シトロエンC5 2.0/V6エクスクルーシブ(4AT/4AT)【試乗記】
やっぱりシトロエン 2001.10.13 試乗記 シトロエンC5 2.0/V6エクスクルーシブ(4AT/4AT) ……316.0/422.0万円 サイズがひとまわり大きくなって登場した「エグザンティア」の後継モデル「C5」。進化したシトロエンのお家芸「ハイドラクティブIII」をもつ、2リッター直4モデルと3リッターV6モデルに、自動車ジャーナリスト河村康彦が乗った。とことんハッチバック
2001年7月25日に日本に上陸のシトロエン「C5」は、昨年のパリサロンでデビューしたニューモデルだ。
同9月13日から23日にわたって開催されたフランクフルトモーターショーでは、このクルマの後を追うように2BOXコンパクトカーの「C3」もヴェールを脱いだ。どうやらシトロエンは、新世代乗用車にはこうしたアルファベットと数字の組み合わせを与えていくらしい。
C5は事実上、エグザンティアの後継モデルと位置付けられるクルマ。日本導入の2モデルは、3リッターのV型6気筒エンジンと2リッターの直列4気筒エンジンを搭載する。本国フランスは「乗用車の過半数をディーゼルエンジン搭載車が占める」という国だが、不当なほどに“ディーゼル人気”が低い日本のマーケットには、やはりこれからも当分ディーゼル車が導入されることはなさそうだ。
C5のルックスは、ご覧のようにエグザンティアとは「似ても似つかない」もの。大きな目玉が印象的なフロントマスクは、マイナーチェンジによって顔付きを大きく変えた(というよりも、こちらが“C5顔”を意識したのだ)クサラともあい通じる。
興味深いのは、一見「4ドアサルーン」に見えるボディのデザインが、実は大きなテールゲートを背負った5ドアハッチバックであること。フラッグシップのXMにまでテールゲートを与えたシトロエンは、とことんハッチバックボディが好きなメーカーなのである。
昔のシトロエンファンが喜ぶような先進性とはもはや無縁の、どちらかといえばオーソドックスなデザインを持つインテリアは、大柄な男性4人にとって十分余裕の広さ。全幅が1770mmと大きめであることもあり、後席3人がけもそれほど無理ない、幅方向への広がりも特徴だ。
宇宙船のような
スタートの一瞬の力強さは、3リッターも2リッターも想像するほどの大差はない。2リッターモデルが健闘するのは、主に2気筒分のフリクションが消えるからだろう。ただしスタート後の加速の滑らかさや静かさ、そして力強さは、やはりそれなりに違う。パワーシートやキセノンヘッドライト、ESPなどといった装備の違いもあるが、主にパワーユニットが占めることになる106.0万円の価格の差は、こうして日常的な走りのシーンでもちょくちょく顔を出す。
ところで、C5というクルマの走りの最大の特徴は、やはり独自の油空圧サス“ハイドラクティブ”が生み出すフットワークテイストである。
実は、せいぜい50km/hまでという速度が支配的な市街地では、このサスペンションはなかなか本領を発揮しない。特殊なサスを使っていると予め知識としてもってはいても、「だからと言って何が違うの!?」と、そう突っ込まれかねない印象だ。
けれどもそれよりも速度が増し、70km/hを越えるような領域になると、すべての印象が変わる。路面の大きな凹凸を補修しながら圧倒的なフラット感でクルージングするサマは、極端に言うとまるで「宇宙船に乗っている」よう!(乗ったことはないけれド……)。そのうえニューモデル「C5」は、110km/hを超えると、車高がフロント/リア=15/11mm下がるのだ。
ということで、見た目は往年のファンを喜ばせるようなアバンギャルドなものでも、多くの日本人に好まれそうなコンサバティブなものでもないこのクルマは、しかし、やっぱりシトロエンの作品なのである。
(文=河村康彦/写真=難波ケンジ/2001年10月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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