シボレー・コーベットZ51(6MT)【ブリーフテスト】
シボレー・コーベットZ51(6MT) 2001.08.03 試乗記 ……663.0万円 総合評価……★★★★★■存在感の塊
コーベットの英誌広告でのウリ言葉。「Seriously powerful」「Torque of the devil」「Scene stealer with Hollywood looks」そしてヘッドコピーが「AMERICAN BEAUTY」。なるほど。派手な「ミレニアムイエロー」にペイントされたコーベットを前にすると、ハリウッドルックの“シーン・スティーラー”とはよく言ったもの。英語がうまい。
地面に座るがごとく低い位置にあるシートにペタンと腰かける。ブッといセンタートンネルと厚めのパッドに覆われたダッシュボードが、いかにもアメリカンスポーツ。ステアリングホイール中央や、メーター内の、シボレークロスとチェッカーフラッグが交差したマークが誇らしい。
先代の、堤防のような大仰なサイドシルは影をひそめたが、ボディの剛性感は逆にグッと高くなり、路面からのハーシュをバウンと飲み込む感じ。横置きリーフを用いた4輪ダブルウィッシュボーンは、ハイパフォーマンスモデル「Z51」ゆえに硬められるが、「超軽量マグネシウムホイール」が効いているのか、乗り心地は悪くない。
ドロロン……と大迫力の5.7リッターV8は悪魔のようにトルキー。6段MTが奢られるが、4速1500rpmで約55km/hだから、街なかでは上の2段は宝の持ち腐れ。高速道路では、6速1400rpmで約100km/h。安楽クルーズ。ところが、ひとたび鞭を入れれば、ノドを鳴らしていたプッシュロッドユニットが、俄然、6000rpm付近までスムーズに回り、「怒涛の」というよりずっとスマートにアメリカンビューティを走らせる。ハンドリングはシュアで、1870mmの全幅を感じさせない。やるときゃヤルぜ。中身をともなった存在感が頼もしい。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
コーベットは、いうまでもなく、1953年に初代がデビューしたアメリカを代表するスポーツカー。現行モデルは、1997年に登場した第5世代となる。一体成形されたペリメーターフレームに、FRP製ボディを載せる。シャシーも一新され、5リンク式リジッドだったリアサスは独立懸架となり、4輪ダブルウィッシュボーン/リーフとなった。エンジンは、オールアルミの「LS1」ユニット。冷却液が不足しても、シリンダーを交互に休止してオーバーヒートを防ぎながら走り続ける「リムホール」機能をもつ。トランスミッションをリアデフと一体化するトランスアクスルを採用、ほぼ50:50の前後重量配分を実現した。
(グレード概要)
コーベットは、「コーベット」(4AT:598.0万円)「コーベットコンバーチブル」(4AT:699.0万円)「コーベットZ51」(6MT:663.0万円)の3種類で構成される。「Z51」は、2000年モデルから導入されたハイパフォーマンスモデル。パワープラントは5.7リッターV8と共通だが、トランスミッションが6段MTとなる。足まわりが、強化されたリーフスプリングとダンパー、スタビライザーで硬められた「パフォーマンスサスペンション」となり、「超軽量マグネシウムホイール」が奢られる。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
大きなタコメーターと速度計を中央に配したメーターレイアウトは、古典的だが、見やすい。速度、回転数などをフロントスクリーンに投影するヘッドアップディスプレイを備える。メーターナセル向かって左にはヘッドアップディスプレイ用、右には、燃料系、オイル系、走行距離などのスイッチが並ぶ「サテライト」形式を採る。オートエアコンは、ドライバー、パッセンジャー側を別個に温度を設定することが可能だ。
(前席)……★★★★
柔らかく体を沈めた後にしっかりホールドする、抜群に座り心地のいいシート。運転席、助手席側ともに、腰まわりのサイドサポート、同じく腰付近のシートバック下部、上部の盛り上がり調整と、3種類のランバーサポートが備わった贅沢なものだ。ハードコーナリング時には、カートのように脇腹で上体を支えるカタチになる。
(荷室)……★★
床面最大幅160cm、奥行き105cmと、ガラスハッチ下に、広大なスペースを有するコーベット。フロア下には、横×縦×深さ=60×50×33cm(いずれも最大値)をはじめ、工具、12連奏CDチェンジャー、パンク修理剤などを収納した3つの小物入れ(?)が用意されるが、いびつな形状ゆえ、荷室としてはあまり期待できない。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
5.7リッターオールアルミ“スモールブロック”を搭載。先代で一時DOHC化されたものの、現行モデルに搭載される新開発「LS1」ユニットは、伝統にしたがってプッシュロッド式バルブ駆動方法を採る。独特のビートを刻みながら、しかしスムーズに6000rpmのレッドゾーンに達する。48.4kgmというトルクもちなので、たとえば渋滞のなかでは、アイドリングで1.5トンの車体をクリープさせることも可能だ。6段のスティックシフトを操って、V8を堪能できるのが「Z51」の特権。シフトノブは短いが、トラベルは大きい。そのうえ握りが四角く大きいので、なおさら大味に感じるシフトフィール。とはいえ、大味もアジには変わりない。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
先代より飛躍的に向上したボディ剛性の恩恵もあって、ハードサスペンションモデルとはいえ、乗り心地はいい。よくできたシートの影響も大きい。ステアリングホイールを握ると、1870mmの全幅を感じさせない、いい意味での「閉所感」あり。ハンドリングはシュアで、外観に違わずスポーティ。その気になれば、暴れるリアをグッと抑えてガスペダルを踏み込む……なんて、マッチョなドライビングもできる。
(写真=郡大二郎)
【テストデータ】
報告者: webCG青木禎之
テスト日: 2001年5月30日
テスト車の形態: 広報車
テスト車の年式: 2001年型
テスト車の走行距離: 5504km
タイヤ: (前)245/45ZR17 89Y/(後)275/40ZR18 94Y(いずれもGoodYear Eagle F1GS)
オプション装備: --
テスト形態: ロードインプレッション
走行状態: 市街地(3):高速道路(6):山岳路(1)
テスト距離: 254.8km
使用燃料: 42.4リッター
参考燃費: 6.0km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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