第315回:「キャデラックSRX」ウラ事情
アメ車は本当に復活するのか?
2007.03.29
小沢コージの勢いまかせ!
第315回:「キャデラックSRX」ウラ事情アメ車は本当に復活するのか?
なぜいまさら右ハンドルなのか?
最近いい話を全然聞かないアメ車。GMがイマイチだとか、クライスラーが売却で労組が反対してるとか、なかなかうまくいかない。
でもまあ、せっかくよくなりかけてるのに、自らのしょぼい体面と利益確保に走る日本プロ野球のオーナー会議よりよっぽどいい気もするけどね。まさに木をみて森をみないの典型。きっと本気でプロ野球業界をよくしようと思ってないから、サラリーマン的保身に走るんでしょう。全体の状況を見ず。あとでどうなっても知らないよ〜っと!
ってなわけで話は戻るけど、アメ車の最新事情を聞くべく、「キャデラックSRX」の試乗会に行ってまいりました。
SRXってのはミディアムサイズの高級SUVで、価格的には「ポルシェ・カイエン」や「BMW X5」とタメをはる大黒柱系。ハッキリいって今のプレミアムブランドなら、このヘンを売っとかなきゃツラいわけだけど、そしたらななんと待望の右ハンドルが入ったという。
たまたま現場にいた、事情通のXさんを直撃してみました〜。Xさんってのはアメ車業界20年以上の辣腕業界人。愛車は常にアメ車で、一時アメリカに住んでいたこともある。
小沢: Xさん、なんでいまさら右ハンドルなんですかね?
X: 僕に聞いたってわかんないよ。向こう(アメリカ側)の都合なんじゃないの。
小沢: リクエストは出してるんですよね。右ハンドルの。
X: 昔は出してたみたい。ただキャデラックの場合、右を出したからって大幅に売り上げを伸ばせるって思われても困るんだよね。左ハンドルのお客さんと右ハンドルのお客さんはまったく違うんだよ。「左じゃないと」って人も多い。
小沢: いまだにそうですか。
X: そうだよ。左側に駐車しやすいとか、ホイールをギリギリまで寄せられるとかメリットもあるし。それに最近ではETCがあるから、料金所でも問題ないでしょう。
小沢: たしかに。
X: 右ハンドルの設定が有効なのはやはり女性ユーザーが多い場合だよね。おそらくVWゴルフとか、プジョーとかっていう輸入車ブランドは、右ハンドル導入が拡販に繋がりやすい。でもキャデラックの場合は必ずしもそうではないわけ。ブランドがかかえるユーザーが違うから。その上GMの場合、右ハンドルを導入したわりに売れなかった「サターン」の失敗もあるから、ほいほいと踏み切れない。
中国の影響で右ハンドル化? でも中国って左ハンドルじゃ……
小沢: じゃあなんでいまさら右ハンドルのSRXなんですか。
X: こちらの想像でしかないけど、きっと中国市場を考えたからだろうね。GMが去年、北米市場の落ちを中国市場の伸びで補ったように北米メーカーでアジア全体の重要性が増してる。
小沢: でもなんで? 中国は左ハンドルの国じゃないですか。
X: だから“アジア全体”ひっくるめての日本なんだよ。今後、北米以外にも積極的に打って出るっていう、ひとつの意思表示なんじゃないじゃないのかな。
小沢: これからますます日本向けのアメ車が出てくる可能性があると。
X: そう。
小沢: なるほど。そういう意味では楽しみですよね。「フォード・マスタング」とか「シボレー・コルベット」みたいにわかりやすいアメ車はいまだファンが多いし。
X: (アメ車好きとしては)そうあってほしいね。
ってなわけで意外や意外、中国つながりで日本市場を真剣に見つめ直してきてるアメリカ車。ちなみにSRXに改めて乗ってみると、今回からインテリアのクオリティが大幅に上がり、かなりブランド物っぽい品質になってることを実感しちゃった。
さらに走りも「ポルシェ・カイエン」みたいなスポーティさはないものの、キャデラックならではの滑らかな走りやステアリングフィールに好感を持てた。
個人的にはカイエン、売れ過ぎでちょっと目立つようになってきただけに、今回のSRXには興味深いものがありましたな。
ま、お金が余ってればですけどね(笑)。
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
-
第454回:ヤマダ電機にIKEAも顔負けのクルマ屋? ノルかソルかの新商法「ガリバーWOW!TOWN」 2012.8.27 中古車買い取りのガリバーが新ビジネス「WOW!TOWN」を開始。これは“クルマ選びのテーマパーク”だ!
-
第453回:今後のメルセデスはますますデザインに走る!? 「CLSシューティングブレーク」発表会&新型「Aクラス」欧州試乗! 2012.7.27 小沢コージが、最新のメルセデス・ベンツである「CLSシューティングブレーク」と新型「Aクラス」をチェック! その見どころは?
-
第452回:これじゃメルセデスには追いつけないぜ! “無意識インプレッション”のススメ 2012.6.22 自動車開発のカギを握る、テストドライブ。それが限られた道路環境で行われている日本の現状に、小沢コージが物申す!?
-
第451回:日本も学べる(?)中国自動車事情 新婚さん、“すてきなカーライフに”いらっしゃ〜い!? 2012.6.11 自動車熱が高まる中国には「新婚夫婦を対象にした自動車メディア」があるのだとか……? 現地で話を聞いてきた、小沢コージのリポート。
-
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
NEW
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
NEW
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。 -
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.4デイリーコラム「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。
