シボレー・コルベットZ06(FR/6MT)【短評(後編)】
GMを応援したくなる(後編) 2006.07.22 試乗記 シボレー・コルベットZ06(FR/6MT) コルベット史上、最強最速と謳われる「Z06」に試乗。511psを発生する7リッターV8エンジン搭載の新型には、味わい尽くすことのできない世界があるという。手に汗にぎる圧倒的な加速
(前編からのつづき)7リッターV8なりの大トルクは、そこにはなかった。拍子抜けしつつ、でも油断は禁物とセカンドにシフトアップし、今度は右足を深く踏み込む。
鼓膜を突き破るような爆音とともに、Z06は3000rpmあたりでスーパースポーツの加速を演じはじめると、4000rpmではその世界を完全に超越し、重力をかなぐり捨てて、前方に吸い込まれていく。上半身がシートバックにめり込んだ自分は、どこかに飛ばされそうな気分になって、子供のように汗ばんだ手でステアリングをしっかり掴んでいた。
ビッグスポーツの圧倒的な加速感と、ライトウェイトスポーツのレスポンスが、なぜか同居している。別のカテゴリーでいえば、1リッタークラスのモーターサイクルを思わせる。いまやパワーウェイトレシオで1を切るモデルもあるあの世界に、Z06のダッシュは相通じるものがあるのだ。
ウインドスクリーンに速度や回転数を映し出すヘッドアップディスプレイは、このZ06にも装備される。フツーのコルベットではアミューズメントに思えたこのアイテムが、Z06では必要不可欠な機能に変わっていた。あまりに加速が凄すぎて、視線をメーターに落とす余裕がないからだ。
でもZ06、けっして“直線番長”ではなかった。
タイヤはノーマルより3〜4サイズ太くなっているのに、まっすぐ走る。ブレーキは、それだけで感涙にむせびそうなほど効く。Z06だけに装備されるドリルドディスクとフロント6/リア4ポッドのキャリパーのおかげもあるが、それ以上に軽さの恩恵をひしひし感じる。
右足に細心の注意を払えば、コーナリングスピードはけっこう高い。低重心のプッシュロッドV8にトランスアクスルを組み合わせるなど、パッケージングの段階で運動性能を追求した効果を痛感する。でも少しでも右足に力を込めれば、リアタイヤは小躍りするようにアウトへと滑り出していく。自分レベルの技量ではとうてい味わい尽くすことのできない世界が、そこにはあった。
世界一の自動車メーカーの底力
少しだけ冷静さを取り戻した心と体で、尋常ならざるパフォーマンスを味わいながら、世界一の自動車メーカーは、いざとなったらこういうクルマを作れなければイケナイと思った。
コルベットの送り手、ゼネラルモーターズ(GM)が苦境に陥っているのは、誰もが知る事実だ。最近のニュースでは、カルロス・ゴーン率いるルノー日産グループと提携交渉を始めるというから、相当深刻なのだろう。
数年後には、わがトヨタがGMを抜き、世界一の座につくのかもしれない。でも彼らに、コルベットZ06のようなクルマが作れるだろうか。
僕たちはクルマが好きだ。速いクルマ、カッコいいクルマが大好きだ。だからこそ世界一の自動車メーカーには、コルベットZ06のようなクルマを平気で作って売れる、器の大きさを持っていてほしい。
たった1台のスポーツカーに乗っただけなのに、僕は俄然、GMを応援したくなった。
(文=森口将之/写真=高橋信宏/2006年7月)
・シボレー・コルベットZ06(FR/6MT)(前編)
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000018392.html

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
レクサスLFAコンセプト
2025.12.5画像・写真トヨタ自動車が、BEVスポーツカーの新たなコンセプトモデル「レクサスLFAコンセプト」を世界初公開。2025年12月5日に開催された発表会での、展示車両の姿を写真で紹介する。 -
NEW
トヨタGR GT/GR GT3
2025.12.5画像・写真2025年12月5日、TOYOTA GAZOO Racingが開発を進める新型スーパースポーツモデル「GR GT」と、同モデルをベースとする競技用マシン「GR GT3」が世界初公開された。発表会場における展示車両の外装・内装を写真で紹介する。 -
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。































