スバル・インプレッサS-GT(4WD/5MT)【ブリーフテスト】
スバル・インプレッサS-GT(4WD/5MT) 2007.09.03 試乗記 ……292万9500円円総合評価……★★★
フルモデルチェンジによってハッチバックのみのラインナップに変化した「スバル・インプレッサ」。WRXモデルが予期されるなか、現状の最速モデル「S-GT」に試乗した。
難しいポジション
フルモデルチェンジからしばらくの間、トップモデルとしての役割を担う「スバル・インプレッサS-GT」。それは、さらにスポーティなSTI版がそう遠くない将来に登場することを意味し、それが公然の秘密なのだから、インプレッサS-GTのポジションはなんとも微妙である。
そんなS-GTを試乗すると、スポーティさを程よく抑えた性格が意外に快適で、日常の足として使うには適している。一方、最高出力は250psとはいえ、実用十分すぎるパワーを誇るエンジンに対して、サスペンションの味付けは中途半端な印象を受ける。難しいポジションにあるとはいえ、もう少しはっきりした性格を与えたほうが、買う側にはわかりやすいと思うのだが。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2007年6月5日に7年ぶりのフルモデルチェンジを果たした「スバル・インプレッサ」。3代目の新型は、日本では5ドアハッチバックのみ。
先代の「インプレッサ・スポーツワゴン(1.5R)」に比べて全長が50mm短くなる一方、ホイールベースは95mm延長された。「ボディサイズをむやみに拡大することなく、十分な室内空間を確保した」と主張する。車幅は45mmワイドになり、「3ナンバー」化。高さは5mmアップした。
ラインナップは、1.5リッター(110ps/14.7kgm)の「15S」と2リッターNA(140ps/19.0kgm)の「20S」、同ターボ(250ps/34.0kgm)の「S-GT」3種類。
組み合わされるトランスミッションは「20S」が4段ATのみで、ほかは5段MTと4段ATが選べる。駆動方式は、基本的に4WD。「15S」のみFFも用意される。
(グレード概要)
トップモデルの「S-GT」に搭載される2リッターDOHCターボエンジンは、250ps/6000rpm、34.0kgm/2400rpmを発生する。トランスミッションは、5段MTのほか4段ATも組み合わされる。
ターボモデルには、レッドルミネセントメーターや、HIDプロジェクターロービームランプ、テレスコピックステアリング、クルーズコントロール、盗難防止のイモビライザーなどが標準装備される。足まわりは、標準で16インチタイヤ&アルミホイールを設定。テスト車には、オプションで17インチアルミホイール&タイヤが装着される。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
黒を基調としたインテリアは、他のグレードに用意されるベージュ/黒のツートーンに比べると落ち着いていてスポーティ。ダッシュボードの質感はさほど高くないものの、明るい配色の場合に比べると目立たないというメリットもある。
メーターはS-GT専用のもので、中央が大きな回転計になり、また、ライトを点灯しているかどうかにかかわらず、レッドに灯るイルミネーションがスポーティさを演出している。
(前席)……★★★★
メーカーオプションのスポーツパッケージを選んだ試乗車には、ブラックとグレーのバケットタイプシートが装着されていた。背中や尻があたるグレーの部分は、ざっくりとしたファブリックになるが、生地自体に硬さはなく、かわりにその奥の低反発ウレタンが身体をじんわりと支えてくれるので、快適な座り心地だ。張り出したサイドサポートはそれなりに硬いが窮屈さはなく、サポート自体も適度だ。
(後席)……★★★
前席同様、低反発タイプのウレタンを用いたことにより、身体全体を面で支える感じが心地よい。足元、頭上のスペースは十分で、乗り心地についても、スポーティなモデルにもかかわらず、直接的なショックが伝わることなく、後席で過ごすのも苦にならない。標準で中央席にヘッドレストや3点式シートベルトが備わらないのは残念。
(荷室)……★★★
リヤシートを起こした状態で約75cmという奥行きは、旧「インプレッサ・スポーツワゴン」に比べて15cmほど短いが、そもそもこのスポーツワゴンは荷室と敷居に段差があるなど、ハッチバック的なクルマだったから、使い勝手に関しては新型がとくに不便という感じはなかった。リヤシートを倒せば、奥行き140cmを越えるフラットなフロアが現れる。トノカバーはオプションで用意されるが、このくらいの装備は標準にしてほしい。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
ボトムエンドのトルクが細く、発進時はすこし回転を上げるようにしてクラッチを繋いでやる必要があるものの、走り出してしまえば低回転域でも必要十分なトルクを発揮。ターボラグも気にならないから、街なかでも扱いやすい。しかし、本領を発揮するのは3000rpmを越えたあたりからで、アクセルペダルを大きく踏み込むと、水平対向エンジンらしいシャーという音を響かせながら力強い加速を見せてくれる。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
スポーツパッケージ装着車では205/50R17サイズのタイヤが付いてくるが、街なかの乗り心地があまりにも快適なことにまず驚く。マンホールを通過するような場合でもショックは軽く、角の取れた乗り心地は、家族を乗せても文句は出ないだろう。
