「第4回アメリカン・ヒストリックカーショー&チャリティーオークション」の会場から(前編)
2014.11.21 画像・写真2014年11月16日、山梨県富士吉田市の富士Calm(カーム)で「第4回アメリカン・ヒストリックカーショー&チャリティーオークション」が開かれた。「(カスタム系ではない)普通のアメリカ車に乗る、普通の人が気軽に参加できるイベント」をコンセプトに、4年前から始まったこのイベント。参加資格は1990年型以前のアメリカ車および同型車、そしてアメリカ製エンジンを搭載した車両で、富士山を見上げる広大な芝生広場におよそ170台が集まった。参加車両は60~70年代のモデルが中心で、日本でも比較的ポピュラーないわゆるマッスルカーから、セダン、ワゴン、バンやSUVまでバラエティーに富んでいる。中でも今回は2014年に生誕50周年を迎えた「フォード・マスタング」や「シボレー・シェベル」などがフィーチャーされていた。また、イベント名に冠しているとおり、初回からの恒例となっているチャリティーオークションも実施された。これは参加者が持ち寄ったグッズの、オークションによる売上金を、東日本大震災の影響で行き場がなくなってしまったペットの犬と猫を保護している団体へ寄付するというものである。好天に恵まれ、アメリカ車とその愛好家が醸し出すおおらかな雰囲気に包まれていた会場から、印象に残ったモデルを紹介しよう。(文と写真=沼田 亨)

富士山が見下ろす会場に集まったアメリカ車は、全部でおよそ170台。
-
富士山が見下ろす会場に集まったアメリカ車は、全部でおよそ170台。
-
1964年に初代モデルがデビュー、今年生誕50周年を迎えた「フォード・マスタング」。これはオプションのGTパッケージを装着した初期型となる65年「コンバーチブル」。
-
「コブラ」の生みの親として知られるキャロル・シェルビーが、初代「マスタング」をハイパフォーマンスモデルに仕立て直した1966年「シェルビーGT350」。289立方インチ(4.7リッター)のV8エンジンやサスペンションはもちろん、後席が取り払われるなど内外装にも手が入れられている。
-
1964年「フォード・ファルコン・スプリント」。初代「マスタング」のベースとなったフォード初のコンパクトカーがファルコン。この個体は2ドアハードトップボディーに289(4.7リッター)のV8を積んだ高性能仕様。モール類を外すなどしてコンペティションムードを盛り上げている。
-
1976年「フォード・マスタングIIギア」。コンパクトカーとして生まれたが、マッスルカーのブームに乗ってどんどん大型高性能化したマスタング。73年に登場した2代目となるマスタングIIは、コンパクトよりさらに小さいサブコンパクトまで一気にダウンサイジングされた。フォードが傘下におさめた、イタリアの名門カロッツェリアであるギアの名を冠したこれは豪華仕様で、ボディーは全長4.5m未満だが、エンジンはオプションの302(4.9リッター)V8を積む。
-
シボレー初のインターミディエート(コンパクトとフルサイズの中間サイズ)である「シボレー・シェベル」もちょうど半世紀前の1964年に誕生した。これはシェベルをベースにしたピックアップである64年「エルカミーノ」。エルカミーノはそれまでフルサイズをベースにしていたが、この年からインターミディエートに切り替わったのだ。
-
1967年「シボレー・シェベル・ハードトップ」。普及ブランドであるシボレーの、当時の日本でいえば「コロナ」や「ブルーバード」に相当する中間サイズとはいうものの、ボディーは全長5m以上、全幅1.9m以上あり、今日の「キャデラックCTS」より大きい。
-
1970年「シボレー・シェベルSS396」。マッスルカーブームに乗って66年に登場した高性能グレードがSS396で、その名のとおり396(6.5リッター)のビッグブロックV8を積んだスーパースポーツ版である。
-
1970年「シボレー・エルカミーノSS396」。ピックアップのエルカミーノにもSS396の設定があった。なおエルカミーノは87年で生産終了、乗用車ベースのピックアップはアメリカでは消滅したが、その影響を受けたオーストラリアではいまだに健在で、GM傘下のホールデン、フォードの双方がラインナップしている。
