、エンジンとトランスミッションを統合制御する「SI-DRIVE」を、「S♯」ことスポーツシャープモードにするといい。アクセル操作に対するダイレクト感が増すし、「S♯」ではCVTに疑似的な8段ギアが切られる。
なんとなく地味な変化だけれど、着実に進化した4代目フォレスター。価格は、自然吸気モデルが208万9500円〜277万2000円。ターボが283万1850円〜293万6850円である。
(文=青木禎之/写真=小林俊樹)
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青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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