メルセデス・ベンツCクラス【海外試乗記(前編)】
予想通りの「予想以上」(前編) 2007.06.11 試乗記 メルセデス・ベンツCクラスフロントマスクが大きく変更されスポーティな印象になった新型「Cクラス・セダン」。間もなく日本デビューとなるニューモデルは、いったいどうかわったのか。スペインからの報告。
スポーティモデルの証をセダンに
カムフラージュを施したテストカーがスクープカメラマンによって捉えられ始めた頃、その厚いビニールテープの上からでも、新型「メルセデス・ベンツCクラス」の“顔”がW203型のそれと大きく異なることは見て取れた。
ひょうたん型のライトを改め、Sクラスのようなつり目とエッジを強調したライン。しかしながらある意味、こういった外観の方向転換よりもさらに気がかりだったのは、シャシーの方はどうなのか、という点である。
AクラスやSクラスはモデルチェンジを経て飛躍的な進化を遂げているから、Cクラスもその流れに続くのは間違いない。では具体的にどういう風に? メルセデスはこのベストセラー小型セダンの新型をどう仕上げてきたのか? ここ最近でもっとも興味深いモデルチェンジのひとつと言えよう。
1月中旬にシュトゥットガルトにて行なわれたワールドプレミア発表会。その壇上に登ったニューCクラスを見て、「半ば知っている」と思っていた顔のデザインに驚いた。“クラシック”“エレガンス”系が、従来通りのメルセデスらしいグリル形状と、ノーズ先端に立つスリーポインテッド・スターを与えられているのに対して、“アバンギャルド”はグリルのド真ん中に巨大なスリーポインテッド・スターが埋め込まれているのだ。
「Aクラス」「Bクラス」を始め、「CLS」「R」など数え上げれば「グリルにエンブレム」派は今や多数派を占めるのであるが、歴史的にはそれは元々スポーティなクーペやロードスターに与えられてきた象徴。純然たるメルセデス・セダンにはノーズ先端にエンブレムが立っているイメージが強いために、違和感を覚えた。
しかしこの「スポーティモデルの証をセダンに」というデザイン・メッセージこそ、新型Cクラスの特徴をもっとも適切に表わしていると言えるのだ。
コンフォートに加えてスポーツも
新型車の説明はまずサイズから始めるのが一般的だが、今回はやや変則的ながらサスペンションから取りかからねばなるまい。新型Cクラスには前後に可変ダンパーが標準装備されている。
おおまかに言って低いダンピングレートであればソフトな乗り心地に、硬いダンパーはスポーティで安定性も上がるものの、ファームな乗り心地になる傾向がある。この相反するふたつのセッティングを、ひとつのダンパーで満たすのが、このザックス製の可変ダンパー(セレクティブ・ダンパー)である。
若い世代への訴求力を高め、世の潮流として人気のスポーティネスを獲得する一方で、メルセデスのコアバリューたる快適性を失わない方策として、可変ダンパーを選んだわけだ。
このセレクティブ・ダンパーは、バイパスを含む複数のオイル流路を持ち、車体が大きくロールしようとすると、バイパスバルブが閉じて減衰力(縮み側)が一段高くなる仕組みだ。
Aクラスのリアにもすでに可変ダンパーが装着されており、基本的には同じ構造と思われる。減衰力は主にストローク量に応じてメカニカルに変化するもので、電子制御バルブを持つタイプではない。
ただし、“アドバンスト・アジリティ・パッケージ”というオプションを選択すると、モンロー製の無段階可変ダンパーとなり、こちらはストローク量、スピード、加速度などをセンシングして、適切な減衰力をコンピューターが計算して反映させる。
このパッケージを装着すると、車高は15mm低くなり、強化スタビライザーや標準より速いステアリング・ギアボックス(14.5→13.5)が与えられる。
サスペンション形式はフロントが3リンク式、リアは190Eから続く伝統のマルチリンク式である。ともに旧型と同じ形式だが、バイブレーションの低減や正確なハンドリングの獲得を目指して大きく改良が加えられている。ステアリング・ギアボックスは前述のように標準では14.5というギアレシオだが、これも先代よりも6%速められた値である。 (中編につづく)
(文=CG八木亮祐/写真=ダイムラー・クライスラー日本/『CAR GRAPHIC』2007年5月号)

八木 亮祐
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。