MINIクーパーS (FF/6MT)【ブリーフテスト】
MINIクーパーS (FF/6MT) 2007.03.24 試乗記 ……330万9000円総合評価……★★★★
BMW製エンジンを搭載して一新された2代目「MINI」は、デザインの大きな変更はないが、中身がフルモデルチェンジされた。スポーティモデルの「クーパーS」に試乗して進化を試す。
もっと増えていい
日本車のフルモデルチェンジというと、旧型の姿が思い浮かばないほど大胆にスタイルを変えてきたり、バッジのデザインも違ったりと、本当に名前を受け継ぐ意味があるんだろうか? と考えさせられる場合が少なくない。その点、輸入車は「ひと目で○×△□とわかるフォルムを受け継ぎながら……」の常套句どおり、独自のアイデンティティを守り続けているモデルが多い。
しかし、フルモデルチェンジの前後でここまで見た目が変わらないのは珍しい。もちろん、見る人が見れば違いは明らかなのだろうが、世の中のほとんどの人は気づかないと思うし、そもそも変わってほしいと考える人もごく少数のはずだ。
それを自動車メーカーがモデルサイクルの都合だけで完成度の高いデザインを変える必要はないし、そういったクルマなら、中身だけを時代の要求に即してバージョンアップすればいいわけである。
実際、ニューMINIでは、見た目の変化の少なさとは裏腹に、さまざまな部分に手が加えられて、クルマとしての魅力が確実にアップしている。こういうやり方、もっと増えてもいいんじゃないかな、と私は思う。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
BMWの一ブランドとなった「MINI」は、2002年3月2日「ミニの日」から、日本への導入が開始された。
初代のエンジンは、BMWとダイムラークライスラーとの合弁会社が生産する1.6リッター直4SOHC“ペンタゴン”ユニット。チューンによって、ベーシックグレードの「ワン」(90ps)、スポーティな「クーパー」(115ps)、そして同年5月にデリバリーが開始されたスーパーチャージドモデル「クーパーS」の3種類がラインナップされた。
2007年2月24日、フルモデルチェンジした2代目「MINI」は、デザインは従来モデルを踏襲しながらも、エンジン、足まわりなど、コンポーネントのほとんどを新設計。
日本仕様は、BMW製可変バルブタイミングシステムを備えた、1.6リッター直4エンジン(120ps/16.3kgm)搭載の「クーパー」(6AT)と、スーパーチャージャーにかわりターボチャージャーによる過給を受ける1.6リッター直4ユニット(175ps/24.5kgm)の「クーパーS」(6MT)が先行発売され、その他は予約注文のみ受け付け、5月中旬以降にデリバリー予定。
(グレード概要)
スポーティな「クーパーS」には、スポーツ・サスペンション、EBD付きABS、CBS(コーナリング・ブレーキ・コントロール)、オートマチック・スタビリティ・コントロール+トラクション(ASC+T)が標準で備わる。さらに、任意で解除もできるDSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)もオプション設定。坂道発進を補助するヒル・アシスト機能も、DSCに組み込まれる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ装備)……★★★★
MINIのインテリアを特徴づけているアイテムといえば、ダッシュボード中央にドーンと置かれたスピードメーターだ。
旧型よりもさらに巨大化した丸いメーターのなかには、オーディオのディスプレイやスイッチが統合され、また、オプションとして用意されるナビゲーションシステムを選択すれば、この中に表示部が収まることになる。
スピードメーターとしては、その使いやすさはいまひとつで、どちらかといえばインテリアのアクセントと化しているが、反面、本来の役割を超える存在となっているのも事実である。
加えて、パワーウインドーやインテリアライトなどの操作に用いるトグルスイッチ、楕円形のフレームが特徴的なドアパネルなど、MINI独自の世界が表現されている。
(前席)……★★★
クッション、バックレストともに多少サイドサポートが張り出しているフロントシートは、座ってみるとサポートが適度で、それでいて窮屈な感じがない。シートのハイトアジャスターとチルト&テレスコピックステアリングのおかげで、自然なシートポジションがとれるのもいい。
ステアリングコラムを調節すると、そこに載っているレブカウンターがいっしょに動くのはいいのだが、私の体格だとどうしてもレブカウンターの上の方がステアリングホイールで蹴られて(隠れて)しまうのが気になった。
運転席からスピードメーターを確認するには視線を大きく移動する必要があり、お世辞にも機能的とはいえない。それを補うように、レブカウンターの小窓に速度が表示できるのが救いである。