-
1965年「プリマス・バラクーダ」。GMのシボレーに相当するクライスラーの普及ブランドだったプリマス。バラクーダはマッスルカーとして知られるが、これまた50年をさかのぼる64年に登場した初代モデルは、コンパクトセダンのバリアントから派生したファストバッククーペだった。グラスバックと呼ばれる大きなリアウィンドウが特徴である。
-
1961年「ダッジ・ランサー・ハードトップ」。クライスラー初のコンパクトカーとして60年に登場した「バリアント」(61年から「プリマス・バリアント」を名乗る)のダッジ版。マスクは端正だが、当時のクライスラー系に共通するフロント、リア双方のフェンダーにフィンのような張り出しを持つスタイルは、かなりアクが強い。
-
後方から眺めると、さらに不思議な印象が増す1961年「ダッジ・ランサー・ハードトップ」。なおランサーは61、62年の2年間しか作られなかった短命モデルであり、日本では相当希少な存在だ。
-
2台並んだ1968年「ダッジ・ダートGT」。ダートは60年にやや小さめのフルサイズとして生まれたが、世代交代のたびにダウンサイジングされてコンパクトカーとなった。もっともコンパクトといえども、全長は5mに迫るのだが。同じダッジのコンパクトながら、前出の「ランサー」とは打って変わってクリーンなスタイリングになっている。
-
1965年「プリマス・ベルベディア・サテライト」。ベルベディアもフルサイズからインターミディエートに小型化されたモデル。7リッターV8も搭載可能でマッスルカーとしても人気を博し、ドラッグレースやストックカーレースでも活躍した。
-
1969年「プリマス・ロードランナー」。インターミディエートの「ベルベディア」をスープアップした、人気の高いマッスルカー。ロードランナーとはアメリカ中南部の砂漠地帯に生息する足の速い鳥(オオミチバシリ)だが、プリマスはそれをキャラクター化した人気アニメとタイアップ。マスコットに据え(写真上方はドアに描かれたキャラクター)、鳴き声をホーンに採用するなどのコラボレーションを行った。エンジンは383(6.3リッター)のV8が標準で、オプションで426ヘミ(7リッター)も搭載可能だった。
-
1970年「プリマス・スーパーバード」。前出のロードランナーにFRP製のノーズコーンと巨大なアルミ製リアウイングを装着したNASCAR(ストックカーレース)用のホモロゲーションモデル。1年間に2000台弱しか作られなかった、マニア垂涎(すいぜん)の希少車である。
-
支柱にロードランナーが描かれた巨大なウイングがそびえ立つ「プリマス・スーパーバード」のリアビュー。兄弟車として「ダッジ・チャージャー・デイトナ」が存在した。
-
「プリマス・スーパーバード」のエンジン。3種類用意されていたうち、もっとも強力な426ヘミ(7リッター)で、最高出力は425ps(SAEグロス、ネットでは350ps)。クライスラーの高性能エンジンの代名詞ともなったヘミとは、hemispherical(半球の)の略。シリンダーヘッドの、OHVながらクロスフローのバルブ配置を持つ燃焼室が半球形であることに由来している。ちなみに日本で最初にヘミヘッドを採用したのは、マッスルカーとは正反対の360cc軽である初代「マツダ・キャロル」だった。
-
1970年「ダッジ・チャレンジャー R/T」。この年にデビューしたチャレンジャーは、同時に世代交代した「プリマス・バラクーダ」の兄弟車種。この個体は復活した現行チャレンジャーにも設定されている高性能グレードのR/Tで、グロス390psを誇る440シックスパック(7.2リッター)を搭載。前述したスペシャルな426ヘミ搭載モデルを除けば最強バージョンである。
-
1970年「プリマス・クーダ」。前出の「ダッジ・チャレンジャー」の兄弟車である「プリマス・バラクーダ」のハイパフォーマンス版がクーダ。この個体も440シックスパック(7.2リッター)を積んだマッスルカーである。