シトロエンC6 3.0i V6(FF/6AT)【海外試乗記(後編)】
孤高の存在(後編) 2005.12.28 試乗記 シトロエンC6 3.0i V6(FF/6AT) シトロエンらしいエクステリアデザインのニューフラッグシップ「C6」試乗記の後編。はたしてインテリアはどうか、また3リッターモデルの走りとは。インテリアはオーソドックス
ディスプレイモニターを主役に造形されたダッシュボードや、デジタル式スピード+セグメント式タコというコンビネーションメーター、ナビゲーションシステム使用中にはルート案内表示も行うヘッドアップディスプレイなどに「おっ!」と思える部分がないわけではない。しかし、イグニッションキーなどはごくごくオーソドックスなリモコンキーに過ぎないし、ATレバーも今や一般的なゲート式のフロアタイプ。AVシステムやら空調やらが充実しているのでスイッチ類こそ多いものの、少なくとも“コクピットドリル”を受けはしなくてもごく当たり前にスタートをさせられるというのは事実だ。
そういえば、「そこにレイアウトされるスイッチが移動をする事なく、また内蔵するエアバッグを常に適正な形状で展開させられるのがメリット」という理由でC4に用いられた“回らないステアリングパッド”も、何故かこちらC6には採用されていない。驚きのレベルはやはり外観の方が大きいのだ。
居住スペースがゆったりなのは、ボディサイズからすれば「言わずもがな」とするべきか。2900mmというホイールベースが生み出す後席空間のゆとりからある程度のショーファードリブン需要を予想してか、ヒーター付きの電動リクライニングリアシートやリアエアコンなどをあわせた“ラウンジパック”なるセットオプションも設定される。
空力にはあまり気を遣っていない?
3リッターのV6エンジン+アイシン製の6段ATとの組み合わせによる加速力は、およそ1.8トンという車両重量から推測できるとおり、という印象。決してパワフルとはいえないものの、一方で、日常シーンで不満を抱くほどに鈍重というわけでもない。
「ラミネート構造のサイドウィンドウを採用」などと謳うわりに、静粛性はさほどのものではなかった。むしろエンジンの透過音などは、予想と期待よりも素直に入ってきてしまう。
風騒音はさほど気にならないが、オートルートでの130km/h前後のスピードでのクルージングでは、さほどの強風ではないのに進路は若干乱され気味。Cd値は0.31と発表されるものの、感覚的にはこの独創のスタイリングはやはりドイツの各車ほどには空力に気を遣ってはいないのでは? とも思う。
ちなみに、それを補うため(?)かトランクリッド後端からは、速度に応じてリトラクタブル式のスポイラーが出現。が、そこに「高速時には制動距離を短縮する機能も持つ」なる一文が付け加えられるとなると、それは「空気抵抗の発生源」とも解釈せざるを得なくなるわけなのだが……。
驚愕のフラット感
ところで、C6にはシトロエンマニア待望(!)のハイドロニューマチックサスペンションが採用される。「メンテナンスは5年、もしくは20万kmごとでOK」という嬉しいコメントも加わるこの最新のシステムは、走りのシーンに応じて16種類のダンピングセッティングを使い分けるなど新しいコントロールが行われるのが特徴だ。
実際、高速走行中のそのフラット感の高さは、やはり他のどんなモデルでも味わう事のできない驚愕のレベル。一方で、細かな高周波振動はきれいに吸収しきれないというウィークポイントも、やはりまだ残されはしているのだが。
それにしても、「孤高の存在」とはまるでこのクルマのためにある言葉ではないのか!? 金曜夕方のパリへと戻る大渋滞のオートルートでの周囲のドライバーの視線は、確かにそんなフレーズを含んだ好奇の視線であるように僕には感じられた。
(文=河村康彦/写真=シトロエン/2005年12月)
・シトロエンC6 3.0i V6(FF/6AT)【海外試乗記(前編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000017636.html

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
NEW
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
NEW
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。