(後席)……★★★
今回のフルモデルチェンジで、著しく改善されたのが後席のスペースだ。以前は大人が長時間座らせられるのは辛かったが、新型では、足元こそ余裕は感じられないものの、膝のまわりやヘッドルーム、横方向のスペースに窮屈さはなく、乗り心地に関しても、突き上げなどが気になることもなかった。
欲をいえば、腰の部分のサポートがもう少しほしいのと、ロードノイズによる籠もり音が軽減されると、さらに快適になると思う。
(荷室)……★★★
標準状態で奥行きが40cm弱と、決して広いとはいえないラゲッジスペースだが、テールゲートを持つハッチバック形式を採用し、後席を左右別々に倒すこともできるので、使い勝手はそう悪くない。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
新型MINIクーパーSに搭載されるのは、BMW製の1.6リッター直噴ターボエンジンで、ターボチャージャーとしては低回転から性能を発揮するという1基のツイン・スクロール・ターボを採用している。
その印象は、ボトムエンドこそ余裕はないものの、1000rpmも回ってしまえば1.6リッターという排気量から想像する以上のトルクを発揮し、これが2000rpm以上ともなると、力強さを増すから頼もしい。高いギアを選択していても、アクセルを踏み込めばしっかり加速してくれるから、マニュアルなのにズボラな運転ができるのは楽である。
ターボラグはさほど気にならず、力強い加速は5000rpmを超えても衰えを見せない。気持ちよく回転を上げていくタイプではないのが唯一物足りない部分か?
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
BMWファミリーの一員であるMINIゆえ、新型にはランフラットタイヤが標準装着となっている。そのせいもあって、首都高速の継ぎ目などを通過するとバネ下がややバタつく傾向があった。
しかし、MINIの乗り心地そのものは、旧型に比べて明らかにマイルドになっていて、もっともスポーティなクーパーSであっても、辛い思いをしないで済むのは大きな進化だ。
それでいて、ハンドリングの軽快さは健在である。街中でもキビキビとした動きを見せるし、ワインディングロードではそれなりにアンダーステアを示すが、高い回頭性とロールを抑えた安定した姿勢により、気持ちよく飛ばすことができた。快適さとスポーティさの両立という点が、ニューMINIの魅力をさらに押し上げることだろう。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2007年2月21日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2007年型
テスト車の走行距離:2902km
タイヤ:(前)205/45 R17(後)同じ(いずれもダンロップSP SPORT 01)
オプション装備:3本スポーク・スポーツレザーステアリング(2万3000円)/シートヒーター(5万2000円)/インテリアカラー・ダークグレー(2万6000円)/インテリア・サフェース・ブラッシュ・アロイ(2万6000円)/自動防眩機能付ルーム・ミラー(2万5000円)/17インチクラウンスポークアロイホイール(12万円)/ホワイトボンネットストライプ(1万7000円)/クロームラインエクステリア(1万5000円)/メタリックペイント(5万5000円)
走行状態:市街地(2):高速道路(7):山岳路(1)
テスト距離:496km
使用燃料:50.81リッター
参考燃費:9.76km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
ポルシェ911タルガ4 GTS(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.26 「ポルシェ911」に求められるのは速さだけではない。リアエンジンと水平対向6気筒エンジンが織りなす独特の運転感覚が、人々を引きつけてやまないのだ。ハイブリッド化された「GTS」は、この味わいの面も満たせているのだろうか。「タルガ4」で検証した。
-
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
NEW
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
NEW
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。 -
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.4デイリーコラム「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。






























