モーターサイクルショー「EICMA 2022」の会場から
2022.11.24 画像・写真2022年11月8日~13日にかけて、伊ミラノで「EICMA(ミラノショー)」が開催された。
EICMAは独ケルンで開催される「インターモト」と並ぶ世界最大規模のモーターサイクルショーである。日本からもホンダ、ヤマハ、カワサキ、スズキの4大二輪メーカーが参加するほか、日立アステモなどのサプライヤーやアパレルブランド、用品メーカーなども出展。欧米の二輪メーカーではBMWとKTMグループが不参加となったが、現地のドゥカティやアメリカのインディアンが復帰し、会場は盛り上がりをみせた。
日本への導入が期待されるニューモデルを含め、EICMAにおける注目の展示を写真で紹介する。
(文と写真=河野正士)
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1/27ホンダは新規開発したフレームに、同じく新規開発した排気量775ccの並列2気筒OHCエンジンを搭載したミドルクラスのアドベンチャーモデル「XL750トランザルプ」を発表した。トランザルプは、1980年代後半にデビューしたホンダ初のアドベンチャーモデル。グローバルに人気を集め、モデルチェンジを繰り返しながら欧州では2010年代前半まで発売されていた。欧州アドベンチャーモデルカテゴリーの主戦場が、近年ではアンダー1000ccモデルへと移行していることから、ホンダはそこで戦うための新プラットフォームを投入したというわけだ。このエンジンとフレームは、2022年10月に独インターモトで発表されたスポーツネイキッドモデル「CB750ホーネット」と共通。ホンダはこれまでも共通プラットフォームでマルチモデルの展開を行い、成功を収めている。ここでもその方程式を採用した格好だ。新型トランザルプは、フロント21インチ/リア18インチというオフロードでの走破性を重視した足まわりをセット。そのことからも、そのモデルのキャラクターを想像することができる。
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2/272022年10月にドイツ・ケルンで開催されたモーターサイクルショー「INTERMOT(インターモト)」で発表された「ホンダCB750ホーネット」。ホーネットは1990年代後半に登場したホンダのネイキッドモデル。並列4気筒エンジンにアップマフラー、極太のリアタイヤを採用し、それまでオーセンティックなスタイルが主流だったネイキッドカテゴリーに、過激なパフォーマンスとスタイルを持つ“パフォーマンス・ネイキッド”的なイメージを持ち込み、欧州や日本で人気を博した。ケルンで発表された新型ホーネットは、そのパフォーマンス・ネイキッドから進化した“ストリートファイター”的なスタイルを採用しつつ、エンジンには新開発の排気量775cc並列2気筒OHCを搭載している。アドベンチャーカテゴリー同様、欧州ではスポーツネイキッドでもアンダー1000ccの、しかも2気筒モデルの人気が高いことから、その市場でのシェアを拡大するべく開発されたと考えられる。発表前のティザー動画では、270°クランクのエンジンが高回転で回る排気音がフォーカスされていたことから、4気筒から2気筒へと気筒数が減ったとしても、スポーティーなパフォーマンスが期待できそうだ。
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3/27そのウワサを聞いたときはちょっと信じられなかったが、EICMAで発表された「ホンダCL500」は、想像していたよりずっとスクランブラーだった。信じられなかった理由は、このCLがボバースタイルのクルーザーモデル「レブル500」のプラットフォームを使用していることだ。スタンダードなネイキッドモデルをベースに、車高を上げたり下げたりしてバリエーションモデルを構築していくのであれば理解できる。しかし、後ろ下がりのクルーザーモデルをベースに、スッと車高を上げて、オフロードもオンロードも軽やかに駆けるスクランブラーをつくるのは容易ではない。しかし、実車を見る限りそれができていた。前後16インチの極太タイヤを履いたレブルから、フロント19インチ/リア17インチへとホイール系を変更。あわせてサスペンションも“足長”なものとし、車体姿勢をスクランブラー的に仕上げている。加えて、後ろ下がりのフレームラインにあわせた燃料タンクもその形状を変更。トレリスフレームのボトムラインと燃料タンクのボトムライン、そしてシートレールのラインを直線的にデザインすることで、スクランブラーモデルらしい水平基調のデザインがつくり上げられている。写真で見るとポッテリとしたサイレンサーのせいで鈍重に見えるが、実車はスリムで爽やかに仕上げられている。
