第44回:期間限定! ゆる〜さ満載の「500ショップ」に急行せよ
2008.06.07 マッキナ あらモーダ!第44回:期間限定! ゆる〜さ満載の「500ショップ」に急行せよ
ドンキに見せたい
イタリアにおける商店は、日本人からすると不思議なことの連続である。
そもそも、商売人の基本である「いらっしゃいませ〜」のような挨拶がない。日本のコンビニ店員のマニュアルどおりの「いらっしゃいませ〜」が必要か疑問であるが、ないとこれまた結構寂しいものだ。
店内もこれまた不可解なことがある。余分な空きスペースがやたら多いのだ。店によっては、ワンフロアまるまる空いていたりする。ドン・キホーテの逆を行くといえば、わかりやすいだろう。
まあ、イタリアは古い建物が多く、借りるにしても購入するにしても「ぜんぶまとめて」という物件が多いから仕方がないのだろう。
それにしても、売り場1平方メートルあたりの売れゆきを日々計測して、陳列に頭をひねっている東京の店長さんが見たら羨ましがるような、ゆとりある造りである。
不思議なことの極めつけは、「店員が誰かわからない」ことだ。知り合いの親父が遊びに来ていて、さも店員のように馴染んでしまっているのである。
店員のほうも名札を着けていることは少ないから、さらにわからない。したがって初めて訪れた客は、誰が店員かわかるはずがない。いや一見の客でなくてもわからない。そういう親父は毎日店に来ているからだ。しばらくその店に通ってからようやく「あんた、店員じゃないんだ」と気づくのだ。
かくも、ゆるさ溢れるのがイタリア式商店なのである。
ゆる〜いオフシャルショップ
話はかわって2008年4月、ミラノにフィアットが「500ポップアップストア」をオープンした。要は、「フィアット500」のグッズを集めたお店である。
店内には市販車とアートカーの実車が置かれているが、それらはあくまでも“おかず”だ。
近年フィアットが連発しているオフィシャルスウェットをはじめ、Tシャツ、鉛筆、マウス、ミニカーなどなど、新旧フィアット500にちなんだ各種グッズが店のメインである。
このポップアップストア、オープニングからしてボクは一本とられた。
もともとメーカーのプレスリリースには、「ミラノデザインウィーク期間中の4月18日にグランドオープンする」と書かれていた。
当日ミラノを離れているボクは、「せめて外観だけでも撮影しよう」と開店2日前に店へと赴いた。するとどうだ。もうとっくに営業していて、お客さんが次々入っているではないか。
ヤッセンさんという店員さんに聞けば、「4月10日にはオープンしてたよ」と言う。工事が早く終わったので、開店することにしたのだろう。
そしてこの店も冒頭の話どおり、売り場面積にかなりのゆとりがあった。地下はイベントスペースということになっているが、日頃は使われておらずガラ〜ンとしている。ページが余って「メモ」「感想欄」としてしまった学校文集に似たムードが漂う。
ただし楽しい「ゆるさ」もある。
たとえばメーカーのオフィシャルでない500グッズも、よくできていれば扱っているというところだ。同じフィアットグループ系グッズでも、「ニセモノは許さん!」とばかりの偽造防止のホログラムシールがギラギラ輝くフェラーリとは対照的である。
また片隅には、3月のジュネーブショーに参考出品されていた「500ミニサイクル」が立てかけてあるので訊けば、「あ、それはまだ非売品だよ」というお答えが返ってきた。
「そんなら、その旨書いとけよ」と目くじらをたてることもできるが、これから発売する新アイテムが見られるとポジティブに受け取ろう。なにしろ、昨年デザインウィークにおけるフィアット展でスタッフが着ていたのと同じスウェットが、いつの間にか売られていたりするのだから。
唯一惜しいのは、「トヨタ博物館カレー」に対抗できるような「500食品」がないことである。
7月までの限定だけど……
見学は1時間あれば十二分だが、もし近所にあろうものなら、ボクなどは冒頭のような入り浸り親父になってしまうかもしれない。
この店は2008年7月31日までの期間限定である。ただしここはイタリア。勝手な想像だが、大人気につき期間延長! なんていう奇跡も起こりうるいっぽうで、逆に早期撤退だってなきにしもあらずだ。
心ある500ファンは、ミラノへ急いだほうがよい。
なお詳しい所在地や営業時間は、と書きたいところだが、ここはひとつ二玄社の販促のため『NAVI』2008年7月号を参照、としておこう。
(文と写真=大矢アキオ Akio Lorenzo OYA)
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大矢 アキオ
Akio Lorenzo OYA 在イタリアジャーナリスト/コラムニスト。日本の音大でバイオリンを専攻、大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとしてシエナに在住。NHKのイタリア語およびフランス語テキストや、デザイン誌等で執筆活動を展開。NHK『ラジオ深夜便』では、25年間にわたってリポーターを務めあげる。『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)など著書・訳書多数。近著は『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)。イタリア自動車歴史協会会員。
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