第286回:VWイオス淡路島試乗
これはツウなオレ流オープンカーだ!(小沢コージ)
2006.10.26
小沢コージの勢いまかせ!
第286回:VWイオス淡路島試乗これはツウなオレ流オープンカーだ!
■206CC、307CC、メガーヌGCに続く第4弾
乗ってきました。VWの新しいオープンカー、EOS! 例のキヤノンのカメラと全く同じ名前なわけだけど、聞けば問題はほとんどなかったよう。
モノがカメラとクルマで全然違ってたってのもあるけど、ポイントはクルマのEOSが高級品だってことみたいね。もしやこれが軽自動車だったらハナシは違ってたかもしれない。
えー、で、簡単に言っちゃうとクルマの出来は大変よろしゅうございました。この手の電動ハードトップオープン4シーターとしては俺も持ってたプジョー206CC、同じプジョーの307CC、ルノー・メガーヌ・グラスルーフカブリオレ(GC)に続く第4弾なわけだけど、単純に新しくなればなるたびに質が良くなっていく観もある。
まず良かったのはハンドリングと乗り心地のバランスだよね。206CCはボディ全体が小さ過ぎるせいかキャパシティ不足って感じで、足をややかため過ぎであり、一方307CCは非常にバランスが良く、メガーヌGCはルノーらしいシャープなハンドリングが捨てがたかった。
そんななか、EOSがまずいいのはステアリング・フィール。滑らかさと正確さでは、過去のCCモノのなかでもピカイチであり、中身が凄く詰まってる感じがする。
それはおそらくオープンカー専用ボディってことと、VWならではの個性だろう。確かにオープン時、市内のガタガタ道でステアリング回りが若干震えたけど、それ以外でステアリングはビシっと正確で、質感も高いし、安心できる。
それは俺が持ってたミニ・コンバーチブルも同様で、こういうボロが出ちゃいがちなクルマほどドイツ車有利だ。
■オープンカーには「普段の行い」が出る
というのもこれが全般的に出来が信用できないジャーマイーカなイタ車だったりすると、一個ダメだと全部ダメな気がしてきちゃうけど、逆に常日頃から質感万全のドイツ車の場合だと気にならないから。
要するに優等生がタマにミスしてもそれは「タマに」だけど、劣等性がミスしちゃうと「やっぱり」って感じるようなもんだ。ま、オープンカーには「普段の行い」が出ちゃうといいますか。
あとはパワートレインだよね。EOSは200psの2リッター直4ターボと、250psの3.2リッターV6があって、どっちもVW自慢のセミAT、DSGと組み合わせられるんだけど、特に2リッターはレスポンスがいい上、パワー十分で好印象。確かにV6のがパワーあるんだけど、特にいいなと思ったのは低速のトルク感と緻密な回転フィールで、高回転側ではそれほど優位性を感じない。
そのほかV6モデルはタマタマ18インチホイール装着車だったからか、路面にハンドルを取られがちで、ブレーキも若干甘くて全体的にイマイチ。個体差かもしれないけどね。
■実際は“3分割式”な電動ハードトップ
あとは肝心の5分割式の電動ハードトップルーフだよね。コイツは今までのがせいぜい2分割式だったのに対し、ピースが3つ増えてより動きが複雑ってのがウリなんだけど、実はそのうちの2ピースは事実上のルーフ収納部のフタであり、実際のところは“3分割式”。
でもその効果は確かになかなかで、今までのが“布団2つ折”で押入れに収納してたとすると、EOSは“布団3つ折”で収納するぶん、ルーフを長く取ることができ、フロントウィンドウを短くでき、より開放感がある。
ルーフ形状もより四角く、普通のセダン風にもできる。そのぶん、リアシートも居住性がいいってハナシなんだけど、実はこれはそれほど良さを感じなかった。
身長176センチの俺が、フロントシートにちゃんと座ってたポジションで、リアシートにもヒザに余裕を持ったまま座れるのは凄いんだけど、左右はルーフ収納部により圧迫されてるし、背もたれもそんなに寝そべってなくて、頭も天井に若干着く。プジョー307CCとそれほど変わらない。
