第309回:コージの勝手にジュネーブ速報(その1)
和田師匠に直撃! エレガントアウディ復活の真相
2007.03.08
小沢コージの勢いまかせ!
第309回:コージの勝手にジュネーブ速報(その1)和田師匠に直撃! エレガントアウディ復活の真相
アウディの4番バッターにインタビュー
ハロー! 今ジュネーブです。そう、久々の海外モーターショーに来ております。フランクフルトからクルマじゃなくって電車でひと飛ばし、ジュネーブショーに来てるってわけ。つくづくヨーロッパって一つの大国だわ〜。
早速ショー報告ですけど、今回の注目はなんといっても「アウディA5」! アウディ久々のミディアムサイズクーペで、全長4.65mというデカめのボディに、3.2リッターV6のガソリン直噴や2.7リッターV6の直噴ディーゼルを搭載するクワトロモデルだ。
同時にスポーツモデルの「S5」も発表されて、コイツは、ななんと354bhpの直噴V8を搭載する。いやー、こりゃまた過激だわ〜。
ってな話はさておき、A5のポイントはなんといってもデザイン。ハッキリいって“やっと”心のソコからカッコいい! と言い切れるデザインになったと思う。現行「A6」から始まった例の「デカグチ」のシングルフレームグリルが、見事に全体のフォルムに調和してるからだ。
しかもこれを描いたのは俺が勝手に“師匠”と呼んでいる、アウディAGシニアデザイナーの和田智さん。
直撃いたしましたっ!
小沢: 師匠! やりましたね。ハッキリいって素直にカッコいい! シングルフレームグリルも見事に調和してるじゃないですか。
和田: うーん、僕としてはA6にも誇りを持ってるけど、たしかにそういう声は多いよ。正直うれしいね。
小沢: しかも記者会見でアウディデザイン部門トップのワルター・ダ・シルヴァさんが「私のキャリアの中で一番美しい!」なんてホメてましたよね。あれは凄い。
和田: あれには僕も驚いた。彼のアルファ時代からの作品を含めてのことだからね。がんばったかいがあったよ。
小沢: 「A6」「Q7」に続いて和田さんの作なんでしょう。ホントにアウディの4番バッターになったってことですよね。
和田: いやいや僕もベテランの領域に入ってきたってこと。これからは若い人も育てないと。
“クラシック”はクーペの鉄則
小沢: それはさておきなんでこんなに見事にグリルが収まってるんですか。
和田: まず全体がロープロファイル化して、シングルフレームグリルの“V”ラインに対して、全く逆の“ハ”の字型シェイプを持つようになった。つまり全体的には“X”のラインを描いてる。これによってシンプルさと強みが出た。
小沢: なるほど。すげぇわかりやすい。
和田: それからサイドビューの変化も大きいよね。クワトロを意識して、4つのアクスルでちゃんと踏ん張っていることを表現している。
小沢: このサイドの流れるようなラインですね。このへん、たしかにキレイなんですよね。そういえば、記者会見の資料にもさかんに“クラシック”かつ“エレガント”というキーワードが出てましたけど。
和田: その通り。クラシックというテーマは今やクーペの鉄則だからね。ヨーロッパでは歴史的価値を大切にするし、そもそもA5は80年代の「アウディ・クワトロ」をイメージしているから。サイドの踏ん張りなんてまさにそうだし、Cピラーのアーチとショルダーラインが織り成す3角形なんてクワトロそのもの。
小沢: なるほど。確かにクラシックな感じがするんですよね。でも全然レトロじゃないし、俺はこっちのが好きだけどなぁ。
和田: 単純なクラシックではなく、今のデザインの中で昔のモチーフを消化してるってことだからね。新たな解釈を施してるわけ。実際、サイドの下のラインなんて現行A6と変わらない。
小沢: あ、ホントだ。今までの流れを抑えつつ、新しい“クラシック”になってると。
和田: まあそんな感じだね。
見事なデザイン修正法
小沢: あとはなんでしょう。
和田: そうだなぁ。たとえばシングルフレームグリルが平らになって、全体がロングホイールベース化してる。これはエンジン搭載位置がうんと後ろになったからできたこと。
小沢: なるほど。オーバーハングが短くて、横から見ると全体的にどっしりしてる。つまり、中身の変化も大きいんですね。
和田: その通り。アウディは基本的にデザインだけのためのデザインはしないから。
小沢: しかし、A6の発表から丸3年。時間がデザインを熟成させた部分ってきっとありますよね。
和田: それはその通りだと思うよ。
ってなわけで、見事、昔のエレガントさを取り戻してきているアウディの新デザイン。今年中に出るっていう新型A4も楽しみだ。
それよりつくづく見事だと思ったのは、ヨーロッパメーカーのデザイン修正法だ。今までの主張を曲げずに、上手にテイストを変えている。
というか、まさに漬物が時間をかけて、熟成し、まわりとなじみ、調和していくよう。つくづくデザインってのはリクツじゃない。生き物だってことですなぁ。
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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