メルセデス・ベンツCクラス【海外試乗記(後編)】
予想通りの「予想以上」(後編) 2007.06.13 試乗記 メルセデス・ベンツCクラス間もなく日本導入となる新型「Cクラス・セダン」。いたる所に手が加えられたニューモデルの乗り心地はどのように進化したのか。
目覚ましく進化したNVH
日本市場で量販が見込めることもあり「メルセデス・ベンツC200コンプレッサー」や「C180コンプレッサー」に強い興味があったが、用意されていた試乗車は残念ながら「C280」と「C350」(上等なグレードを目の前にして残念、とは失礼だが)だった。しかし興味の焦点はシャシー・セッティングの方向性と、全体的なクォリティの進化にある。
標準の可変ダンパー付き「C350アバンギャルド」をサンプルに、そのあたりを探ってみよう。ちなみにアバンギャルドとエレガンスの違いは純粋にフロント・デザインのみで、シャシーはタイヤサイズも含めてまったく同一である。
事前に公開された写真を見たとき、本音を言うとインテリアは直線的な要素が強調されすぎており、もう少し柔らかい雰囲気の方がよかったのではないか、なんて思ったりした。
よくよく観察すれば「Aクラス」あたりから導入されたと思しきディテールも散見される。しかし実物に座ってみると、予想以上に立体感のある造形であり、また「何のボタンがどこにあるか」といった配置や、もともと評価の高かったシートの仕上がりを含めて、紛れもないCクラスのインテリアと感じられ、気分は一気に肯定的になった。
乗り心地が大きく向上していることは市街地を走り始めてすぐに分かった。セッティングがソフトになったとか、サスペンション・ストロークがスムーズになったなどではない。そういった要素は旧型でも充分に確保されており、目に見えて進化した部分と言えばフロアの振動がほとんどなくなったことなど、不快なバイブレーションが劇的に削減されたこと。
旧型ではタイヤが鋭い突起を乗り越えたときに、バルクヘッドあたりからフットレストを通って左足にコツンと衝撃が伝わることも気になったが、それも随分と軽い。ボディ剛性は曲げ、捩れともに15〜16%程度の向上とのことだが、ステアリング系の剛性も上がっているため、体感上の剛性感は別物のように進歩している。
このように振動やハーシュネスが軽減され、剛性感が向上した結果、新型Cクラスはクリアで澄み切った乗り心地が印象的だ。そしてもちろん、よりフラットな姿勢にもなっている。全体的なテイストの変化としては、かなり重厚だった旧型に比べるとやや軽快な部類に感じられることが挙げられる。
“FRドライビング”を楽しめる
先代「W203型」の最後期型では太すぎるタイヤと意図的に上げられたステアリングのゲインのため、少々不自然なステアリングフィールを示すこともあった。ノーズの反応がクイックな反面、ヘタっとロールしてしまう点も、『CG』2007年4月号ジャイアントテストで評価されなかった要因だった。
個人的に新型でもっとも進化したと感じるのは、フロントサスペンションとステアリングではないかと思う。ギアレシオ自体は旧型からさらに速くなっているにもかかわらず、コーナリングパワーの立ち上がりはむしろ漸進的でレスポンスも正確さを増している。
ロールも量、スピードともに著しく改善され、市街地を流すだけでも旧型との歴然とした差を感じ取ることができる。大小のランナバウトを連続して通過してもボディの無駄な動きは最小限で、報道資料でスポーティな側面が強調される可変ダンパーは、“日常域の快適性”にも大きく貢献していると言えるだろう。
ワインディングロードを駆け回ると、新型の美点はさらに強調される。ハイパワーなC350でも前後同サイズのタイヤを履き(旧型はリアが太い)、重量配分が改善された「W204型」は前後のグリップバランスが良好で、とにかくアンダーステアの強かった旧型とはかなり方向性を異にする。マイルドにスライドを開始するリアタイヤに気をよくして、適度なペースで“FRドライビング”を楽しむことさえ、得意科目のひとつとなった。
予想した通り、予想以上の仕上がりだった
「これも良い、あれも良くなった」と書き連ねるしかないほど、実力が底上げされた新型Cクラスは、限界性能を他モデルと微に入り細を穿ち比較でもしない限り、可能性として文句を付けられる余地はほぼ皆無だろう。もしこのW204を気に入らないとおっしゃるならば、それはもう好みの問題と言っていい。
新型Cクラスの日本導入は夏頃を予定している。価格は欧州ではおおよそ旧型と同程度とされており、日本での事情もそう大きくは変わらないはずだ。そうそう、新型から日本向けRhdモデルも従来の南アフリカ製ではなく、伝統のジンデルフィンゲン工場で作られるらしい。ファンにはうれしいニュースである。
(文=CG八木亮祐/写真=ダイムラー・クライスラー日本/『CAR GRAPHIC』2007年5月号)
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八木 亮祐
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