スバル・インプレッサ15S(4WD/4AT)/20S(4WD/4AT)/S-GT(4WD/4AT)【試乗記】
温度差と販売 2007.06.24 試乗記 スバル・インプレッサ15S(4WD/4AT)/20S(4WD/4AT)/S-GT(4WD/4AT)……211万5750円/236万2500円/295万500円
「スポーツ」「カジュアル」「コンパクト」をキーワードに開発された3代目インプレッサ。合理的な5ドアボディに絞られて登場した新型インプレッサはどうなのか?
5ドア一本に
「スバル・インプレッサ」の新型を前にしたスバル・ファンは、複雑な気持ちだろう。スッキリとしたフォルム。滑らかなルーフライン。サイドのパネルには緊張感があるし、リアのコンビネーションランプにLEDが採用されたのも新しい。フロントまわりは少々煩雑だけれど、「写真で見るよりずっとカッコいい」と嬉しく思うヒトは多いはず。一方、ななめ後ろから見た場合、これまた写真以上に「BMWに似ている」と、残念に思うヒトが多いかもしれない。
3代目のインプレッサは、国内では5ドアのみのラインナップとなった。セダンは北米市場専用なので、新型の名称は「インプレッサスポーツワゴン」改め「インプレッサハッチ」、ではなく、シンプルに「インプレッサ」を名のる。
“ハッチバック”(とは呼んでいないが)の人気が低迷して久しい日本市場で大胆な試みだが、車型を絞ることで「スタイリッシュなイメージを築きたい」とスバルはいう。インプレッサをして、一部の熱狂的なファンから、より一般的な消費者の興味を惹くクルマにしたいのだ。
もちろん顧客獲得のもくろみはあるわけで、「興隆を誇るミニバンユーザーを取り込めるのではないか」と期待する。子育てを終えたご夫婦が日常のアシとして、大型車の所有層がダウンサイジングの波にのって、「本来、合理的なカタチである5ドアに戻ってくるのではないか」と。
実際、先代インプレッサも、販売の主力は“ハンドリングマシン”のセダンではなく、実用的なスポーツワゴンだったから(それもかなり圧倒的に)、富士重工の「限られた経営資源を集中する」という考え方に立てば、まずはハッチバック1本に絞ったのは正しいといえよう。
エンジンとインテリア
新しいインプレッサの車両寸法は、全長×全幅×全高=4415×1740×1475mm。フロント部はレガシィのコンポーネンツを活用しているため、タイヤより前の部分、フロントオーバーハングの長さは先代とあまり変わらないが、リアのそれはグッと短くなって軽快感が増した。
ホイールベースを95mm延ばして室内を広くしつつ、全長を50mm短縮したのが、スバルの良心的なところ。最小回転半径は先代の5.1mから5.3mに拡大したが、バンパーの角を落とすことで「実質的な取り回しはむしろ向上している」という。
カタログに載るエンジンは3種類。
・1.5リッターDOHC(110ps)
・2リッターSOHC(140ps)
・2リッターDOHCターボ(250ps)
いうまでもなくすべて水平対向エンジンで、トランスミッションは4段ATのほか、1.5と2リッターターボには5段MTを組み合わせることもできる。2リッターNA/ターボは全車4WS、ボトムレンジの1.5にはFF車も用意される。
インテリアは「ブラック」と「アイボリー」の2種類がある。写真で見た際には、特にアイボリーは「スバルらしからぬ(!?)洒落た内装じゃあないか!」と驚いたが、実車は、ちょっとですね、「質感に難あり」と思った。
リポーターは、基本的に“鈍”な人間だが、ニューインプレッサのドアトリムが樹脂然としており、またシート、トリム、インストゥルメントパネル、そしてステアリングホイール間の色合わせが上手くいっていないのが気になった。
インプレッサは、これまで以上に“スバルのカローラ”を志すことを決め、つまり「トヨタ・カローラ」「日産ティーダ」「マツダ・アクセラ」といったライバル群からユーザーを奪わなければならないわけで、「145万9500円からの実用車ですから」との言い訳はできないはずだぁぁぁ!
