ダイハツ・タントX(FF/4AT)【ブリーフテスト】
ダイハツ・タントX(FF/4AT) 2008.05.08 試乗記 ……123万4750円総合評価……★★★★
軽乗用車でありながら、室内空間の広さに驚かされる「ダイハツ・タント」。助手席側にスライドドアを採用して利便性を高めた2代目の走りと使い勝手を試す。
第一印象はハズレ
「一体この頭でっかちのハコは何ですか!?」。初代「ダイハツ・タント」を初めて見たときに抱いた自分の感覚は、どうも世の“軽自動車ファン”のそれとは異なるものだったらしい。よもやこんな妙なカタチのクルマは売れますまい、という予想は、発売直後に大ハズレであることが明らかになったからだ。
2003年にリリースされた初代「タント」は、丸4年後に2代目へとバトンタッチするまでのモデルライフを通じて、平均月販台数が実に8000台前後というヒット作となった。これをもって「小さいことこそが特徴であるはずの軽自動車でも、多くのユーザーは大きく広いことこそを望んでいる」という昨今の軽自動車界を取り巻く真理が、白日の下に晒される(?)ことになったのだ……。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
ダイハツの主力「ムーヴ」をベースに室内空間を広げた“スーパースペースワゴン”「タント」。デビューは、2003年の東京モーターショー。2005年7月には、若者向けの「タントカスタム」が追加された。2007年12月、4年ぶりにフルモデルチェンジし2代目となった。
2代目の目玉は、助手席側に「ミラクルオープンドア」ことスライドドアを採用したこと。通常リアドアの付け根となるセンターピラーを廃し乗降性を高めた。ボディサイズは、長さと幅こそ変わらぬものの、25mm高くなり、ホイールベースは50mmも延長された。結果、居住空間は、室内長×室内幅×室内高=2160(+60)×1350(+50)×1355(+25)mmに拡大(カッコ内は先代比)。先代同様、室内空間の広さをアピールする。
エンジンは、新しい水冷3気筒のKF-VE型「トパーズネオエンジン」で自然吸気とターボの2種類。ターボエンジンは「タントカスタム」に搭載される。トランスミッションは4段ATに加えCVTもラインナップ。駆動方式は、FFのほか4WDも用意される。
(グレード概要)
ラインナップは、上から「Xリミテッドスペシャル」「Xリミテッド」「X」「L」の4種類。ベーシックグレードの「X」は、キーフリーシステムやABS、オートエアコン、スライドドアイージークローザーは標準装備されるが、スライドドアは手動となる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
Xグレードの前輪駆動モデルは、ちょうどシリーズの中堅どころ。オーバーヘッドコンソールやバニティミラー、リバース連動ミラーといった“豪華装備”はオプション扱いとなるものの、オートエアコンや電動格納式ドアミラー、助手席シートバックテーブルなどを標準装備。ただし、運転席シートリフターやチルトステアリングなどからなる“アジャスタブルパック”は、ぜひ選択したいオプション。空調/オーディオコンロール系はシンプルデザインで扱い易いし、大きなセンターメーターも見やすい。
(前席)……★★★
新型タントシリーズが採用するのは、(より若者向け仕様の「カスタム」を除いて)全車撥水加工を施したファブリックシート。センターアームレストを上げると左右クッションが連続したベンチ風になる。しかし、いかにキャビン空間が売り物のモデルとはいえ、さすがにそこに3人がけは、無理。
“上広がり”な独特の視界の広がり感には、思わず笑ってしまいそう。ただし、最前端のフロント第一ピラーは、むしろもう少し内寄り配置とした方が死角が気にならないはず。暖色系の洋服を着ているとそれがサイドウィンドウに映り込んで結構気になるのは、ガラスが垂直に近いゆえか。
(後席)……★★★★
この空間レイアウトを見せられると「今までの各車の広さ競争は何だったのか」という感じ。助手席を最前位置にし、260mmのスライドが可能な左右独立式リアシートを最後端にセットすれば、1135mmという想像を絶する(!)タンデムディスタンスが得られる。
重量を増し、空気抵抗も増し、その分確実に燃費を悪化させる……と理詰めに考えれば軽自動車には本末転倒なあり余るヘッドスペースも、もちろん新型タントのパッケージングの大きな特徴。少しずつライバルを上まわる、という従来の争いを尻目に、ドーンと他車に差をつけた。新型タントのパッケージングは、「そんな不毛な争いに終止符を打つ」という点でも価値あるもの、なのか……?
(荷室)……★★★
後席にロングスライドメカを採用したモデルの場合、それを最後端にセットするとほとんど見るべきラゲッジスペースは残らない、というのはある種宿命。一方で、後席をアレンジするとフロア高さが595mmと低く1385mmの長さを持つ荷室が出現と、その“ジキルとハイド”ぶり(?)が特徴。
ここで威力を発揮するのが、左サイドのセンターピラーレス構造。軽自動車ではどうしても開口部の広さに制約をうけるスライドドアのウイークポイントを補い、荷物の出し入れにも威力を発揮。このクルマのピラーレスデザインは、今ひとつ価値不明なトヨタのミニバンのそれよりも百倍有効!
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
900kgオーバーという車両重量に対しては、燃費面でも動力性能面でも「効率面では絶対過小」な660ccというエンジン排気量。が、少なくともひとり乗り状態でのテストドライブでは、あらかじめの想像と覚悟を上回る動力性能を示してくれた。
上級グレードにはCVTが用意され、テスト車(4AT)は燃費面ではそれにかなわない。とはいえ、4段ATはシフトプログラミングが適切で、加速フィール面ではCVT仕様に負けない印象だ。ちなみに、コラム脇のダッシュボードから短く生えたATセレクターは、ちょっと奇異な印象を受けるが、扱いやすい。
(乗り心地+ハンドリング)……★★
従来型に比べれば随分よくなった……というこの項目は、しかし客観的に評価をすれば「追い込み舵が効かない」「ピッチ・モーションは大きい」「トラクション能力が物足りない」……と課題はいまだ山積。ちなみに、舵の効きやトラクション能力の不足に関しては、「あまり高いGが発生する走りを可能にすると、転倒の危険性が高まるため」という意図的な理由もある模様。本来そんなモデルにこそ欲しいESCは設定もナシ。それどころか、廉価グレードではABSでさえもオプション扱いにしてしまうところに、日本の軽自動車界の「安全よりも価格重視」主義が象徴されている。
このあたりは、ユーザー側が賢くならないとなかなか改善されない。衝突してから効くのがエアバッグで、衝突前に効果を示すのがABSやESCだ!
(写真=荒川正幸)
【テストデータ】
報告者:河村康彦
テスト日:2008年3月4日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2008年型
テスト車の走行距離:2028km
タイヤ:(前)145/80R13(後)同じ
オプション装備:アジャスタブルパック(1万6750円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(7)
テスト距離:225km
使用燃料:16リッター
参考燃費:14.1km/リッター

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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