サーブ9-3スポーツセダン リニア1.8t(5AT)【試乗記】
ハイウェイのみならず 2003.02.18 試乗記 サーブ9-3スポーツセダン リニア1.8t(5AT) ……378.0万円 2002年のパリサロンで発表されたサーブの新しい基幹モデル「9-3」。2003年1月20日、日本での販売が開始された。ハッチバックから4ドアセダンに変わったニューモデルに、webCG記者が乗った。ニュー9-3、360.0万円から
うららかな日差しをあびて、プールの水面がやわらかく輝く。小さなさざ波の向こうに、エアロパーツを備えた「サーブ9-3スポーツセダン」が展示される。リゾートホテルの中庭には、道路からクレーンを使って搬入されたという。
2002年のパリサロンで、新しい9-3シリーズがデビューした。先代9-3のオリジンたる「(2代目)900シリーズ」から数えると、ほぼ10年ぶりのフルモデルチェンジとなる。今回はGMグループの各ブランドで活用される「イプシロン」と呼ばれるブランニュー・プラットフォームが使われるから、ニューナインスリーは、「オペル・ベクトラ」や「ポンティアック・グランダム」「サターンLシリーズ」などと姉妹……、親戚モデルになるわけだ。伝統の3/5ドアハッチのボディが捨てられ、上級車種「9-5」と同じ4ドアサルーンとなっての登場である。
03年1月20日から、早くもわが国でも販売が開始された。ラインナップは、「リニア1.8t」(360.0万円)と「アーク2.0t」(415.0万円)の2種類。同年5月には、「エアロ2.0T」(470.0万円)が追加される予定だ。いずれも2リッター4気筒ターボを搭載、チューンの度合い(150ps/175ps/210ps)によって差別化される。組み合わされるトランスミッションは5段AT。全車シーケンシャルシフトが可能な「セントロニック」を採用する。ステアリングホイールの位置は、左右どちらも選択できる。
だからこそサーブは……
新型9-3は、「サーブがプレミアムコンパクト・スポーツセダン市場に初めて投入するモデル」(プレスリリース)ということになっている。
「サーブはもともとGMグループ内のプレミアムブランドではないですか。先代9-3はプレミアムコンパクトじゃなかったんですか?」と、北欧の小メーカーに思い入れ強いリポーターが、日本ゼネラルモーターズのサーブ担当の方にうかがうと
「自分たちはともかく、外からどう見られていたのか、ということです」とのこと。現実は厳しい。
−−たとえば、「ルノー・ラグナ」は5ドアハッチですが……
「サーブでは、あのクルマは“プレミアム”とは考えておりません。
うーん、いまはなき「サフラン」と言うべきだったか。「ヴェルサティス」はあまりにトンがっているし、だいたいコンパクトでは……と思考を巡らせていると、
「BMWにせよ、メルセデスにせよ、世界でプレミアムと認められているクルマは、やはりあのボディ(4ドアセダン)なんです」と諭される。
−−だからこそ、サーブぐらいはハッチバックで……
と極東のエディターが勢い込んでみても、しょうがない。ローバーという足かせをはずした後のBMWの快進撃を見ていると、「ウチもあやかりたい」と考えるのが自然なのだろう。
それでも、サーブは年産13万台ほどの小さな自動車メーカーである。せっかく生き残りのために大樹GMの傘下に入ったのだから、ソフィスティケイテッド・ニッチメーカーとしての道を歩み続けるべきだと思うのだが……。
ニュー9-3のライバルとしては、「BMW3シリーズ」「アウディA4」、そして同郷ボルボの「S60」が挙げられる。
ちょっと峠にも
日本GMがメイングレードを見なす「リニア1.8t スペシャルパッケージ」に乗る。ファブリックシート、15インチアルミが標準のリニアに、レザーシートと16インチのセットオプション(18.0万円)を装備したモデルである。
全長×全幅×全高=4635(−15)×1760(+50)×1465(−10)mmと、ボディサイズは先代とあまり変わらない(カッコ内は新旧比)。ホイールベースは75mm長い2675mm。サーブらしく、いかにも空力がよさそうな外観は、見かけに違わず、ドラッグ係数(CD値)=0.28と優れた数値を示す。全体に、小ぶりな9-5といった印象だ。
スウェディッシュテイストあふれる、つまりキチンと整頓されて清潔感あふれる居心地のいい室内は旧型譲り。切り立ったダッシュパネルが、これまたいかにもサーブだ。シフターの後ろにイグニッションキーを差すのも従来通りで、細かい格子のパネルを重ねたエアコン吹き出し口も継承された。メーターパネルの横には、夜間にスピードメーター以外の計器の照明を消す「Night Panel」ボタンが備わる。メカニカルな面で個性を発揮するのが難しくなった現在、キーとなるデザインや機構を死守することが、ブランドイメージに直結することを痛感させられるインテリアである。
2リッター直4ターボは、わずか1900rpmで24.5kgmの最大トルクを発生する力強いエンジンで、ターボに手慣れたメーカーらしく、スロットルペダルの踏み始めから、ごく自然にやんわりと加速を加勢する。5段ATとのマッチングもよく、「D」レンジに入れっぱなしでなんら不満がない。
足まわりは硬めで、以前の“穏やかなスポーティ”といった味付けから、より直截的なセッティングが施された。テスト車は16インチホイール車だったので、続いて“素”の15インチモデルを短時間ながら試してみたところ、あたりはソフトに感じられたものの、基本的な味付けは変わらなかった。「スポーツセダン」と名前に込めた決意が、サスペンションにも表れている。
4シリンダーの軽い過給感を楽しみながら、「ハイウェイをドコまでも行きたい!」と感じさせるドライブフィールはこれまで通り。しかし、「ちょっと峠にも寄ってみようか?」と思わせるところが、新しい9-3の特徴である。
(文=webCGアオキ/写真=清水健太/2003年3月)
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青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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