ただ、トランクはカブリオレ状態で205リッター、クーペ状態で380リッターもあり実用性は高いし、なにより走行中にクーペ状態でスライディングルーフを開けられるのは便利。コレ、布幌のミニ・コンバーチブルにもついてたんだけど、結構使うんだよね。
■先達とは別の“VWらしい”戦略
ってなわけで性能的にはバッチリのEOS。でも率直に言って、俺だったらEOSより307CCを取っちゃうと思いました。
それはまずお 値段で307CCが安いのなら400万円以下で買えるのに対し、EOSは安くても438万円ってのもあるし、なにより307CCのがわかりやすくカッコいいからだ。
あのフロントウィンドウをペタンと寝かせて、全体的にガラス部分を小さくした307CCは、やっぱりスポーツカーっぽい。実際、WRカーにもなってるし。
もちろんフロントウィンドウ後端がドライバーの頭上ぐらいにくるとか、圧迫感があるとか、苦情を言う人がいるのも事実だけど、それはよっぽどオープンカーに慣れた“ツウ”が言う文句だ。
オープンカー素人集団の国、日本ではわかりやすく華やかな307CCの方がウケるに決まってるし、そもそも実際オープンにするチャンスがやたら少ない。どっちかっていうと「オレはオープンカーを持ってるんだぞ!」って所有感のが大事だったりする。その点でも307CC有利。
ただ、EOSはそれをわかって実用的に振ってきたわけだし、「あえて先達とは別の“VWらしい”戦略でチャレンジ」ってのもステキだ。これぞまさにヨーロッパ車の戦い方であり、ある種の個人主義にも繋がってくる部分だからして。単純に人マネは潔しとしないし、オレはオレ流で行くって感じよね。
ってなわけでEOS、オススメだと思います。
(文と写真=小沢コージ/2006年10月)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
-
第454回:ヤマダ電機にIKEAも顔負けのクルマ屋? ノルかソルかの新商法「ガリバーWOW!TOWN」 2012.8.27 中古車買い取りのガリバーが新ビジネス「WOW!TOWN」を開始。これは“クルマ選びのテーマパーク”だ!
-
第453回:今後のメルセデスはますますデザインに走る!? 「CLSシューティングブレーク」発表会&新型「Aクラス」欧州試乗! 2012.7.27 小沢コージが、最新のメルセデス・ベンツである「CLSシューティングブレーク」と新型「Aクラス」をチェック! その見どころは?
-
第452回:これじゃメルセデスには追いつけないぜ! “無意識インプレッション”のススメ 2012.6.22 自動車開発のカギを握る、テストドライブ。それが限られた道路環境で行われている日本の現状に、小沢コージが物申す!?
-
第451回:日本も学べる(?)中国自動車事情 新婚さん、“すてきなカーライフに”いらっしゃ〜い!? 2012.6.11 自動車熱が高まる中国には「新婚夫婦を対象にした自動車メディア」があるのだとか……? 現地で話を聞いてきた、小沢コージのリポート。
-
NEW
トヨタ・アクアZ(FF/CVT)【試乗記】
2025.12.6試乗記マイナーチェンジした「トヨタ・アクア」はフロントデザインがガラリと変わり、“小さなプリウス風”に生まれ変わった。機能や装備面も強化され、まさにトヨタらしいかゆいところに手が届く進化を遂げている。最上級グレード「Z」の仕上がりをリポートする。 -
NEW
レクサスLFAコンセプト
2025.12.5画像・写真トヨタ自動車が、BEVスポーツカーの新たなコンセプトモデル「レクサスLFAコンセプト」を世界初公開。2025年12月5日に開催された発表会での、展示車両の姿を写真で紹介する。 -
NEW
トヨタGR GT/GR GT3
2025.12.5画像・写真2025年12月5日、TOYOTA GAZOO Racingが開発を進める新型スーパースポーツモデル「GR GT」と、同モデルをベースとする競技用マシン「GR GT3」が世界初公開された。発表会場における展示車両の外装・内装を写真で紹介する。 -
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。