……と、ついボルテージが上がってしまったのは、写真写りのよさに、期待値を上げすぎたせいかもしれない。
NAモデルの第一印象
最初に乗ったのは「15S」(4WD)。あたりの柔らかいシートは、ほどほどのホールド性あり。レバー式のリフターが備わり、シートの高さを調整できる。上下・前後できるステアリングホイールと併せ、好みの運転姿勢を取りやすいのがスバル車の美点である。
吸排気系のファインチューンを受けたフラット4は、トランスミッションともども基本的に先代のモノを継承する。最高出力110ps/6400rpm、最大トルク14.7kgm/3200rpmのスペックは変わらないが、カタログ燃費は、先代ツインカム「スポーツワゴン15R」の13.8km/リッターから14.8km/リッターに向上した。
運転感覚もまた先代と同様で、経済性に配慮したベーシックグレードらしく、走りはおとなしい。シフター後方の「ECO」ボタンを押すと、さらに燃費のよいプログラムが選択されるようになった。燃料消費量が低いときにはメーターに「ECO」マークが点灯するので、ドライバーはますますもって燃費運転を励行するようになる。
……かもしれないが、せっかちな運転手の場合はついついスロットルを開けがちになり、おそらく逆効果。「気が短い」と明らかな自覚がある方は、1.5リッターのFF(5MT)の方が、環境にも精神にもいいと思います。これだとカタログ燃費は17.6km/リッターになる。
194万2500円からの2リッター「20S」は、4AT/4WDしか設定されないが、よくバランスされたクルマだ。
2リッターSOHCは、最高出力140ps/5600rpm、最大トルク19.0kgm/4400rpmと、比較的控えめなアウトプット。それでも「205/55R16」と、「15S」より一段スポーティなタイヤを履いた「20S」は、ひと転がりめから明らかに力強い。インプレッサを単なる実用車ではなく、じゃっかんなりとも「ラリー」のイメージを重ねたいヒトには、2リッターが選択のスタート地点になろう。
延長されたホイールベースのおかげで広くなった後部座席を頻繁に使いたいオーナーにも、「15S」比30ps、4.3kgmの余裕はありがたいはず。ただしリアシートは、中央席が2点式シートベルトでヘッドレストも備わらないから、実質2人用。シートクッションの形状からも、2人がけを想定していることがわかる。
結局は……
2リッターターボモデルは、従来「ラリーのイメージが強いSTiに隠れがちだったから」、国内ではWRXからS-GTにグレード名が変わった。
先代と同じ250ps/6000rpmのピークパワーは、依然として第1級。そのうえ34.0kgmの最大トルクは、WRXより1200rpmも低い2400rpmで発生するようになった。ボンネットに派手にあいたエアスクープの下には、新しい形状のインタークーラーが収められる。
シートはバケットタイプ(オプション)。目の前のメーターナセル内、ターボモデルはメーターが赤く照らされる。NA版では中央に速度計が置かれるが、S-GTではいかにもスポーツグレードらしく、大きな回転計がセンターにくる。
等長等爆のエグゾーストシステムを得てからこっち、ピストンが殴り合う特徴的なサウンドは影をひそめたけれど、過給マシンらしい、疾風のような速さは健在。感心したのが、新しい足まわりである。
7年ぶりのフルモデルチェンジの目玉が、新開発のリアサスペンション。初代、2代目のパラレルリンクのストラットから、井型のサブフレームを介したダブルウィッシュボーンに変更された。ロアとアッパーアームが接近したコンパクトなタイプで、荷室への浸食は、従来のストラットよりむしろ少ない。音・振動のキャビンへの侵入低減も大事な狙い。
2リッターターボを走らせてみると、「ソフト」と形容できるほど乗り心地がしなやかで、当然、カーブではわかりやすくロールするが、不安感とは無縁。よく粘って路面を離さず、いかにも懐が深い。そのうえスロットル操作にもクルマが素直に反応するから、コントロールが楽しく、走らせがいがある。
S-GTの革巻きステアリングホイールを握っていると、愛憎半ばする(!!)外観も、もう一歩のクオリティが欲しかった内装のことも忘れ、「さすがインプレッサ!」と頬がゆるむ。日常使いを考えると、S-GTのレベルが適当か、はやりSTiの息がかかったモデルは一段上か、さらにスペシャルチューンが出ることも期待できる……と想いは千々に乱れ、しかしインプレッサの売れ筋は、繰り返しになるが、1.5NAのおとなしいモデル。
果たして、ブレッド&バターな実用インプレッサは、スポーティバージョンほど個性を主張し、差別化できるのでありましょうか?
ニューモデル投入早々、不吉な話題で恐縮だが、万々が一、インプレッサ“ハッチ”の販売が不振を極めるような事態が生じたなら、追ってセダンが投入される確率は高い。北米向けとはいえ、5ドア同様、国内で生産されるから。
(文=webCGアオキ/写真=郡大二郎)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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