シトロエンC2【海外試乗記】
運転上手のエンジニアがつくった!? 2003.10.05 試乗記 シトロエンC2 1.4iVTR(5MT)&1.6i16V(5MT) コンパクトハッチ「サクソ」の後を継ぐ、シトロエンのニューモデル「C2」。日本に導入予定の2モデルに乗った自動車ジャーナリストの河村康彦は、「実用性とスポーティを兼ね備えた、魅力ある1台」と語る。黒い弾丸
例年どおり、盛大に開催された2003年のフランクフルトショーで正式デビューとなった、シトロエン「C2」。ネーミングが示すように、(とりあえず?)同社の末っ子モデルとなる。骨格は、PSA(プジョー・シトロエン・グループ)が推進するプラットフォーム戦略のなかで、もっともコンパクトなユニット「プラットフォーム1」が使われる。同じプラットフォームを用いるモデルには、日本でもすでにリリースされた「C3」シリーズがある。C2は、C3のプラットフォームから、ホイールベースを150mm短縮したもの。2315mmの値は、ライバルたるフォルクスワーゲン「ルポ」と較べて5mm短い。
3666mmの全長と1659mmの全幅をもつC2のルックスは、コンパクトでありながら、なかなか存在感に富んでいる。こうした小さなクルマの場合、デザインアピアランスはとかく「キュート」といった表現があてはまりがちになるもの。だが、C2はそうした愛らしさを備えながら、同時に男っぽい雰囲気も醸し出す。特にボディカラーがブラックになると、精悍な印象がグンと高まる。シャープなクサビ型フォルムが個性的。黒いC2は、“弾丸”の印象が強い。
クレバー・パッケージング
室内は、ポップなイメージでまとめられていて楽しい。ダッシュボードのデザインは、基本的にC3シリーズのそれと共通。しかし、ドアトリムやドアハンドル、ATセレクターやシートにビビッドなカラーがあしらわれ、“ファミリーカー”たるC3より、はるかにスポーティで若々しい。ドアハンドルとATセレクターは透明な樹脂製で、21世紀の“イマ風”をアピールする。
ところで、ボディがコンパクトになればなるほど、人間と荷物のスペースのせめぎあいは激しくなる。C2のリアシートは、クッションが薄めなのでショック吸収性はフロントのそれより落ちるが、スペースは大人ふたりに十分。ただし、さすがにその状態で、大量の荷物を積み込むことはできない。
しかしこのクルマの場合、2人、もしくは3人乗りならば、まったくハナシは別だ。C2のリアシートには、なんともクレバーなシートアレンジが採用された。パズルのような、小難しい細工が施されたわけではない。シートバックを前に倒し、さらにクッションを跳ね上げる、というシンプルな構造と操作手順によって、驚くほど「荷物のための空間」を生み出すことができるのだ。しかも、テールゲートはナンバー上の見切り線を境に、上下に両開きするデザインを採用。下側のゲートは100kgの耐荷重をもち、ベンチ代りにも使える。さらに、三角表示板を収めるポケットも内蔵という具合に、使い勝手が考慮された。日米のように、宅配便が普及していないヨーロッパでは、コンパクトカーでも大きな荷物を手軽に運べることへの要望は高いのである。
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感心するセンソドライブ
走りもGOOD! だった。「2004年春にも日本に導入予定」とシトロエン・ジャポンがいう1.4&1.6リッターモデルの心臓は、C3に搭載されるもの。だがもちろん、C3より車重が軽いぶん、機敏に加速してくれる。特に、少々動きが鈍い日本仕様の1.4リッターC3に較べると、C2の1.4リッターモデルは、とても同じエンジンを搭載しているとは思えないほどに活発だ。C3が用いるトルコンATは、やはり効率やフィールがイマイチなのだ。2ペダルの“ロボタイズMT”「センソドライブ」との組み合わせになって、このエンジン本来の実力が発揮された印象が強い。
さらに、センソドライブのシフトプログラムのデキにも感心した。自動でシフトするオートモードでも、シフトタイミングはおおむね自分の望むタイミング通り。それゆえ、こうしたシステムでは不可避なシフト時の加速Gの途切れも、あまり気にならない。この種の2ペダルMT車で積極的にオートモードを使う気になったのは、(ボクは)C2が初めてだ。もちろん、ステアリング奥のパドルを操作すれば、思いのままにシフト可能。ギアチェンジは並みのドライバー以上に素早いし、パドルが固定式なのもよい。前述プログラムといい、パドルの設計といい、C2のセンソドライブはいかにも「運転上手のエンジニアが、入念な走行実験の末に完成させた」ようだ。
売れて欲しい!!
フットワーク・テイストもスポーティだ。ステアリング操作に対して、小気味よくノーズの向きを変えてくれる。同時に安定性も高いから、安心してアップテンポなスポーティ・ドライビングを楽しむことができた。EPS(電動パワーステアリング)は、ほんの気持ちだけ中立付近の落ち着きが甘いように感じたが、EPS車がとかく失いがちな路面とのコンタクト感も、このクルマの場合は問題ナシ。
嬉しかったのは、16インチという贅沢なシューズを履いた1.6リッターモデルの乗り心地が、想像していたよりずっと優れていたこと。むろん、けっして「ソフト」というわけではないが、ある程度スピードが乗れば予想(期待も)しなかったフラット感すら味あわせてくれる。前輪切れ角が小さくなるため、最小回転半径が5.4m近くと大きくなるのは痛いが、「大径シューズを履いたクルマのホイールベース中央に座る」メリットを実感できるのが、C2 1.6リッターの乗り味と報告することができる。
というわけでC2は、「こんなクルマが日本でも売れて欲しい!」と、心から思える実力を秘めた1台だ。最新モデルを武器に日本の取り扱いディーラーは、今度こそ腰を据えて「シトロエン」というブランドを定着させて欲しい。
(文=河村康彦/写真=シトロエン・ジャポン/2003年9月)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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