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4/27ホンダは、二輪車を含むさまざまなアイテムに使用できる脱着式バッテリーパック「ホンダモバイルパワーパックe」を搭載した電動バイク「EM1 e:」を発表した。2023年に欧州で市場投入する。シート下にホンダモバイルパワーパックeを1個搭載し、リアのインホイールモーターで走行する。最高速は45km/hで、航続距離は40km(WMTCモード)だ。この数字だけを見ると物足りないが、これは欧州市場にあわせてパフォーマンスが設定されていると考えられる。現在欧州では電動キックボードやE-Bike(電動アシスト自転車)を含めた電動モビリティーがシェアを拡大しており、そのパワーや最高速度、アシスト割合によって、免許制度や車両登録制度が細かく分類されているのだ。そのなかにあって、かつて“モペット”と呼ばれたエンジン付き自転車のように、気軽に乗れる電動モビリティーが再注目されている。125ccスクーターが主流となったことや、若者のバイク離れなどによって、現状、その位置にある50ccの二輪車カテゴリーは規模を大きく縮小している。しかし、ここにきて多様な電動モビリティーが市場に投入されたことで、都市部を中心とした短距離の移動手段として、このカテゴリーに再びスポットライトが当たったというわけだ。国内におけるホンダモバイルパワーパックeを使用した二輪車は、一般消費者向けではなく、企業などへのリースが行われているのみだ。このEM1 e:の欧州市場投入は、反響次第ではホンダの国内における電動モビリティーの販売にも変化をもたらすかもしれない。
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5/272021年モデルでフルモデルチェンジを果たした「ヤマハ・トレーサー9」シリーズ。プラットフォームを共有するネイキッドモデル「MT-09」も同タイミングでフルモデルチェンジを受けたが、アップグレードした各所は主にトレーサー9のためだったと言っても過言ではないほど。それほど欧州ではトレーサー9は高い人気を博しており、いま各社が参入しているアンダー1000ccのアドベンチャーカテゴリーは、このモデルが開拓したといえるほどだ。そしてヤマハは2023年モデルで、このトレーサーをさらにアップグレード。同社として初めて前方レーダーを搭載した「トレーサー9 GT+」を発表した。これにより、前走車との距離を測りつつ設定した速度を上限に自動で加減速を行うACC(アクティブクルーズコントロール)機能を実現。衝突を防ぐためのブレーキアシストも行うという。また7インチの大画面ディスプレイや、より進化したクイックシフターなども装備。スマートフォンとの連携機能も強化し、ツーリングにおける安全性と快適性を大きく進化させている。
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6/27フロントの2輪が独立したサスペンションを持ち、両輪がリンクして左右に傾くLMW(リーニングマルチホイール)を持つことで、二輪車と変わらぬ操作性と高い走行安定性を実現する「ヤマハ・ナイケン」。欧州で人気の自転車レースにおいて、カメラバイクやサポートバイクとしても使用されている。2018年のデビュー後、2019年にはサイドパニアを純正採用した「ナイケンGT」を発売。今回のEICMAで発表されたのは、そのナイケンGTのマイナーチェンジモデルだ。エンジンには先に「MT-09」や「トレーサー9 GT」に採用された、排気量890ccの並列3気筒を搭載。そのエンジンをベースに、クランクを重くするなどしてより力強く、そして滑らかな出力特性を目指してアップデートが行われている。インターフェイスには、7インチの大型フルカラーディスプレイを搭載。上下7cmの範囲で調整可能なアジャスタブルスクリーンは、片手で簡単に操作できるよう工夫されている。これらの改良に伴い、外観こそ大きな変化はないが、ダッシュボードまわりの設計も大きく変更された。
