レクサスLS600h(4WD/CVT)/LS600hL(4WD/CVT)【短評(後編)】
トヨタへの期待(後編) 2007.06.17 試乗記 レクサスLS600h“versionU・I package”(4WD/CVT)/LS600hL“後席セパレートシートpackage”(4WD/CVT)……1392万5150円/1510万円
レクサスのフラッグシップ「LS600h」に試乗。ハイブリッドシステムの完成度を実感したリポーターだが、気になるところもあるという。
異次元の加速
高速道路に足を踏み入れると、「レクサスLS600h」はさらに凄さを見せつけた。合流車線で思い切りアクセルペダルを踏んだら、エンジンの回転は一気に4500rpmくらいまで跳ね上がり、豪快なトルクであっというまに100km/hに到達。そこで右足の力を緩めないと、すぐにいけない速度域に突入してしまうから注意が必要だ。道路の勾配にもよるが、100km/h巡航時の回転数は1000rpmから2000rpmまでを往き来する程度で、回転計を見なければその存在を忘れてしまうほど、エンジンは控えめに仕事を続けている。
走行中に遅い車に引っかかったときなどはシフトレバーをSのポジションに倒すことで強力なエンジンブレーキが得られ、さらにシフトレバーを前後に動かせば(シーケンシャルシフト)、エンジンブレーキのレベルを選ぶこともできる。その際に発生するエネルギーは電気エネルギーとして回収され(回生ブレーキ)、次の加速に再利用されるのはいうまでもない。もちろん、シーケンシャルシフトで低いポジションを選んでおけば、ふつうのオートマチック同様、力強い加速が期待できる。
フットブレーキは自然なタッチが好印象。このときは回生ブレーキと通常の油圧ブレーキとが連携して減速Gを発生させることになるが、他のクルマから乗り換えても違和感を覚えることはない。
快適なのは18インチ
LS600h“versionU・I package”には標準で235/50R18サイズのタイヤが装着されていて、電子制御エアサス仕様の前後マルチリンクサスペンションのおかげもあり、乗り心地は速度によらず実に快適、高速道路では高いフラットさを見せる。サスペンションの動きもしなやかで、目地段差を通過するときなどもさらりとショックをかわしてしまう。
一方、走りっぷりの印象は、2310kgのボディを操っているという感覚は薄く、ステアリング操作に素直に反応するハンドリングには好感が持てるし、高速コーナーを駆け抜けるときなどはその安定した走りが頼もしく思えたほどだ。
そのあとにLS600h“versionS・I package”も試したが、こちらは245/45R19タイヤとアクティブスタビライザーが標準装着されるおかげで、コーナリング時のロールは小さく、タイヤもよく踏ん張ってくれるスポーティな性格。その反面、19にインチアップしたタイヤがドタバタする動きを見せることがあるから、快適性を求めるなら18インチがお勧めだ。
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VIPは満足できるか?
とりたてて不満のないLS600hに対し、ロングホイールベースのLS600hLでは仕上がりの部分に熟成不足が感じられた。
LS600hL“後席セパレートシートpackage”の左後ろ、オットマンが備わる特等席は、助手席を前にスライドさせるとビジネスクラスなみに広い足元が現れる。横方向や頭上のスペースも満足のいくレベルなのだが、いざ走り始めると、リヤサスペンションが路面の凹凸を拾いがちで、ロングホイールベースがもたらす快適な乗り心地を期待していた私としては肩透かしを食らった印象だ。
運転席に移ったところで、標準ホイールベース仕様が持つフラット感はないし、LS600hではさほど意識しなかったボディの大きさが気になるようになった。高級車にふさわしい上質な身のこなしを手に入れるには、もう少し時間がかかるのかもしれない。
ハイブリッドが目指すもの
軽井沢で行われた試乗会では、LS600h/LS600hLに搭載されたハイブリッドシステムが高い完成度とあり余る動力性能を持つことが確認できた。残念ながら燃費をチェックすることはできなかったが、そのあたりは今後のテストで明らかになるはずだから、どんな結果が出るか楽しみである。
ただ、その結果がメルセデスやBMW、アウディといったライバルを大きく上回ったところで、私の中にはすっきりしない気持ちが残る。ボディもエンジンも大きな高級車は燃費が悪いのが“常識”になっているが、燃費が良ければそれに越したことはないし、ハイブリッドシステムにより、VIP待ちの高級車が自動的にアイドリングをやめられるのもうれしいことだ。
しかし、このクルマを企画する時点で、そもそも6リッターエンジンなみの動力性能は必要だったのか? LS460より270kgも重いシステムを搭載し、その動力性能をフルに活かして(!?)高速を飛ばされたのでは、せっかくの低燃費技術は浮かばれない。
だから、いまある価値をハイブリッドでおきかえるのではなく、ハイブリッド技術でまったく新しい高級車の価値を創造してほしい、というのが私の意見。それは、元プリウスオーナーが抱く、トヨタへの期待でもある。
(文=生方聡/写真=高橋信宏)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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