高速道路でも乗り心地は良好だが、フラット感は不足気味。ハンドリングは旧型ほど鋭くはないが、軽快にノーズの向きを変え、リヤの落ち着きが増した走りは万人向けといえる。ただ、ハイパワーなわりにソフトな味付けなので、飛ばすには物足りず、個人的にはもう少しハードなセッティングのほうが好ましいと思った。
(写真=小林俊樹)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2007年7月12日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2007年型
テスト車の走行距離:--
タイヤ:(前)205/50R17(後)同じ(いずれも、ヨコハマタイヤ アドバン A10)
オプション装備:スポーツパッケージ+CパッケージII+VDC(43万500円)/ライトニングレッド(3万1500円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(7):山岳路(1)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
メルセデス・ベンツGLE450d 4MATICスポーツ コア(ISG)(4WD/9AT)【試乗記】 2025.10.1 「メルセデス・ベンツGLE」の3リッターディーゼルモデルに、仕様を吟味して価格を抑えた新グレード「GLE450d 4MATICスポーツ コア」が登場。お値段1379万円の“お値打ち仕様”に納得感はあるか? 実車に触れ、他のグレードと比較して考えた。
-
MINIカントリーマンD(FF/7AT)【試乗記】 2025.9.30 大きなボディーと伝統の名称復活に違和感を覚えつつも、モダンで機能的なファミリーカーとしてみればその実力は申し分ない「MINIカントリーマン」。ラインナップでひときわ注目されるディーゼルエンジン搭載モデルに試乗し、人気の秘密を探った。
-
BMW 220dグランクーペMスポーツ(FF/7AT)【試乗記】 2025.9.29 「BMW 2シリーズ グランクーペ」がフルモデルチェンジ。新型を端的に表現するならば「正常進化」がふさわしい。絶妙なボディーサイズはそのままに、最新の装備類によって機能面では大幅なステップアップを果たしている。2リッターディーゼルモデルを試す。
-
ビモータKB4RC(6MT)【レビュー】 2025.9.27 イタリアに居を構えるハンドメイドのバイクメーカー、ビモータ。彼らの手になるネイキッドスポーツが「KB4RC」だ。ミドル級の軽量コンパクトな車体に、リッタークラスのエンジンを積んだ一台は、刺激的な走りと独創の美を併せ持つマシンに仕上がっていた。
-
アウディRS e-tron GTパフォーマンス(4WD)【試乗記】 2025.9.26 大幅な改良を受けた「アウディe-tron GT」のなかでも、とくに高い性能を誇る「RS e-tron GTパフォーマンス」に試乗。アウディとポルシェの合作であるハイパフォーマンスな電気自動車は、さらにアグレッシブに、かつ洗練されたモデルに進化していた。
-
NEW
BMW R12 G/S GSスポーツ(6MT)【試乗記】
2025.10.4試乗記ビッグオフのパイオニアであるBMWが世に問うた、フラットツインの新型オフローダー「R12 G/S」。ファンを泣かせるレトロデザインで話題を集める一台だが、いざ走らせれば、オンロードで爽快で、オフロードでは最高に楽しいマシンに仕上がっていた。 -
第848回:全国を巡回中のピンクの「ジープ・ラングラー」 茨城県つくば市でその姿を見た
2025.10.3エディターから一言頭上にアヒルを載せたピンクの「ジープ・ラングラー」が全国を巡る「ピンクラングラーキャラバン 見て、走って、体感しよう!」が2025年12月24日まで開催されている。茨城県つくば市のディーラーにやってきたときの模様をリポートする。 -
ブリヂストンの交通安全啓発イベント「ファミリー交通安全パーク」の会場から
2025.10.3画像・写真ブリヂストンが2025年9月27日、千葉県内のショッピングモールで、交通安全を啓発するイベント「ファミリー交通安全パーク」を開催した。多様な催しでオープン直後からにぎわいをみせた、同イベントの様子を写真で紹介する。 -
「eビターラ」の発表会で技術統括を直撃! スズキが考えるSDVの機能と未来
2025.10.3デイリーコラムスズキ初の量産電気自動車で、SDVの第1号でもある「eビターラ」がいよいよ登場。彼らは、アフォーダブルで「ちょうどいい」ことを是とする「SDVライト」で、どんな機能を実現しようとしているのか? 発表会の会場で、加藤勝弘技術統括に話を聞いた。 -
第847回:走りにも妥協なし ミシュランのオールシーズンタイヤ「クロスクライメート3」を試す
2025.10.3エディターから一言2025年9月に登場したミシュランのオールシーズンタイヤ「クロスクライメート3」と「クロスクライメート3スポーツ」。本格的なウインターシーズンを前に、ウエット路面や雪道での走行性能を引き上げたという全天候型タイヤの実力をクローズドコースで試した。 -
思考するドライバー 山野哲也の“目”――スバル・クロストレック プレミアムS:HEV EX編
2025.10.2webCG Movies山野哲也が今回試乗したのは「スバル・クロストレック プレミアムS:HEV EX」。ブランド初となるフルハイブリッド搭載モデルの走りを、スバルをよく知るレーシングドライバーはどう評価するのか?