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7/27欧州のビッグスクーターカテゴリーで絶大な人気を誇る「ヤマハXMAX300(エックスマックス)」がモデルチェンジ。同時に、より豪華な装備を採用した「ヤマハXMAX300 Tech MAX(テックマックス)」も発表した。XMAXは、深くシートに腰掛けリラックスして乗るビッグスクーターとは違い、トップブリッジとアンダーブラケットでフロントフォークを支持するバイク型のフロントサスペンションや軽量コンパクトなボディーで、キビキビとしたスポーティーな走りが楽しめるビッグスクーターだ。そのXMAX300は、プラットフォームはそのままにスタイリングや操作系を一新した。より精悍(せいかん)なデザインのフロントマスクとテールまわりを新たに採用。Tech MAXはナビ機能やスマートフォンとの連携を強めた4.2インチのフルカラーディスプレイと3.2インチのLCDスピードメーターという、2画面のコックピットデザインを採用した。(スタンダードモデルは4.3インチLCDパネルのみ)。またTech MAXは新デザインのアルミ製フットプレートも装備している。
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8/27スズキは、アドベンチャーモデルファミリーの「Vストローム」に、新設計の排気量776cc並列2気筒エンジンと、同じく新設計フレームを採用した新型車「Vストローム800DE」を加えた。これでVストロームファミリーは、複数の排気量バリエーションとともに、単気筒、V型2気筒、並列2気筒と異なるエンジン形式を持つビッグファミリーへと成長したこととなる。欧州のアドベンチャーモデル人気は相変わらずで、特にアンダー1000ccクラスの人気は絶大だ。そこに欧州ブランド、日本ブランド、中国ブランドが加わり、し烈なシェア争いを繰り広げている。そのなかでスズキは「Vストローム650」を有していたが、ここにきて新エンジン、新プラットフォームのマシンでライバルたちに立ち向かい、シェア拡大を目指すというわけだ。新型エンジンは、270°クランクを持ち、またクランクを挟むように2軸バランサーを採用。2気筒らしい鼓動感と路面としっかりとつかむトラクション感を実現しながら、振動の少ないスムーズな加速も意図したもののようだ。フロントに21インチホイールを装着していることからも、オフロード走行を想定したパフォーマンスが与えられているのだろう。
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9/27先述の「スズキVストローム800DE」とエンジン/フレームという車体の基本骨格を共有し、それをもとにスポーツネイキッドに仕立てのが、この「GSX-8S」だ。スズキはこれまでに排気量1000ccおよび950ccの並列4気筒エンジンを搭載したモデルのほか、650ccのV型2気筒エンジンを搭載した「SV」シリーズをスポーツネイキッドカテゴリーに投入している。しかし、多くのライバルが軽量スリムな並列2気筒エンジンを新しいプラットフォームに搭載し、電子制御技術を駆使しながらスポーティーかつフレンドリーなキャラクターを実現。さらに厳しい排ガス規制に対応している。スズキはGSX-8Sを市場投入することで、そうしたランバルたちに挑むこととなる。GSX-8Sは、サイドシルエットこそエッジの効いたスラントノーズや跳ね上がったリアカウルで過激に見えるが、実物はボディーのエッジが抑えられ、面の構成も滑らかだ。兄弟モデルである「GSX-S1000/950」のキレキレでカクカクのボディーデザインとは一線を画している。燃料タンクをブラックアウトし、色のついた外装類を小さくデザインすることでコンパクトボディーをアピールしているが、実物もまたコンパクトで、それだけでもユーザーフレンドリーであるといえるだろう。
