アウディR8(4WD/2ペダル6MT)【短評(前編)】
優しいけれど、易しくない(前編) 2007.10.04 試乗記 アウディR8(4WD/2ペダル6MT)……1670.0万円
ルマン24時間レースの栄光を背負って、市販版アウディR8がリリースされた。フォーリングズ初のロードゴーイング・ミドシップはどうなのか? ツインリンクもてぎで乗った。
レースフィールドから
ルマン24時間レースの栄光でブランドイメージを上げたい、市販モデルに反映したい、ひいては販売につなげたい……、そうしたアウディの執念が感じられるミドシップスポーツ「R8」。サイドフォルムにレースカーのR8を溶け込ませた少々おどろおどろしい姿のニューマシンは、マーケットにおいては「ポルシェ911」への数多い挑戦者のひとりである。
アウディ傘下のランボルギーニが、V10を積む「ガヤルド」でフェラーリのV8モデルに挑んだのと同様、2気筒多いV8でフラット6の911に挑戦する。スポーツカーとして“正しい位置”に搭載された4.2リッターと最近のルマン5勝が大きな武器となる。マイナス面は、リアシートがないこと。
「アウディR8」が1670.0万円。
「ポルシェ911GT3」が1598.0万円。
「911ターボ」は1858.0万円。
アウディはフォルクスワーゲングループの一員で、いまやポルシェはVWの大株主だから、株主にとっては親戚争い(?)のようなものだが、世のクルマ好きにとって、興味つきないニューモデルの登場はうれしいかぎりだ。
アウディ初の市販ミドシップのボディサイズは、全長×全幅×全高=4435×1905×1250mm。911ターボより15mm短く、55mm幅広く、50mm低いアグレッシブなフォルムを採る。ミドエンジンらしく、ホイールベースは911より300mmも長い2650mm。ガヤルドのそれの90mm増しだ。前/後=1635/1595mmと広いトレッドが印象的。いかにも新しい世代の、レースフィールドからやってきたマシンである。
R8の日常性
アウディR8のボディには、サルトサーキットでの汗と涙と、従姉妹たるガヤルドで培った経験が活かされる。1983年から研究が本格スタートし、94年にフラッグシップ「A8」で陽の目を見た「ASF(アウディ・スペースフレーム)」。アルミの押し出し材とダイキャストで骨格を形成し、各種アルミパネルで外皮をつくる。
最新版ASFたるR8の骨格部、ボディシェルのウェイトは210kgしかない。ただし、完成車としての車重は、この手のスーパースポーツとして標準的な1630kgにとどまる。グラム単位で軽量化に努めるエンジニアの苦労とはうらはらに、豪華なスポーツカーを欲する顧客は快適装備を諦めたりしないからだ。
「ぜひ日常的に使ってもらいたい」とプレスコンファレンスで紹介されたR8。電動ミラー、電動ウィンドウ、フルオートエアコン、ナビゲーションシステム、7スピーカーのオーディオなどを当たり前に備える。テスト車はオプションの本革仕様(標準はレザー+アルカンタラ)が奢られる。ステアリングホイールの位置は、左のみ。
低い着座位置にペタンと座ると、アウディらしくよく整理されたメーター、スイッチ類が並ぶ。スペシャル感をあえて抑えたのだろう、アウディ車のオーナーなら“見慣れた風景”と感じるかもしれない。それでも、凝ったアルミのシフトノブが誇らしい。
振り返ると、エンジンルームとキャビンを分かつバルクヘッドが屹立し、背後に迫るのがいかにもミドシップカー。一方、横方向の余裕は十分で、居住性においてドライバーはなんら我慢を強いられることがない。
「ネッカーズルムからのモンスター!」と無用に意気込んで試乗会に臨んだリポーターは、やや拍子抜け。サンバイザーの裏にはメイクアップミラーまで備わるが、助手席または運転席に座るご婦人は、汗で落ちるマスカラを気にする必要はなさそうだ。
R8の駆動システム
R8のV8エンジンは、ハッチゲートのガラス越しに鑑賞できる。ハッチを開けて眺めると、意外とコンパクトかつずいぶん“沈めて”搭載されているのがわかる。
4.2リッターの排気量、84.5×92.8mmのボア×ストロークから、420ps/7800rpmの最高出力と43.8kgm/4500-6000rpmの最大トルクを発生する。RS4由来の直噴ユニットながら、低重心化と激しい横Gに備えるため、ドライサンプ化された。
エンジンをかけると、スバル車のようにメーター類の針が一度右にふられてから、左端に戻る。ただしエンジンそのものは特に演出なく、スムーズにアイドリングを始めた。
組み合わされるトランスミッションは、2ペダル式の6段MT「Rトロニック」。レースカーは2輪駆動だが、クワトロを旗印にしているアウディだけに、市販モデルのR8にはもちろん4WDが採用された。ガヤルドでお馴染み、最後端に位置するギアボックスからエンジンブロック右側を通って斜めにフロントに向かうプロペラシャフトで、駆動力を前に伝えるドライブトレイン。前後の差動はフロントデフ直前のビスカスカプリングで吸収される。
走りはじめは、やや唐突にクラッチがつながる。軽いショックあり。オートマチックモードではシフトそのものは速いけれど、やはりクラッチが切れる瞬間に多少だが頭部が前後にふれる。
ステアリングは軽く、ピットロードへ向かう途中でクルクル回すと、ロック・トゥ・ロックは3回転余。5.9mと大きめの回転半径は、ミドシップ車の宿命「後方確認のしにくさ」と併せ、フォーリングズの推奨する“日常使い”に課題を残す……、なんちゃって。(後編へつづく)
(文=webCGアオキ/写真=高橋信宏、アウディ・ジャパン)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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