ホンダ・シビック タイプR(FF/6MT)【ブリーフテスト】
ホンダ・シビック タイプR(FF/6MT) 2007.06.29 試乗記 ……319万2000円総合評価……★★★★
ホンダ唯一のピュアスポーツモデルとなる「シビック タイプR」。ハッチバックから打って変わりセダンベースとなった新型に試乗した。
帰ってきた「タイプR」
赤のHondaエンブレムがなんとも誇らしげな“TYPE R”が戻ってきた。
シビックとしては3代目となるこの新しいコンパクトスポーツは、ボディこそハッチバックから4ドアセダンに変わったけれど、胸のすく加速が刺激的な4気筒自然吸気エンジンと、サーキットやワインディングロードでその真価を発揮するFFレイアウトのシャシーに歴代タイプRの魂が宿り、スポーツドライブを好むファンの心を熱くすることに変わりはない。
それでいて、ビギナーにも扱いやすい間口の広さがうれしい「シビック・タイプR」。その代償として快適性、とくに乗り心地が犠牲になっているのも事実で、4人乗りの4ドアといっても、ファミリーで使うことなど考えないほうがいい。そのへんがスパッと割り切れるなら、283万5000円のプライスタグは決して高いものでははずだ。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2005年9月22日にフルモデルチェンジした、ホンダを代表するベーシックカー「シビック」。現行モデルは8代目。ハッチバックが落とされ、4ドアセダンのみのラインナップとなった。パワートレインは、1.8リッター、ハイブリッドモデルの2車種。
トランスミッションは、5段ATをメインに、一部グレードには5段マニュアルを設定。ハイブリッドはCVT。FFモデルのみがラインナップされる。
2006年4月7日、2リッター直4DOHC「i-VTEC」エンジン搭載モデルが追加された。パドルシフト「Sマチック」を搭載した5ATが組み合わされる。
(グレード概要)
ハイパフォーマンスモデル「タイプR」は、2007年3月30日に発売。3代目となった新型は、国内では日本製の4ドアボディのみとなる。
搭載される2リッター直4エンジンは専用ユニットで、従来型比10psアップの最高出力225ps/8000rpmと、0.9kgm増の最大トルク21.9kgm/6100rpmを発生する。トランスミッションはフロア式の6段マニュアル。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
手前にアナログの回転計、その奥、上段にデジタルの速度計が配置されるユニークなメーターは、ノーマルシビックに準じるが、ノーマルでは速度計の左にあった水温計を回転計の左に移し、代わりに「i-VTEC/REVインジケーター」を設けたり、イルミネーションをレッドするなど専用化が図られている。
i-VTEC/REVインジケーターは、エンジンの回転数に連動して7つのLEDが点灯するもので、VTEC(可変バルブタイミング・リフト機構)がハイカムに切り替わる5800rpmでまず左端のi-VTECインジケーターが赤く点灯。その後、回転が上がるにしたがって残り6つのREVインジケーターを左から順に点灯。4番目まではオレンジ、5番目、6番目がレッドで、5番目は最高出力を発生する8000rpmに達したことを、6番目でレッドゾーンに迫ることを示している。
これを目安にハイカムの領域を保てば、エンジンの“美味しい”ところが使えるわけで、サーキットやワインディングロードを攻めるときにはここだけに集中すればいいというわけだ。
タイプRとはいえ、オートエアコンや電動リモコンドアミラー(電動格納機構は付かない)、パワーウィンドウなどの快適装備は標準。オートエアコンとHIDがセットでレスオプションとして選べるあたりはスポーツモデルならでは。エンジンの始動がボタン式になったのはタイプRとしては初めてだが、インテリジェントキーではないので、キーを差してからスターターボタンを押すという2段階の操作が少し面倒くさい。
(前席)……★★★★
試乗車のインテリアはブラックに明るいレッドが鮮やかなツートーン。シートもこれにあわせて、シートクッションとシートバックがレッド、サイドサポートがブラックというオリジナルシートが装着される。座ってみると、サイドサポート部はそこそこ硬いが、レッドの部分に硬さはなく、それでいて適度に張りがある快適なものだ。窮屈さはないのに、コーナーなどではドライバーの上体や肩のあたりをうまく支えてくれるのがいい。
ステアリングホイールは径が小さめで握りが太すぎない絶妙なデザイン。球状のシフトノブはアルミ製で、掌にちょうど収まるサイズだ。ただ、体格にもよるのだろうが、シフトレバーの位置がやや遠いのが気になった。ペダルはアクセルがオルガン式になるが、ヒール・アンド・トウで困ることはない。
(後席)……★★
前席同様のイメージでデザインされた後席は、他のシビックと異なり用意されるのは2人ぶんのシートだ。バックレストは肩まですっぽりカバーし、座り心地はソフト。足元は広々としていて、足を組めるくらいのスペースが確保されている。ヘッドルームにも不満はない。しかし、フロントのバケットシートにより前方の視界が遮られるうえ、路面の凹凸により常に上下に揺すられる乗り心地は、正直ツライ。短い距離でも、できれば乗るのを遠慮したい場所である。
(荷室)……★★★
軽量化のために後席のバックレストが倒せなくなって多少不便にはなったが、それでも4540mmという全長を活かし、トランクの奥行きは満足できるレベル。ハイデッキスタイルのおかげでトランク内の高さも十分だ。さらに、軽量化のためにスペアタイヤを廃止して、応急パンク修理キットを搭載したために、床下にはちょっとした収納スペースも用意される。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
レブリミットが8400rpmという高回転型のエンジンは、VTECのカムが切り替わる5800rpmの前後で明らかに異なる印象を示す。
おそらくふだんは5800rpm以下で過ごすことになるが、高回転型エンジンとはいえそこはVTEC、低回転側でも扱いにくさや力不足とはまるで無縁で、2000rpm以下でもトルクは豊か。アクセル操作に対するエンジンの反応は鋭く、ギア比が低めということもあって、あっというまに回転が上がってしまう印象だ。4000rpm手前で多少トルクが落ちるものの、物足りなさを感じるほどではない。
