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【スペック】全長×全幅×全高=3545×1625×1515mm/ホイールベース=2300mm/車重=1010kg/駆動方式=FF/1.2リッター直4SOHC8バルブ(69ps/5500rpm、10.4kgm/3000rpm)/価格=233.0万円(テスト車=同じ)

フィアット500 1.2 8V ラウンジSS(FF/5AT)【ブリーフテスト】

フィアット500 1.2 8V ラウンジSS(FF/5AT) 2008.05.12 試乗記 生方 聡 ……233.0万円
総合評価……★★★★

生産終了から30年、同じ名前で復活を遂げた新生「フィアット500」。愛らしいデザインは大評判……さて、気になる乗り味は?
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ひとを動かすコンパクト

クルマのダウンサイジングが叫ばれるようになって久しい。最近は、ガソリンの高値が引き金になって、ようやくあのアメリカでも小さなクルマへシフトする動きが見られるし、日本でもコンパクトカーや軽自動車への人気がますます高まっている。理由はともかく、結果としては悪くない。しかし、クルマ好きにしてみれば、より小さなクルマが、楽しさを見いだせるものばかりとはいいがたい。理性ではダウンサイジングの必要性を感じながらも、なかなか行動に移せないのは、クルマのほうにも少しは責任があるのではないか?

その点、“チンクエチェント”、すなわち、フィアット500は理屈抜きにダウンサイジングが実践できる逸材だ。意地悪な言い方をすれば、フィアット・パンダに高価な厚化粧を施しただけのクルマだが、それで大きなクルマからフィアット500に乗り換えようという気にさせるのだから、やはりイタリアンデザインの力は偉大である。

ダウンサイジングやエコは理性に訴えるだけではなかなか進まない。感性に訴えるプロダクトでその気にさせる。フィアット500はそのよいお手本といえる。

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【概要】どんなクルマ?

(シリーズ概要)
「フィアット500」(チンクエチェント)は、1957年7月4日にデビューした同名車のリバイバル版だ。旧型は3mに満たない愛らしい外観で知られ、500ccの空冷直列2気筒エンジンをリアに搭載し後輪を駆動した。
小変更を加えつつ、1977年までに400万台以上が生産された。

現行型は、ちょうど半世紀後の2007年7月4日に、イタリア本国でデビューした。フィアットのコンパクトカー「パンダ」をベースとするFF車ながら、かつての500を彷彿とさせる内外装が特徴。全長が3.5mを超えるなど、寸法上はふたまわりほど大きくなっている。
フロントに搭載されるエンジンはすべて4気筒で、「500」の排気量は継承されない。ガソリンは1.2リッター(69ps)と1.4リッター(100ps)、ディーゼルは1.3リッター(75ps)をラインナップ。トランスミッションは、オーソドクスなMTと、オートマチックドライブを可能とする2ペダルMT「デュアロジック」が組み合わされる。
車両設計は、フィアットスタイルセンターが担当。ポーランドのティヒ工場で生産される。

(グレード概要)
試乗車は、日本に初期導入された特別仕様車「1.2 8V ラウンジSS」。2008年3月15日に発売された。
1.2リッターの「1.2 8V ラウンジ」(デュアロジック仕様)をベースに、フォグランプ、クロームのサイドモール、フルオートエアコン、パーキングセンサーなどを装備する。価格は8.0万円高の233.0万円。
なお、2008年内には1.4リッターモデルの導入も予定されている。

1957年生まれの“旧”「フィアット500」。戦前にヒットした「500」(通称:トポリーノ)の後継として「ヌォーヴァ(ニュー)・チンクエチェント」とも呼ばれる。イタリアンコンパクトの代名詞的存在だ。
1957年生まれの“旧”「フィアット500」。戦前にヒットした「500」(通称:トポリーノ)の後継として「ヌォーヴァ(ニュー)・チンクエチェント」とも呼ばれる。イタリアンコンパクトの代名詞的存在だ。 拡大
こちらは、30年ぶりによみがえった現行500。メカニズムは違えど、そっくりなデザインに仕立てられた。
こちらは、30年ぶりによみがえった現行500。メカニズムは違えど、そっくりなデザインに仕立てられた。 拡大
随所に遊び心が盛り込まれる新型「フィアット500」。キーカバーは9種類のオプションがあり、“着せ替え”を楽しめる。3個ずつのセット販売で8400円也(写真はメタリックレッド)。
随所に遊び心が盛り込まれる新型「フィアット500」。キーカバーは9種類のオプションがあり、“着せ替え”を楽しめる。3個ずつのセット販売で8400円也(写真はメタリックレッド)。 拡大

【車内&荷室空間】乗ってみると?

