ボルボXC90 3.2 Sport(4WD/6AT)【短評(後編)】
ボルボらしさ(後編) 2007.07.02 試乗記 ボルボXC90 3.2 Sport(4WD/6AT)……698.0万円
前編に引き続き、北海道の北端である稚内で「XC90 3.2 Sport」のステアリングを握った。その実力は……
適度な手応え?
19インチホイールを装着し、真っ赤なボディペイントを得た「ボルボXC90 3.2 Sport」は、内装も特別仕様だ。レザーシートには洒落たパイピングが施される。「スポーツシート」が謳われ、バックレストのサイドサポート張り出しが目立つが、依然としてやんわりと深いクッション感をもって乗員を受けとめる。
ノーマルXC90ではウッドが用いられるパネル類は、細かいドットが散らされたアルミニウムとなった。メーターは青地で、やはりアルミで縁取りされる。
XC90は、2006年のモデルイヤーに2.9リッター直6ターボ(272ps)が4.4リッターV8(315ps)に、翌07年から2.5リッター直5ターボ(209ps)が3.2リッター直6(238ps)に変更された。トランスミッションは、いずれも6段ATへのグレードアップを果たした。
3.2 Sportは、いわばハンドリングをスポーティに仕立てたクルマなので、238ps/6200rpmの最高出力、32.6kgm/3200rpmの最大トルクはノーマルモデルと同じ。ギアも変わらない。2150kgの、決して軽くはないボディを不足なくひっぱるため、ロウで50km/h、セカンドで90km/h付近までと、守備範囲がやや狭い。100km/hでの巡航時は、トップギアで2100rpmだ。
専用チューンが施されたのは、ステアリングのパワーアシスト。速度感応式で「適度に手応えを増した」ということだが、太めのステアリングホイールを握って走りはじめた当初は人工的な重さが気になった。たぶんそれは、「Sport」の名にひっぱられ、ダイレクトなフィードバックを期待しすぎたせいかもしれない。稚内の市内をドライブしているうちに、いつしか気にならなくなっていた。
Sportの意味
2007年型XC90 3.2は、直列6気筒をエンジンルームに横置きする。そのため前後のスペースを大きくとれ、クラッシャブルゾーンを拡大できた。6気筒とはいえ、補記類の配置を工夫することで、5気筒よりわずかに3mm長いだけのコンパクトユニットである。
それでも前輪の切れ角を取りにくいXC90の最小回転半径は、6.3mと大きめ。19インチホイールを履く3.2 Sportは6.4mに悪化する。XC90のボディ自体は、「アウディQ7」(最小回転半径6.0m)や「メルセデス・ベンツGLクラス」(5.7m)よりひとまわり小さいだけに惜しいところだ。ことに「大柄だけどクルリと回れる」かつてのFRボルボを知っているファンには残念なところだろう。
北海道稚内市街を、展望台に向かって狭い道を行ったり来たり。XC90の、見晴らしのいい高い視点は、こんなときはありがたい。
50タイヤを巻いた19インチホイールが凄みをきかす外観に、「乗り心地はさぞや……」と不安に感じたが、乗ってみると意外にマイルド。舗装の荒れた観光道路でも、突き上げがよく抑えられる。スポーツサスペンションのチューンは、ダンパーとアンチロールバーの若干の強化だから、普通に走っているかぎり“やや締まった”程度の硬さ。
シフターをシーケンシャルモード側に倒してストレート6を歌わせながら走ると、なるほど、カーブではスポーツサスがそれなりに2.1トンのロールに抵抗する。が、しかしそれは、XC90本来の開発コンセプトに反する行為である。RSC(ロール・スタビリティ・コントロール)が強制的にアンダーステアを発生させる事態が生じないうちに、ポジションを「D」に戻した。「XC90 Sport」のSportは、たぶんSport Utility VehicleのSportと同じような意味合いで、それ自体でスポーツするものではない。
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整合性の問題
ボルボXC90 3.2 Sportは、ボルボの子会社「ボルボ・スペシャル・ヴィークル」社が手がけたモデルである。日本のように特別仕様車として設定されるほか、販売する国によってはセットオプションとして提供されるところもある。V8を積む「XC90 TE」をも開発した同社は、ボルボのスポーティなラインほか、警察車両、タクシー仕様、防弾が施されたVIP用車などを担当する架装会社。日本でいえば、オーテックのような存在か。
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XC90は登場と同時に人気を博し、昨2006年度は8万5064台と、世界中でもっとも売れたボルボ車となった。日本では同社の代表モデルと見なされるスタンダードワゴン「V70」をうわまわる販売を記録した。販売が増えればスペシャルモデルもつくらねばならないわけで、性能(と外観)のインフレーションとボルボが設定した本来のコンセプトとの整合性に、うれしい悲鳴とは別の悲鳴をあげなければならないわけだ。
威圧感のない穏やかな顔をもつXC90。「自然を乗り越えるのではなく、自然に向けて出かけていくためのSUV」と謳われる。
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北海道は稚内で行われたプレス試乗会。緑の丘の上で3.2 Sportを撮影していると、おそれるでもなく何頭もの鹿が現れて、クルマの背景に溶け込んだ。
「すばらしい!」と感心して眺めていると、それまでリポーターと雑談していた展望台の管理の方がぼそりといった。
「最近は数が増えすぎちゃって。そろそろ駆除しないと……」
なるほど。自然に向けて出かけていかないと、わからないこともたくさんある。
(文=webCGアオキ/写真=菊池貴之)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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