ホンダCR-V ZXi(4WD/5AT)【ブリーフテスト】
ホンダCR-V ZXi(4WD/5AT) 2007.03.02 試乗記 ……366万9750円総合評価……★★★
ライトクロカンのはしりといわれる「ホンダCR-V」の現行3代目に試乗。サイズが拡大され、都会的なスタイリングになったというが、乗り心地、ハンドリングはどう変わったのか。
サイズとデザインは新しいけれど
販売実績からすれば当然のことだが、主にアメリカを中心とした、日本の何倍も売れる市場のニーズを重視して新しい「CR-V」はますますサイズが大きくなり、そしてデザインも主張の強いものになった。初代の持っていたカジュアルなSUVというキャラクターはだいぶ薄らいでしまったが、時代の流れとあらばそれも致し方ないところ。その代わりとなる何かをもたらしてさえくれればいい。
しかし残念ながら、新型CR-Vがもたらしてくれるものが何なのか、今回の試乗ではハッキリと掴むことができなかった。サイズアップした分、確かに空間的には広くなった。けれどそれ以外、何か語るべきところはあるだろうか。
もちろん個人的な好き嫌いはあるだろうが、そのスタイリングが初代のような新鮮味を持っているとは思えないし、じゃあ高級感を増したかと言えばそういうわけでもない。同じようなオンロード指向のSUVが増えた今となっては、その走行性能は悪くはないが秀でているとも言えないだろう。要するに、最初に書いたように、アメリカ市場を意識してサイズとスタイリングが変わった。それだけだ。
日本以外の国で、いやあるいはサイズを気にしないなら日本ででもいいのだが、いずれにせよ気負わない日常の足として使うならば、ユーテリィティ性は高く悪くない選択と言える。しかし過度に思い入れたり、あるいは初代がそうだったように生活を豊かに変えてくれそうな期待を抱いたりして手に入れる対象ではないというのが、新型CR-Vの評価である。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1995年に初代がデビューした“Comfortable Runabout Vehicle”こと「CR-V」。「シビック」のプラットフォームをベースとした街乗り向けライトクロカンのはしりは、隠れたヒット商品として国内外で成長、2001年発売の2代目を経て、今では世界160か国で累計販売台数250万台(2006年8月まで)を記録する。
2006年10月13日に発売された3代目は、セダンの快適性、クロカンの機動性、ミニバンのユーティリティ性というコンセプトをキープしながら各所をリファインして登場。
エンジンラインナップは、先代同様2.4リッター直4「i-VTEC」のみで、5段ATを組み合わせる。リアルタイム4WDに加え、FFモデルも用意する。
(グレード概要)
4WDモデルは、下から「X」「ZX」「ZXi」の3グレード。
上級グレードの「XZi」は、「XZ」の装備に加え、インテリジェント・ハイウェイ・クルーズコントロールやマルチインフォメーションディスプレイ、オートライトコントロールなどが備わる。また、安全装備面では、前席サイド&カーテンエアバッグ、衝突軽減ブレーキ+E-プリテンショナー、アダプティブ・フロントライディングシステムが標準装備される。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
ドアハンドルの形状などにひとひねりあるものの基本的にはオーソドックスな意匠のインテリアは、スイッチ類の配置も常識的で扱いやすい。クオリティもまずまずだが決して高級というレベルではない。CR-Vなのでそれで十分という気もする一方、これだけのサイズと見映えを得たのだから、もうちょっと頑張ってもいいのではとも思う。試乗車はオプションの本革シートを装備していただけに、余計チグハグな感じがしたという面もあるのだが。
フェンダー上にキノコのように生えていたサイドアンダーミラーに代えてドアミラー内蔵のプリズムアンダーミラーを採用したのはデザイン上はもちろん、前方視界を邪魔しないという意味でも朗報。ただし、慣れるまでは何が映っているのか判断しにくい。鏡面はもう少し大きくてもいいかもしれない。
(前席)……★★★★
体重をかけると自然と腰の位置が定まり、柔らかい中にしっかりとしたホールド性を感じさせるシートは上々の出来映え。長時間乗っても疲れ知らずでいられる。また、電動のポジション調整機構が運転席だけでなく助手席にまで奢られるのもありがたい。着座位置はSUVらしく高めであっても高過ぎはしない絶妙な位置。ノーズもよく見えるので取り回しの面ではサイズを忘れさせる。
