フォード・エスケープXLT(4WD/4AT)【試乗記】
デニムのようなクルマ 2006.09.23 試乗記 フォード・エスケープXLT(4WD/4AT) ……255.0万円 フォードのグループ企業であるマツダが生産する「エスケープ」がモデルチェンジ。その内容はフェイスリフトを主体としたもので、基本コンポーネンツは従来型を踏襲する。多少洗練度は低いが、実はうまいつき合い方があるようだ。若者に受け入れられるか?
外観、内装ともに大きく手が入れられた新型エスケープのモデルチェンジの一番の狙いは、いわゆるプレミアムブランドの製品を見慣れたユーザーにもアピールできるクオリティ感の獲得ということになるのだろう。こうしたSUVだろうと、そして決してハイエンドユーザーを対象としているわけではないフォードのようなブランドの製品であろうと、今やそれは付加価値ではなく、備えていてあたりまえのものとなりつつある。
たしかに、ハウジング内をスモークした4灯式ヘッドライトとクロームグリルによってつくり出される表情は、新鮮味のあるカタチというわけではないが、従来のいかにもおとなしそうでぼんやりした顔つきに較べれば、格段にアピール力が増している。やはり一新されたインテリアも、全面ハードパッドのダッシュボードなど、クオリティはそれなりとはいえ、グッと見映えのするデザインにはなった。とりわけATがコラム式からフロア式とされたのが、印象アップに貢献する要素なのは間違いない。
いずれにせよ、明らかに若い層がターゲットだという造形だが、今の若いユーザーは、案外そうやって「こういうのが好きなんだろう?」と差し出されたものには強烈な拒否反応を示したりもするだけに、これが素直に受け入れられるのかどうかは、ちょっと疑問ではある。
素直で心地よい
改良の手は内外装だけでなく、しっかり中味にも及んでいる。XLTが積む2.3リッターエンジンは、新たにVVT=可変バルブタイミング機構や電子制御スロットルを採用。実はスペックを見ると、最高出力の157psは従来通り、最大トルクの20.4kgmは従来より0.3kgm下がっているのだが、実用域での扱いやすさは向上しているという。
また、出力特性の改善に加えて、触媒やセンサー系の改良と合わせて排出ガス浄化性能を大きく向上させているのもポイントとして挙げられている。3リッターV6も含めて、騒音や振動の低減にも力が割かれたということだ。
率直にいえば、それは乗って明らかに実感できるほどの差ではない。確かに出足のエンジンフィールは活発で、吹け上がりもなかなか心地よいのだが、最近のSUVの水準からすれば、上質感は並レベルに留まる。
さらにそれはエンジンだけのせいではなく、クルマ全体から醸し出されるものでもあるのだ。ガサガサとした透過騒音、路面の細かな振動を拾う乗り心地などは、最近のオンロード指向を強めるSUVの中で見ると、やや見劣りする感は否めない。
一方で、走りそのものは素直で心地よいものに仕上がっている。ステアリング操作に対する追従性は悪くないし、ロールは大きいものの上屋がグラつくようなこともない。出足の元気さはスロットルのチューニングの賜物だったらしく、3000rpmあたりまでの加速感は実は今一歩なのだが、積極的に踏んでいけば、底力はある。
広島生まれのアメリカン
そうやって運転していると、次第につき合い方のコツが飲み込めてくる。あんまり神経質になるのはやめて、アクセルをガシガシ踏み込み、ステアリングも曲がりたい方向にポーンと放り込むように、良い意味で適当に運転してやると、何だかクルマのほうも待ってましたとばかりイキイキしてくるのだ。
つまりエスケープ、たとえるならデニムのようなクルマなのである。新型はジャケットにも合わせられる洗練度を振りかけて、ちょっと今風に仕立ててはいるが、ラフに乗りこなすのが何よりフィットする。やはりコレ、かつては広島、今は台湾で生産されているとは言っても、血統は紛れもないアメリカンSUVなのだ。
それをわかった上で敢えていえば、あまりに重くオトコの僕でも閉めるのに難儀するリアゲートは何とかならないだろうか。その辺りにもう少しだけ気遣ってくれれば、自分を含めた最近の軟弱なオトコたちなんかじゃなく、案外、颯爽とした女性がカッコよく乗りこなしてくれたりしそうな気がするのだが?
ウインカーレバーは右側だし、運転席のシートリフターも標準。視界が良いため四隅も把握しやすいから、つまりはサイズから想像するより運転や取り回しははるかに容易だということを、彼女達のために最後に付け加えておこう。
(文=島下泰久/写真=郡大二郎/2006年9月)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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