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10/27カワサキはプレスカンファレンスのほとんどの時間を使って、「Go with Green Power」の新しいスローガンとともに、カーボンニュートラルの実現に向けた方針とその象徴となるシンボルマークを発表。そして電動バイク(EVバイク)およびハイブリッドバイク(HEVバイク)のコンセプトモデルと、水素エンジンを紹介した。これらのうち、2台のEVバイクはネイキッドタイプが「Z」、フルカウルタイプが「Ninja(ニンジャ)」と名づけられており、ともに2023年の市販化を目指した生産試作に近い車両であるという。またHEVバイクも2024年の市販化を目指しているとのことだった。現在、四輪を含めた多数のメーカーがコンソーシアムを組む水素エンジンの開発においても、カワサキは2030年の実用化を目指すとした。カワサキがEICMAでこれらの発表を行った理由は、バイクにおけるカーボンニュートラル実現において、あらゆる選択肢があることを強くアピールするためだ。いまや四輪の世界でも、BEV(バッテリーのみで走る電動車)一択ではなくなってきた。そこにおいて二輪の世界では、BEV以外のアプローチはほとんど見ることができない。それはHEVや水素エンジンは複雑で大がかりなシステムを必要とするため、二輪車には搭載できない、という見解が一般的だからだ。だからこそカワサキは、それを打破するため、自ら期日をもうけて市販化や実用化を口にしたのだろう。これらの発表が二輪のカーボンニュートラルに向けた動きに、どのような影響を及ぼすのか。この先が楽しみだ。
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11/27ロイヤルエンフィールドは、親会社であるインドトラック大手アイシャー・モーターズの会長であるシッダールタ・ルイ氏や、ロイヤルエンフィールドCEOのB・ゴビンダラジャン氏、それに車両開発部門やデザイン部門のトップなど、首脳陣が勢ぞろいしてプレスカンファレンスを開催。そこで発表されたのが「スーパーメテオ650」だ。日本ですでに発売されているスモールクルーザー「メテオ350」の兄弟モデルといえるそのマシンは、「INT650」や「コンチネンタルGT650」と同じく、排気量650ccの空冷OHC並列2気筒エンジンを搭載したクルーザーモデルだ。昨年のEICMAでカスタムコンセプトモデルとして発表された「SG650」は、まさにこのスーパーメテオ650を示唆したもので、実に1年もの歳月をかけてじっくりとプロモーションを仕掛けてきたことになる。フレームは新規に製作。エンジンは兄弟モデルと同じだが、車体にあわせて吸排気系がアレンジされているほか、新フレームにあわせてエンジンマウント位置も変更されている。開発陣に話を聞くと、街なかからワインディングまでをキビキビと走るアクティブクルーザー的キャラクターに仕上げているという。
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12/27トライアンフは、EICMAの1週間前にスペイン・バレンシアで開催されたMotoGP最終戦においてお披露目した、新型「ストリートトリプル765」シリーズを出展。ここで紹介するのは、その最高峰モデルである「トライアンフ・ストリートトリプル765RS Moto2エディション」だ。単一エンジンで行われるMotoGPロードレース世界選手権Moto2クラスにエンジンを供給するトライアンフは、そこで培った技術や経験を生かして最高出力や最大トルクを向上。駆動系の変更とも相まって、加速性能を向上させている。またコーナリングABSをアップグレードしたほか、切り替え可能なトラクションコントロールシステムを新たに搭載するなど、電子制御デバイスも充実させている。デザイン面では、大型2眼ヘッドライトのネイキッドスタイルというストリートトリプル伝統のフロントフェイスは継承しつつ、ウイングレットのようなラジエーターカバーを採用するなどして、レーシングマシンの最新トレンドもピックアップしている。世界で765台のみ発売される特別モデルのMoto2エディションは、前後にオーリンズ製サスペンションを装備するほか、セパレートハンドルを支持するトップブリッジ上部には、シリアルナンバーも施されている。