それでも敢えて不満な点を挙げるならば、センターコンソールの取り付け位置が低すぎることだろうか。今の位置だとカップホルダーに入れた飲み物を取るにも目を結構下に向けなければならないからだ。
(後席)……★★★★
シート自体はそれほど大きくはないが、着座位置が高いため足元スペースは十分だし頭上にも余裕があるため、案外快適に過ごすことができる。見晴らしがよいため、大人3人で乗ることになっても耐えられないということはなさそう。ドアポケットやアームレストなどにペットボトルサイズまで対応しそうな抉りや凹みがいくつもあるのも高ポイントだ。
念のため書いておくと、中央席ヘッドレストと3点式シートベルトは標準装備。こんなの当たり前だろうと言いたいところなのだが、そうじゃないクルマもまだ少なくないのである。
(荷室)……★★★★
縦開きのテールゲートは低い位置から大きく開く。操作力も軽く女性でも難儀せず扱えそうだが、試乗車は個体固有の問題か閉めても本当に閉まったかどうか今ひとつわかりにくく、実際に閉めたつもりで運転席に戻ったらウォーニングランプが点いていたということが何度かあった。
容量は、ボディサイズから期待するだけのものをしっかり備えている。後席は背もたれの前倒しだけなら3席独立して、座面ごと引き起こす際には左右4:6分割で、それぞれ折り畳むことができる。
その荷室は耐荷重10kgのダブルデッキカーゴシェルフによって上下2分割にして使うこともできる。外から見えてほしくないものは下側に積み、上側には適当に物を放り込んでおく、なんて使い方をすればいいのだろうが、欲を言えば高い位置にトノカバーのようにも装着できるようになっていればさらに良かった。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
2.4リッターという排気量から想像するほどのパワー感はないなというのが第一印象。レギュラーガソリン仕様だし仕方ないかな? と思うが、実は案外粘りはあって、ドンッと背中を押されるような加速こそ望めないものの、踏み続けていればトルクが底から涌き出てきて、じわりと速度を乗せていってくれる。要するに踏む時にはしっかり踏んでやるメリハリのある運転をすれば、しっかり応えてくれるということである。ただし音質はガサツで、気持ち良さはホンダエンジンへの期待値を下回る。
5段ATにはシーケンシャルモードなどは備わらず、代わりに変速範囲を1〜3速までに固定するD3モードスイッチが用意されるが、もはやこういったロジックは古臭い気がしてならない。これだとたとえば、5速で高速走行している時などに1段だけギアを落としたい、という要求には応えてくれないのだ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★
エンジンのパワー感の乏しさのせいもあるのか、動き出しからクルマは妙に重たい印象。バネ下が重く常にドタッと動く感覚で、ステアリングはねっとりと重くフットワークも俊敏さを欠く。ただし、それでも絶対的なスタビリティは低くないようで、高速域でもタイヤのハイトのせいかステアリングの微妙な修正を強いられはするものの、基本的にはクルマ任せで突っ切っていけるのは美点と言える。コーナリング時のいかにも重心が低く安定した姿勢も好印象である。
乗り心地は、常にブルブルというゴム質の振動が伝わってきて落ち着かず、要するにあまり上質とは言えない。何となく重たげな感触だからと言って乗り心地が重厚かと言えばそうでもないわけだ。
総じて見るに、持てる資質はなかなか良さそうなのに乗り手に伝わるフィーリングで損をしているという感が強い。
(写真=郡大二郎)
【テストデータ】
報告者:島下泰久
テスト日:2006年12月4日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2006年型
テスト車の走行距離:2857km
タイヤ:(前)225/60R18(後)同じ(いずれも、ダンロップST30 グランドトレック)
オプション装備:本革シート(17万3250円)/HDDナビゲーションシステム(26万2500円)
形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(5):山岳路(2)
テスト距離:185.5km
使用燃料:22リッター
参考燃費:8.24km/リッター

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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