(インパネ+装備)……★★★★
エクステリア同様、思わず笑顔がこぼれるフィアット500の室内。いまどきのクルマとしてはシンプルすぎるくらい。だからこそ目を惹くのが運転席正面のメーター。かつてのチンクエチェントの“丸メーター”を彷彿とさせるデザインだが、中心部に各種車両情報を表示するマルチファンクションディスプレイが配置されるなど、過去と現代をバランスしているところが上手い。ボディ同色に艶やかに塗られたパネルには温かみがあり、それらによってつくり出される雰囲気が、渋滞中のイライラを忘れさせてくれる。
試乗車に標準装着の固定式ガラスルーフは、決して広くない室内を開放的にする貴重なアイテム。日射が強いときのために手動式のサンシェードも備わるが、夏場は暑そうだ。本国仕様にはスライディングルーフも用意されるという。キャンバストップがあったらいうことはないんだけれど……。

(前席)……★★★
現代の安全基準にあわせて、さすがにヘッドレストは備わるが、フロントシートもまたクラシカルなデザイン。座ってみると、シートバックのサイドサポート間に背中がちょうど収まるサイズで、大柄な人だと少し窮屈かもしれない。
シートはスライド、リクラインのほか、クッションの後部をリフトすることができる。ただ、ステアリングはチルト調節だけなので、ペダルの位置優先でシートポジションをあわせると、ステアリングホイールがやや遠く感じる。フットレストはもう少し大きいサイズのものがほしい。

(後席)……★★
全長3545mm、ホイールベース2300mmのフィアット500だけに、お世辞にも後席は広いとはいえない。頭上のスペースはゼロに等しい。足元は、前席下に爪先は入るが、あまり足を前に出すことができないし、膝はシートバックの裏を押してしまうほど。そうなると、押された前席の乗員も辛い。乗り心地は前席とほぼ同じレベルで、覚悟していたほど悪くないが、スペースを考えると、大人を長時間乗せるのはあまりお勧めしない。

(荷室)……★★★
サイズの割には頑張ったのがラゲッジスペース。奥行き50cmほどだが、幅は約100cmあり、トノカバーまでの高さも十分に確保されている。いざというときにはリアシートを倒すことができるし、なによりハッチバックなのでアクセスが便利なのは助かる。


フィアット500 1.2 8V ラウンジSS(FF/5AT)【ブリーフテスト】

【ドライブフィール】運転すると?

(エンジン+トランスミッション)……★★★
エンジンは、パンダにも搭載される1.2リッターの8バルブ。車両重量がパンダよりも50kg重いフィアット500(1.2 8Vラウンジ/ラウンジSS)を、街中、高速、山道などいろいろ試してみたところ、決して余裕はないものの、不自由なく走れるだけの動力性能を持つことが確認できた。2000rpm以下ではやや頼りないが、そこから上では実用的なトルクを発揮してくれる。

組み合わされるのは、「デュアロジック」と呼ばれるマニュアルベースの2ペダルシステム。最近、トルコンATを凌ぐほど快適な2ペダルが増えているが、それに比べるとこのデュアロジックは一世代前の感がある。とくに、1速から2速へシフトアップする際の空走感は気になるところ。しかし、マニュアルモードを使い、シフトアップにあわせてアクセルペダルを緩めてやると、これまで以上に気持ちよく変速が決まるから、積極的に楽しんでしまうのは、このクルマとの上手な付きあい方かもしれない。個人的にはマニュアルの導入を期待したい。

フィアット500 1.2 8V ラウンジSS(FF/5AT)【ブリーフテスト】

(乗り心地+ハンドリング)……★★★
見た目はソフトでも、乗り心地はどちらかといえば少し硬め。加えて、路面によっては小さな上下動が気になることもある。幸い、試乗車が履くタイヤのおかげもあって、伝わるショックはカドが削り落とされ、不快というほどでないのが救いだ。
高速の直進安定性は良好。一方、ワインディングロードではロールは大きく、安定感も乏しいが、ショートホイールベースを活かしてキビキビ走り回ることができた。これ以上締め上げると街乗りが辛くなるので、さじ加減としてはこのくらいが適当か?

(写真=高橋信宏)

【テストデータ】

報告者:生方聡
テスト日:2008年3月25日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2008年型
テスト車の走行距離:1842km
タイヤ:(前)185/55R15(後)同じ(いずれも、コンチネンタル コンチプレミアムコンタクト2)
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(5):山岳路(3)
テスト距離:325km
使用燃料:26.5リッター
参考燃費:12.26km/リッター

生方 聡

生方 聡

モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。

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