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13/27昨年EICMAに参加しなかったドゥカティが、今年は会場に戻ってきた。しかし2019年以降ドゥカティはオンラインでのニューモデルローンチへと切り替えているため、EICMAにあわせた大々的な発表会はなし。9月から7回に分けてオンラインで発表したニューモデルを会場に展示した。なかでも注目はV4エンジンを搭載した新型「ディアベルV4」だ。ディアベルはL型ツインエンジンを、ロー&ロングの車体に搭載したスポーツクルーザーだ。その見た目からは想像がつかないほどスポーティーで、ドゥカティの新しいスポーツライディングワールドを構築したマシンだ。そのマシンがフルモデルチェンジ。それがドゥカティ・ディアベルV4だ。ドゥカティは、アドベンチャーモデル「ムルティストラーダV4」で、バルブの開閉をロッカーアームで行うデスモドロミック機構ではなく、一般的なバルブスプリングを使用したV4エンジン/グランツーリスモ・エンジンを開発した。このディアベルV4も、そのグランツーリスモ・エンジンを搭載。Lツインエンジンに比べ大幅にエンジンの小型化に成功しているうえに、4気筒にもかかわらずエンジン重量は5kgも軽量化されている。フレームも一新した。これまでのトレリスフレームから、スーパーバイクモデルの「パニガーレV4」やムルティストラーダが採用するような、エンジンからアルミ製のフロントフレームが生えたようなモノコックフレームを採用。フレームでも8kgの軽量化を実現し、車体全体では13kgの軽量化が図られているという。車体はコンパクトだが、フレーム内にぎっしりと詰まったエンジンの存在感は抜群で、車体右側の4本出しサイレンサーも実に個性的だ。
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14/272015年に市場投入され、ドゥカティの世界を広げた「スクランブラー」シリーズがモデルチェンジした。排気量803ccの空冷L型2気筒デスモドロミックエンジンはそのまま継承されているが、新しい排ガス規制へ対応したことに加えてユニットを軽量化。クラッチまわりも変更し、操作性を向上させている。またエキゾーストパイプのレイアウトが見直されたことで、車体のサイドビジュアルも変わった。トレリスフレームは鋼管のレイアウトこそ変わらないが素材を変更するなどして軽量化。スイングアームも新しくなり、車体左側に見えていたリアサスペンションはスイングアームの中央に移設されてる。またスチール製タンクをベースにデザインされたタンクカバーに、オイルクーラーカバーが追加された点も視覚的なトピックだ。スクランブラーシリーズは、写真の「スクランブラー アイコン」に加え、アメリカのフラットトラックレースにインスピレーションを受けた「スクランブラー フルスロットル」、カフェレーサースタイルの「スクランブラー ナイトシフト」がラインナップされる。
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15/272019年にカワサキと提携したビモータ。以来カワサキのエンジンを使用した個性的なモデルを次々に発表している。そのビモータの最新モデルが「BX450」。カワサキの競技専用オフロードモデル「KX450」をベースとした、ビモータ初となるオフロードモデルだ。ビモータのジャンルカ・ガラッソ氏になぜオフロードにチャレンジするのかを聞くと、「われわれはカワサキと対峙(たいじ)するのは本意ではない。でもエンデューロの世界であれば、カワサキと戦わず、カワサキと一緒に戦うことができる。地元リミニのエンデューロチームと組み、まずはイタリアの国内選手権にチャレンジする予定だ。その後にチャンスがあれば、他の選手権参戦などのオプションもある」という。BX450は、ビモータがデザインした外装類を装着している。そのマシンがエンデューロでどのように戦うか、楽しみだ。
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16/27ビモータは、次期プロダクトに搭載予定の新しいコンセプトフレーム「TERA(テラ)」を発表した。ビモータはかねて、フロントスイングアームとセンターハブステアシステムを使った独自のフロントサスペンションシステムを開発し、自社のプロダクトやレーシングマシンに搭載。加減速時の車体姿勢を安定させ、走行安定性とスポーツ性能を高めてきた。2019年にカワサキとタッグを組み、最初に発表した「TESI H2」もそのフロントサスペンションシステムを搭載。リンク式リアサスペンションユニットの隣にフロントサスペンション用のショックユニットを搭載する新しいレイアウトを用いていた。このTERAは、その進化形だ。