ホンダCR-V ZX(4WD/5AT)/ZLi(FF/5AT)【試乗記】
背高実用車に野生はいらない 2006.10.28 試乗記 ホンダCR-V ZX(4WD/5AT)/ZLi(FF/5AT) ……283万5000円/302万4000円 「アコード」と同等の乗り心地を目指したと謳われる新型「CR-V」。ワイルド感を抑え、より都会的なスタイリングを手に入れた新型は、FFで十分だとリポーターはいう。その理由は……。ワイルド感覚を払拭した
「ホンダCR-V」は、従来型までのいかにもSUV型実用車といったスタイリングを一新。ストリームにも似た、流麗なカーブを持つ新種の乗り物に変身した。ひとことでいえば、より都会風の軽快さを持たせた乗用車的外観に、クロスカントリーの機動性を融合、CR-V(コンフォタブル・ランナバウト・ビークル)という名前本来の姿に近づけた。FF版の登場もそれを援護する。
CR-Vは1995年の登場以来、160か国で累計250万台が販売されたという。もちろん最大のマーケットは北米であり、今度の新型もそこをターゲットとしているのは明白だ。
ワイドトレッド化で見た目にも低重心化したボディは、下半身を隠してみればスポーティなワゴンにも見え、これまでのワイルドな感覚を払拭すると同時に、スリムに小さく見せることにも成功している。SUVの流行で、野性的な荒々しさを都会に持ち込むことに粋を感じた時代もあったが、その数が増え過ぎたために殺伐とした景色になりかけていたことも事実。時代とともに洗練されていく方向にあった。
クラッシュテストの結果も公表される時代となり、安全ボディは走行面でのボディ剛性アップに貢献。そのガッシリしたボディは乗り心地にも好結果をもたらしている。車両重量はFFの1480kgから豪華装備のZXiでも1550kgの範囲にあり、比較的軽量なボディを実現している。
実用性の要は駆動方式よりロードクリアランス
搭載されるエンジンは2.4リッター4気筒DOHCの170ps/5800rpm、22.4kgm/4200rpm一種。5ATとのみ組み合わされる。4WDでもMTは用意されない。市場要望に応じてV6を積むことも容易な、エンジンルームは確保されている。またデザイン上膨らませたノーズの高さは、実質的にはエンジンまでの空間を大きく残すが、歩行者保護の見地からは、つぶれて優しく受け止める効果もありそうだ。
走り出した感覚はまったく乗用車であり、視点の高さのみ普通より高いだけだ。静かで乗り心地も快適。室中にいるとオフローダーであることを感じさせない。現実には最低地上高185mmが確保されている。思うに、このロードクリアランスの高さこそが実用性の要であり、4WDという駆動方式を実際に必要とするユーザーはそれほど多くはないだろう。今のFF方式は走破性も高く、トラクションコントロールが働くのでホイールスピンする状況も少ない。冬期でも特別な急坂を日常的に走るとかでない限り、FFでも十分に役に立つ。
となれば背の高い形だけの実用車を欲している人にとって、FF仕様はお勧めの一台だ。4WDに比べ、走行感覚はひときわ軽快、登坂路でもグイグイ加速する。燃費もいい。価格もそれなりに安価となるから、余った分でナビでも装着したほうが気が効いている。
拡大
|
拡大
|
4WDにも進化がほしい
インパネまわりも乗用車感覚で、ホンダ独自のインパネシフトは無用なセンターコンソールもなく、横にウォークスルーが可能だから直接歩道側に降りることもできる。操作系で不便なのは2度踏みリリース方式のサイドブレーキで、左足ブレーキ派はその都度右足に踏み替えなければならない。同じ操作で正反対の機能を有する点、緊急時に反復使用できない点で要改善。
スタイリングだけでなく走行性全体が大きく洗練されてきた。その中で4WD方式は旧態依然のまま踏襲された。4WDはホンダでいうリアルタイム4WD。前後に配された2個のポンプで油圧を発生させ、その油圧でクラッチを断続して後輪にもトルクを伝達する。今回そこにワンウェイカムを追加、FFと4WDの切り替えレスポンスを向上させたとある。
しかし同じようなポンプ式パートタイム4WDのハルデックス方式も、「アウディTT」では遂に油圧を残してフルタイム4WDに進化しているから、こちらもそろそろフルタイム化してほしいところだ。レスポンスを上げれば上げるほど、オン/オフで直進性が妨げられ煩わしいだけと思われる。よく考えてみれば、FFに切り離す意味はまったくなく、ほぼ同じ回転をしているプロペラシャフトを中から回すほうが燃費がいいことに気づくべきだ。
(文=笹目二朗/写真=高橋信宏/2006年10月)

笹目 二朗
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
NEW
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
NEW
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RS
2025.12.4画像・写真およそ3年ぶりに、日本でも通常販売されることとなった「ホンダCR-V」。6代目となる新型は、より上質かつ堂々としたアッパーミドルクラスのSUVに進化を遂げていた。世界累計販売1500万台を誇る超人気モデルの姿を、写真で紹介する。 -
アウディがF1マシンのカラーリングを初披露 F1参戦の狙いと戦略を探る
2025.12.4デイリーコラム「2030年のタイトル争い」を目標とするアウディが、2026年シーズンを戦うF1マシンのカラーリングを公開した。これまでに発表されたチーム体制やドライバーからその戦力を分析しつつ、あらためてアウディがF1参戦を決めた理由や背景を考えてみた。 -
第939回:さりげなさすぎる「フィアット124」は偉大だった
2025.12.4マッキナ あらモーダ!1966年から2012年までの長きにわたって生産された「フィアット124」。地味で四角いこのクルマは、いかにして世界中で親しまれる存在となったのか? イタリア在住の大矢アキオが、隠れた名車に宿る“エンジニアの良心”を語る。


