4000rpmを過ぎて徐々に勢いづいたところで5800rpmに達すると、エンジンのサウンドが一段と勇ましくなると同時に、堰を切ったように力強さを増す。そこからは一気にレブリミットまで回転を上げ、これぞ「胸の空く加速」という印象だ。しかも、8000rpmを超えたあたりでシフトアップすれば、上のギアでも高回転側に入るギア比が設定されるため、1速40km/hより上なら、上手くシフトを繰り返すことでパワーゾーンをキープすることが可能になる。そのためにはシフト操作が頻繁になるが、ショートストロークのシフトレバーと、ヒール・アンド・トウのしやすいペダル配置のおかげで、その行為自体が楽しく思えるのもタイプRの良さである。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
走り出してすぐ感じるのは、締め上げられたサスペンションがもたらす硬い乗り心地だ。尖ったショックこそ伝わらないが、常に小刻みに揺さぶられる感じ。スピードが上がったところで一向にフラットになる様子はなく、ふだんのアシとして使うときや、サーキットの行き帰りといった場面では、辛い思いを覚悟したほうがいい。
しかし、我慢するだけの甲斐はあって、ワインディングに辿りつけば、まさに痛快そのもの! 高速コーナーでは路面に吸い付くように、クルマは思い描いたラインを駆け抜けるし、Rのきついコーナーでも、オーバースピードで突っ込まないかぎりは、フロント外側のタイヤが強大なグリップを発揮して、外に膨らむ気配すら見せない。
コーナーの途中でアクセルをオンにしても、アンダーステアが強まることもなし。そのうえ、街なかでも垣間見せる優れた回頭性はここに来てさらに明確になり、それでいてリアの安定感は高いから、不安を感じることなく、いつもより速いスピードでコーナーを回ることができた。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2007年5月10日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2007年型
テスト車の走行距離:3127km
タイヤ:(前)225/40R18(後)同じ(いずれも、ブリヂストンPOTENZA RE070)
オプション装備:HondaHDDインターナビシステム(リアカメラ付) 7インチワイドディスプレイ・TV/AM/FM チューナー付 DVD/CDプレーヤー(29万4000円)/スーパープラチナ・メタリックカラー(3万1500円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1):高速道路(7):山岳路(2)
テスト距離:425.7km
使用燃料:49.42リッター
参考燃費:8.61km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
アウディQ3スポーツバックTFSIクワトロ150kWアドバンスト(4WD)【試乗記】 2026.8.31 フルモデルチェンジした「アウディQ3スポーツバック」に試乗。プラットフォームやパワートレインこそ従来型の改良版ではあるものの、内外装のデザインやインフォテインメント、効率性のすべてにおいて大幅な進化を遂げたという。その仕上がりやいかに。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.8.29 「トヨタbZ4X」にワゴンのようなロングボディーを持つ「ツーリング」が登場。ただ長くなっただけではなく、今回試した4WDモデルではパワーもアップ。乗り味にも微妙な影響を及ぼしているから見逃せない。経路充電を試しつつ、370km余りをドライブした。
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2026.8.24 スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。
-
NEW
第127回:新型BMW X5(後編) ―迷走するBMW 結局アナタは“ノイエクラッセ”でなにがしたかったの?―
2026.9.2カーデザイン曼荼羅その姿が明らかとなるや、賛否両論を巻き起こしている新型「BMW X5」。このクルマは既存のBMW製SUVとはなにがちがうのか? そもそもBMWは“ノイエクラッセ・デザイン”になにを託していたのか? カーデザインの識者と、迷走するBMWの明日を探った。 -
NEW
BMW X1 sDrive20iオリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.9.2試乗記BMWのコンパクトSUV「X1」に新グレードの「オリジナル」が登場。走りの楽しさをはじめとしたBMWらしさをキープしつつ、装備の厳選によって価格抑制を図った新たなエントリーグレードだ。都市部におけるドライバビリティーとユーザービリティーをリポートする。 -
スポーツカーに未来はあるか?
2026.9.1あの多田哲哉のクルマQ&A年々、開発環境が厳しくなるといわれるスポーツカーは、この先も存在しうるのか? トヨタのエンジニアとしてさまざまなスポーツカーを開発してきた多田哲哉さんに“未来のスポーツカー像”を聞いた。 -
トヨタGRヤリスRZ“ハイパフォーマンス”+エアロパフォーマンスパッケージ【試乗記】
2026.9.1試乗記2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。 -
“自然を連想する車名”の名車特集
2026.9.1日刊!名車列伝暑さが和らぐ一方で、台風シーズンとも呼ばれる9月。その風をはじめ、星座、景観など自然を連想させる名前が与えられた、世界の名車を日替わりで紹介します。 -
興味があるのはたったの3割!? 自動車業界を揺るがすSDVやAIって本当に必要なの?
2026.8.31デイリーコラム自動車も、スマホのように機能がアップデートできるようになる! ……ということで注目されるソフトウエアディファインドビークル(SDV)だが、日本のユーザーの多くが「いらない」と思っていることが判明! 急速に進むデジタル技術の、必要性について考えた。





