これまでリンクを介していた操舵系を一新し、ハンドルとハブステアを直接つなげることで、操舵系およびフレームまわりをシンプルなものとした。これにより、エンジンを中心としたフレーム剛性のバランスを容易に整えることができ、あらゆるエンジンタイプにこのビモータ独自のフロントサスペンションを採用できるという。そしてこのTERAフレームを使った次期ビモータモデルは、TESI H2同様、カワサキのスーパーチャージドエンジンを搭載したアドベンチャーモデルを計画している。セミアクティブサスペンションの採用も構想に入っており、車高調整機能も搭載予定だ。前後サスペンションをバランスよく上下させることで、理想の前後重量バランスを変化させることなく、車高調整による車体キャラクターの変化を楽しめるという。
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17/27EICMA開催直前にKTMグループからの出資を受けるニュースが発表され、大いに話題となったMVアグスタ。いつもは会場に巨大なブースを展開するが、今年はEICMAには参加しないこともニュースとなった。しかしMVアグスタは、プレスデー初日が終了した後に、ミラノにあるディーラーでメディアや関係者を招いてニューモデルの発表会を開催。そこで発表されたのが、コンセプトモデルであるこの「MVアグスタ・スーパーベローチェ1000セリエ オロ」だ。800cc並列3気筒エンジンを、ネオクラシックなフルカウルボディーで包んで登場して人気となった「スーパーベローチェ」のスタイリングを継承しつつ、新たに1972年にロードレース世界選手権(現MotoGP)に登場したMVアグスタのレーシングマシン「MV500」からインスピレーションを得たというウイングレットを装着。エンジンやフレームは、排気量998ccの並列4気筒エンジンを搭載した「ブルターレ1000RR」がベースだ。前後にオーリンズ製サスペンションを搭載するほか、最新の電子制御デバイスも搭載する。
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18/27「スーパーベローチェ1000セリエ オロ」とともに発表されたのが、同じくコンセプトモデルの「921S」だ。“TECH RETRO(テック・レトロ)”のコンセプトを掲げたそのマシンは、MVアグスタの歴史的モデルに敬意を抱きながら、それを新しい技術で再構築したマシンだ。その歴史的モデルとは、1970年に発表された空冷並列4気筒エンジンを搭載した「750S」。921Sは、そのネイキッドスタイルをベースに、各部に新しい技術やアイテムを取り入れている。デザインの核となるのは、新規に開発した排気量921ccの並列4気筒エンジンだ。コンパクトでありながらハイパフォーマンスなそのエンジンは、やや前傾した状態でクロモリ鋼管を組み合わせたトレリスフレームとアルミプレートで構成された新型フレームに搭載。カウンターバランサーで振動を抑えるとともに、水冷式のインテークマニホールドを採用することで、安定して高いパフォーマンスを発揮することができるという。ボディーデザインは美しい曲線を持つ750Sの燃料タンクをオマージュしながら、エアインテークを兼ねたタンクのサイドパネルがモダンなスタイルをつくり上げている。トップブリッジやハンドルマウント、ヘッドライトホルダーなどのデザインに見られる、リッチな表現も特徴だ。
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19/272021年1月に誕生した日立アステモは、前回にあたる2021年のEICMAで初出展。そのときは先進運転支援システムなどを開発する日立オートモーティブシステムズ、燃料供給システム電子制御システムのケーヒン、サスペンションのショーワ、ブレーキのニッシンが統合して初めてのEICMAだったこともあり、それぞれの最先端技術やプロダクトの紹介を行っていた。そして今回は、その4ブランドが集まったことで実現可能となった現在開発中のADAS(先進運転支援システム)や、小型電動バイク向けのシステムソリューションを展示した。新たなADASは、現在市販されている二輪用ADASがレーダーを使っているのに対し、小型ステレオカメラを使用。それによって路面状況や道路環境をより高い精度で判別することができるという。また、そこで得たデータをもとにサスペンションやブレーキ、出力特性を一元的に管理および変化させることで、安全性を高める研究も行っているとのことだ。また、これらのシステムや機能を簡略化した、小排気量二輪車への搭載システムも展示されていた。
