スバル・インプレッサS206 NBR CHALLENGE PACKAGE(4WD/6MT)【試乗記】
乗ってもプレミアム 2012.02.06 試乗記 スバル・インプレッサS206 NBR CHALLENGE PACKAGE(4WD/6MT)……596万4000円
スバルのモータースポーツ部門を担うSTIが手がけた、“チューンド・インプレッサ”「S206 NBR CHALLENGE PACKAGE」に試乗。その仕上がりを富士山ろくの道で吟味した。
人気も値段もハンパじゃない
発売は2011年11月24日。限定トータル300台の注文を2012年の春先まで受け付けるはずだったのに、あっというまに売り切れてしまったのが、「スバル・インプレッサWRX STI 4ドア」の特別仕様、「S206」だ。
とくに今回試乗した“大吟醸100台”の「S206 NBR CHALLENGE PACKAGE(ニュルブルクリンク・チャレンジ・パッケージ)」は、発売を知らせる11月24日付けのプレスリリースに早くも「受注が販売予定台数に達しました」と小さく書かれていた。なんだそりゃ。
ただ、関係者に聞いたところ、こういう場合は「とりあえず販売店が押さえた」というケースが多いので、必ずしもあきらめたものではないらしい。がんばってみてください。
そんなS206は言うまでもなく「WRX STI」の最高峰である。308psのノーマル2リッター水平対向4気筒ターボをさらに磨いて320psとしたほか、ビルシュタイン・ダンパーやSTI製コイルスプリング、BBSの19インチホイール、245/35の「ミシュラン・パイロットスポーツ」、レカロシート、空力パーツなど、S206の専用品、もしくは専用チューニングがふんだんに盛り込まれる。
さらにそれをベースにして、カーボンルーフ、ドライカーボン製リアウイングなどを装備したのが、2011年の「ニュルブルクリンク24時間耐久レース」クラス優勝を記念したNBR CHALLENGE PACKAGEである。ノーマルのWRX STIは373万8000円だが、S206は540万7500円。NBRは593万2500円になる。
品のある速さ
S206も、ラインオフするのはほかのWRX STIやインプレッサと同じく、群馬県太田市の矢島工場だが、試乗車は東京都三鷹市にあるSTI(スバル・テクニカ・インターナショナル)の所有。シフトレバーの近くに貼られたシリアルナンバーは「000/300」だった。「売り物の300台とは別枠のクルマですよ」という意味だろうか。
専用のレカロシートは、体の当たり面がソフトなアルカンターラで、そのほかはレザー。バケットタイプだが、もちろんリクライン調節は可能。シートリフターも付いている。
今のWRX STIは、ワイルドスピードな蛮カラさよりスムーズさのほうにむしろ感心させられる。新宿スバルビルの地下駐車場をスタートしたS206 NBRの第一印象もまさにそうだった。
STIが腕によりをかけた320psユニットは、当然のことながらパワフルだ。7000rpmを超すと、回転計の中で赤ランプが点滅し始める。さらに踏み続ければ8000rpmでリミッターが作動する。トップエンドの1000rpmはさすがにやや苦しげになるから、黄色ではなく赤点滅というのは正直なウォーニングだが、とにかく回るところまで回すと、6段MTの1速でも70km/h出る。その一方、低速トルクも十分だから、早め早めにシフトアップしていってもついてくるし、速い。しかし、速く走らせても荒っぽさはない。
乗り心地もいい。硬いことは硬いが、いかにも初期作動の滑らかな高級ダンパーらしく、いやなゴツゴツ感がない。ノーマルWRX STIよりさらに好戦的なサンゴーを履くことを思えばなおさらだ。三菱の「ランエボ」と熾烈(しれつ)な“インラン競争”を繰り広げていた昔と比べると、スバルのトップガンもつくづくプレミアムになったものだと思う。
見方によっちゃリーズナブル?
少なくともぼくのスピードでは、操縦性もひたすらスムーズである。コーナリング中、何をやっても許してくれる。掌(てのひら)の上で遊ばせていただいている感じだ。ただ、最近の高性能車の傾向からすると、パワステの重さがちょっと古臭い。もう少し軽くしたほうがクルマ全体のプレミアム感とも合う。
NBR特装品のカーボンルーフがどんな効果を上げているのかは、素のS206と乗り比べていないのでわからないが、屋根といういちばん高いところにある大きなパーツを軽くして悪かろうはずがない。東レと共同開発したこのカーボンルーフは、2011年1月に限定発売された「WRX STI tS」が初出だが、その試乗会でスチールルーフの「spec C」と比べた経験では、やはり明らかにクルマが低重心に感じられた。
そのとき、若いSTIのエンジニアと話していて、今のWRX STIのベンチマークが「BMW M3」だと聞いて驚いた。STIが持っている虎の子の実験車両も「M3」なのだそうだ。
でも、たしかにS206 NBRに乗っていると、このクルマの開発陣のアイドルがM3であることはうなずける。WRX STIがM3になっちゃうの!? とも思うが、造っている人がそれを目指しているのだから、仕方ない。目玉が飛び出るほど高い価格も、M3の半値と思えば、ぜんぜん高くないのだろうか。
(文=下野康史/写真=峰昌宏)
拡大
|
拡大
|
拡大
|
拡大
|

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
NEW
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
NEW
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。 -
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】
2026.1.17試乗記BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。 -
新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る
2026.1.16デイリーコラム英国のモーターサイクル史にあまたの逸話を残してきた名門、ノートンが、いよいよ再始動! その数奇な歴史を振り返るとともに、ミラノで発表された4台の次世代モデルを通して、彼らが思い描く未来像に迫った。






























