トヨタ・アベンシスワゴンQi(FF/5AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・アベンシスワゴンQi(FF/5AT) 2006.11.10 試乗記 ……348万9360円 総合評価……★★★★ マイナーチェンジで装備の見直しがされた、トヨタの欧州生産グローバルカー「アベンシス」。ヨーロッパ生まれを実感できる走り以外の魅力はあるのか?ワゴンの上級モデルに試乗した。欧州製であること以外のなにかが欲しい
「アベンシス」の走り味は、ひと月前にオーストリアで乗った新型「レクサスLS」に似ていた。もちろん車格の上下がもたらす違いはあるし、レクサスとトヨタのブランドの差も歴然と存在する。それ以前にLSはプロトタイプだったことを鑑みなければならない。
しかし、パワートレインの静かさとなめらかさが突出していること、ステアリング操作に対して素直に向きを変えてくれること、高速での直進安定性が優れていることなどは、LSとアベンシスに共通する美点である。一方で、強烈な個性を持たないことでも2台は一致している。
レクサスであればプレミアムブランドの威光があるが、アベンシスを日本で売るには、欧州製であること以外のなにかが欲しい。なにしろアベンシスはトヨタ車としては高い。試乗した「ワゴンQi」は350万円近くする。「フォルクスワーゲン・パサート・バリアント」が買えてしまう。
そう思いつつ、レクサスの試乗会ついでにヨーロッパで買ってきた雑誌を眺めていたら、「なにか」になりそうなネタを見つけた。ディーゼルだ。欧州仕様アベンシスに積まれる2.2リッターD-4D(直噴ディーゼルターボ)は、177ps/40.8kgmと、このクラスのディーゼルでは群を抜く高性能を微粒子フィルター装着で達成している。それを誇示するように、ディーゼル王国フランスでは「クリーンパワー」というサブネームまで与えている。
「メルセデス・ベンツ」が新型「Eクラス」に用意したディーゼル車が、どの程度売れるか興味が持たれるところだが、もしある程度の成功を収めたなら、輸入を検討する価値があるのではないだろうか。トヨタが作った欧州車だからこそ、ディーゼル乗用車復活の第一弾にふさわしいと思うからだ。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
アベンシスは、英国TMUK(Toyota Motor Manufacturing UK)で生産される英国車。同名を使ったモデルとしては2代目になる。2003年10月6日に、日本国内でのデビューを果たした。“欧州品質”を謳う足まわりやデザイン、前席SRS&サイド&ニーエアバッグとVSC(FF)を標準で備える安全装備などがウリ。
セダンとワゴンが用意され、エンジンは、いずれも2リッターと2.4リッターの2本立て。それぞれ5段ATと4段ATを用意する。2リッターにはFF(前輪駆動)に加え、ビスカスカプリングを用いた「Vフレックスフルタイム4WD」がある。
(グレード概要)
セダン、ワゴンとも、ベーシックな「Xi」(2リッター)、装備を充実した「Li」と上級モデルの「Qi」(いずれも2.4リッター)がラインナップされる。
Xiと比べ、テスト車のQiには、ディスチャージヘッドランプ、運転席8ウェイ+助手席8ウェイのマルチアジャスタブルパワーシート、運転席電動ランバーサポートが備わる。また、17インチタイヤや本革シートの採用、SRSカーテンシールドエアバッグやDVDナビゲーションシステムはQiのみに標準装備される。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
今回のマイナーチェンジでは、2.4リッターモデルについては、セダンとワゴンでインテリアカラーを変えている。明るいベージュのトリムに木目調パネルを組み合わせたセダンに対し、ワゴンはダークグレーのトリムとシルバーパネルのコンビで、クールでスポーティな雰囲気になった。オーソドックスなT字型のインパネは、古さを感じさせはするものの、スイッチの配置がわかりやすいというメリットもある。Qiはオートエアコン、本革シート、DVDカーナビがスタンダードであるなど、標準装備は充実している。センターコンソールに固定されたカーナビのスイッチはシンプルだが使いやすい。
(前席)……★★★★
トヨタ車としてはシートの作りはかなりいい。サイズは大きめで、座面の厚みはたっぷりとられており、サイドサポートはしっかりしている。座っただけでヨーロッパ生まれであることを実感する。ドライビングポジションは問題なし。ステアリングがチルトだけでなくテレスコピック調節ができることも、ヨーロッパ車的である。
(後席)……★★★★
身長170cmの自分が前後に座ったとき、ひざの前には20cm近い空間が残る。ルーフがまっすぐリアまで伸びたワゴンだけあって、頭上空間にも余裕がある。横方向の広がりはほどほどだが、それ以外はこのクラスでトップレベルの広さ。シート形状は前席より平板になるが、座面の高さや厚みがあり、角度も適切で、欧州ブランドのライバルと比較しても劣らない座り心地を備えている。
(荷室)……★★★
最新の欧州ブランドのライバルと比べると小柄なボディを持つがゆえに、荷室容積自体はいまとなっては平凡。ただし後席の格納方法は、フォルクスワーゲンやフォードが背もたれを倒すだけですませるなか、トヨタ車の美点でダブルフォールディング式にこだわっており、低くフラットに折り畳むことができる。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
バランサーシャフトを備えた2.4リッター直列4気筒エンジンは、驚くほど静かに、なめらかに回る。レスポンスはおだやかだが、トルクの余裕は2リッターとは明確な差があり、軽く速度を上げるぐらいならキックダウンに頼る必要はない。高回転も不得意ではなく、5000rpmを越えてもスムーズに回転を上げていくあたりは、スピードレンジの高いヨーロッパ生まれらしい。組み合わせられる5段ATの変速マナーは、トヨタだけあって文句のつけようがない。ちなみに2リッターはバランサーシャフトがつかず、ATは4段になるから、多少無理をしてでも2.4を選ぶことをおすすめする。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
アベンシスのなかで唯一Qiだけは17インチホイールで、タイヤは215/45R17と太く扁平になる。そのためもあって乗り心地は硬めで、ショックの角はうまく丸めてくれるものの、低速では細かい上下の動きが気になる。6km/hを越えると少し落ち着きが出てくるが、高速でもフラットにはなりきれない。トヨタ車としては重めのパワーステアリングの切れ味はそれほどクイックではないが、素直な反応。操舵に対するノーズの動き、その後の身のこなしは自然で好ましく、グリップレベルも満足できる。積極的に走りたくなる性格はヨーロッパ生まれであることを実感させる。高速道路での直進安定性も高い。それだけにブレーキはもう少しカチッとした効き味であってほしい。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:森口将之
テスト日:2006年8月17日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2006年式
テスト車の走行距離:1084km
タイヤ:(前)215/45R17 87W(後)同じ(いずれもブリヂストン TURANZA ER30)
オプション装備:ETCユニット(1万3860円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(6):高速道路(4)
テスト距離:107.2km
使用燃料:16.3リッター
参考燃費:6.58km/リッター

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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