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20/27伊ファンティックの、単気筒エンジンを使ったネオレトロなネイキッドモデル群である「キャバレロ」。このファミリーから、ファンティックとして初となる2気筒エンジンを搭載したコンセプトモデルが発表された。それが「キャバレロ700」だ。エンジンはヤマハのネイキッドスポーツモデル「MT-07」に搭載されている、排気量689ccの並列2気筒エンジン。ヤマハが「CP2」エンジンと呼び、MT-07のほか「XSR700」「トレーサー7 GT」「テネレ700」とさまざまなモデルに搭載するエンジンだ。ヤマハは自社用エンジンの開発や製造を行っていたモトミナレッリ社を、2020年にファンティック社に譲渡。その後もファンティックとの協力関係を続けていくと発表していた。これまでもファンティックのオフロードモデルにはヤマハ製エンジン搭載モデルが存在したが、キャバレロブランドのモデルにヤマハのエンジンが搭載されるは初めてとなる。フレームは、キャバレロ700用に開発されたオリジナル。フロント19インチ、リア17インチという、モダンなスクランブラーモデルやフラットトラッカーを展開するキャバレロらしいレイアウトが採用されている。
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21/27マットモーターサイクルズは、2019年から日本でも活動を開始した英国生まれのブランドだ。カスタムビルダーだったベニー・トーマス氏が、より多くのライダーに気軽に楽しんでもらうため、排気量が小さく、安価で、カスタムバイクのようなルックスのバイクを生産したことからブランドがスタート。市場で入手できるあらゆるパーツを組み合わせ、品質とスタイリングを高めたことから欧州を中心に人気のブランドとなった。これまでは空冷の125ccや250ccのエンジンを搭載したモデルが中心だったが、EICMAでは水冷DOHCの125ccおよび250ccエンジンを搭載した「DRK-01」を発表。2023年の発売を目指している。排気量が異なる2台のマシンは、フレームや倒立式フロントフォーク、オリジナルデザインのチューブレス式スポークホイールを装備。スタイリングはこれまでのモデル同様、カスタムバイクのようなクラフトマンシップあふれるデザインを採用している。
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22/27英国のバイクブランド、ブラフシューペリアは、スポーツカーメーカーであるアストンマーティンとのコラボレーションモデルの第2弾「AME001プロ」を発表した。これは、2020年に初のコラボモデルとして登場した「AME001」をベースとしたレーシングマシンである。同社オリジナルの排気量997ccのV型2気筒エンジンは、アルミ削り出しのオリジナルクランクケースやシリンダーブロックを採用した新型で、AME001から最高出力を25%も向上させ、225HPを発生している。ボディーデザインは前回同様、アストンマーティンのスーパーカー「ヴァルキリーAMRプロ」からインスピレーションを得たもの。フロントカウル下段から取り入れた走行風が、カウル内を通ってフロントカウル正面の排気口から吐き出され、それが空気の壁となってエアプロテクション効果を高める最新のエアロダイナミズムを採用している。ウイングレットは最高速の向上のほか、ダウンフォースを高めて高速走行時の車体安定性も高めている。ボディーはすべてカーボンファイバー製だ。
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23/272021年に続きハーレーダビッドソンはEICMAに参加しなかったが、注目のマシンがサスペンションブランド、オーリンズのブースに展示されていた。それがアメリカで大人気となった、車体に大きなケースを装着した“バガー”と呼ばれるスタイルのマシンによるロードレース「The King of Baggers(ザ・キング・オブ・バガーズ)」に参戦したハーレーダビッドソンのファクトリーマシンだ。2022年は最終戦までタイトル争いを展開したが、惜しくも年間ランキング2位となった。マシンは“ツインクールド”と呼ばれる排気口周辺のみを水冷化した1.8リッターエンジンを搭載した「ロードグライド」だ。そのエンジンを、ハーレーダビッドソンのオフィシャルチューニングパーツブランド、スクリーミンイーグルがフルチューン。フレームはスタンダードだが、前後に特製のオーリンズサスペンションをセットしている。外装類はすべてカーボンファイバー製で、巨大なアルミブロックから削り出したスイングアームなど、大型ツーリングマシンをロードレーサーに仕立てるため、あらゆる場所に専用のパーツが採用されている。重量はレギュレーションで設定された280kgまでダイエット。100kgを超える軽量化を果たしたマシンは、とにかく迫力があった。
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24/27先述のハーレーダビッドソンと「The King of Baggers」で最終戦までチャンピオン争いを展開し、2020年に次ぐ2度目のタイトルを獲得したのが、このインディアンモーターサイクルのクルーザーモデル「チャレンジャー」のバガーレーサーだ。水冷エンジンを搭載するチャレンジャーは、空冷エンジンにて比べて改造範囲が狭く、このエンジンはECUと吸排気系を変更する以外は、基本的にはストックのまま。フレームはスタンダードのままで、それに同社のネイキッドスポーツモデル「FTR」の倒立フォークをセットアップを変更して装着。オリジナルのスイングアームとオーリンズ製サスペンションでリアまわりを固めている。外装類はレギュレーションで決められているとおり、スタンダードのシルエットを生かしたまますべてカーボンファイバーで製作。ハンドルは極太のハンドルバーの両端にセパレート型ハンドルを装着する、ユニークなレイアウトを採用している。
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25/27日本のヘルメットブランド、KABUTO(カブト)が初のオフロード型ヘルメット「GEOSYS(ジオシス)」を発表した。開閉式シールドを持つアドベンチャースタイルの製品で、高速走行時にヘルメットを安定させるため、バイザーの形状やスリットの位置を徹底的に研究。また欧州市場向けに、衝撃を受けた際に内装をスライドさせて衝撃を吸収し、脳へのダメージを軽減させる内装システムMips(ミップス)を採用している。プレゼンテーションではMipsシステムを手がけるスウェーデンのMIPS社の代表が、その優位性と安全性をアピールした。
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26/27イタリアのヘルメットブランド、Airoh(アイロー)は、スウェーデンで自動車用のエアバッグとエアバッグシステムを開発するAutoliv(オートリブ)と開発中の、エアバッグ内蔵ヘルメットのコンセプトモデルを発表した。ヘルメットに内蔵したセンサーがアクシデントを検知すると、アウターシェルに内蔵したU字型のエアバッグが開くというもの。現在も研究は続いていて、市販化は未定だ。しかしAutoliv社は、すでに自転車用ヘルメットでも同システムを採用した研究を行っており、エアバッグなしのヘルメットに比べ、その優位性を十分に立証できているという。またAutoliv社は、ピアッジオ社とともにスクーターに搭載するエアバッグも共同で開発中。現在は着用型のエアバッグシステムにも手を伸ばしていて、共同開発を進められるライディングウエアブランドのパートナーを探していると話していた。
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27/27イタリアのライディングシューズブランド、Stylmartin(スティルマーティン)は、ライディングシューズとトレッキングシューズの機能をミックスした「RIDE N’ HIKE」を発表した。現在は欧州でも、バイクキャンプやバイクで登山やハイキングに向かうアクティビティーが人気とのこと。そこでバイクで目的地に移動してもシューズを履き替える必要がない、バイクとトレッキングの2つの機能を併せ持ったシューズを開発したという。耐水性や耐久性、機能性において高い要件が課せられる多機能なシューズを、妥協することなくつくり込んだという。